星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

はじめての君を想う

趣味丸出しの裏話です。
以前、「つまみ食い」 「ぬすみ食い」という、浩大が無自覚のまま、なんとなく夕鈴に淡い想いを抱いている…という話を書いたんですが。
「はじめて」シリーズでも性懲りもなくやりたいなぁと思っていました。
そんな感じの浩大視点です。
原作のキャライメージと違うと思うので、「浩大は何考えてるか分からないところがいいのよ!」という方はご注意下さいませ。





お妃ちゃんが、本物の花嫁として後宮に戻ってきてから、3日経った。
世間的に見れば新婚も新婚。
まさに薔薇色の新婚生活を送ってる……はずなんだけど。
どうも陛下もお妃ちゃんも様子がおかしい。
陛下は顔色悪いし、お妃ちゃんはお妃ちゃんで何やら怖い顔でやたらめったに勉強してる。
どうにも新婚ぽくない、不穏な気配を感じる。
なんだかなぁとは思うものの。
せっかく新婚なんだから余計な口出しはしたくねーしな。
そんなわけで静観を決め込んでいたワケなんだけど。

「……ねぇ、浩大いる?」
侍女が居なくなった隙を見計らったように、お妃ちゃんに声をかけられた。
天井裏で返事をすると、ちょっとだけ間を空けた後でイキナリ爆弾が投げ込まれた。

「あの……新婚の男の人って、お嫁さんの横でただ寝てても、それでいいものなの?」

柄にもなく慌てたオレは、天井裏に仕込んでおいた刺客対策の罠に思い切り額をぶつけた。
いてぇ。
額を擦りながら床に飛び降りた。
さすがに着地は失敗しなかったが、いついかなる時も冷静でいるべき隠密としては失格だ。
だけど、そんなのはどうだっていい。
今、お妃ちゃんは何て言った?
「ちょっと、大丈夫!?おでこぶつけたの?」
心配して寄ってくるお妃ちゃんを、手で遮った。
「いや、そこはどーでもいいから。
何、今の?陛下、もしかしてまだなんもしてねーの?」
反応を見るに図星らしい。
陛下、何やってんだよ……アンタ、この国の王様だろう。
前に「女の子一人、笑っちゃうくらい大事にしてる」って言ったけどサ。
ここまで来ると、もはや笑えねー。
オレは王宮を見やって、深く溜め息をついた。

それに、こっちも。
お妃ちゃん、それをオレに聞くか。
ま、完全に異性として見られてねーってのは分かってるから別にいいけど。
なんつーか、まぁ、警戒心皆無のアンタらしいよな。
本人に聞いてみればいいと言うと、陛下が気にしてなかったら恥ずかしくて聞けないと言う。
んなわけないだろ。
気になって気になって、眠れてないからあの顔色なんだって。
それでオレに「男のひとはどういう気持ちになるのか教えろ」ときたもんだ。
本当、お妃ちゃんらしいっつーか、陛下がフビンっつーか。
だったら、ここは年上の男としての意見を真面目に言ってやった方がいいだろう。
オレは言葉を慎重に選んでから口を開いた。

「例えて言うなら……そうだな。
砂漠の真ん中で喉カラッカラになって歩いてるところに、やっと湧き水発見して喜んで近づいてったら、実はそれが蜃気楼で。
近くにあるように見えるのにいくら手を伸ばしても全然飲めないって感じに近いんじゃね?」

お妃ちゃんは見て分かるくらい顔色を変えた。
「じゃ、じゃあ陛下は今、すんごく辛いのに我慢してるってこと!?」
「言うまでもないよネ」
あっさり頷くと、呆然とした様子で呟いた。
「へーか、我慢は得意じゃないって言ってたのに、何で……」
……まったく。
そんなのオレに言わせる気かよ。
なぜか知らないが、あまりの鈍さにちょっと腹が立つ。
「それこそ、言うまでもないだろ。何でだと思う?」
少し意地悪くそう言ってやると、お妃ちゃんは下を向いて唇を噛み締めた。

やれやれ、大人げなかったかな。
「お妃ちゃんさぁ、そんな泣きそうな顔すんなよ。
オレが陛下に怒られるから」
「泣いてないわよ!
ちょっと……自分が情けなくなっただけよっ」
へーへー、そうですか。この意地っ張り。
それにしても。
「お妃ちゃんさぁ、もしかして、誰かになんか余計なこと言われた?」
お妃ちゃんはちょっとだけたじろいでから、ゆるゆる首を振った。
「余計なことなんかじゃない。むしろ、聞けてよかったと思ってるの。
ただ……私って、陛下の為に何ができるんだろうって思ったら、怖くなったのかも。
なんにも持ってなんかないのに」
あー……これはじーちゃんだな。
また何か言ったんだろうな。
それにしても本当、世話のやける夫婦だよ。ここの国王夫妻は。

何も持ってないわけない。
アンタは、陛下が一番欲しがってるものをちゃんと持ってるよ。

「―――お妃ちゃんはサ、何しにここに戻って来たんだっけ?」
「なに、って……」
「思いだしてみなよ。蓉州まで行って、妓館に潜入までして、やっと陛下に会えてサ。
それで、何がしたくてこんなとこまで戻って来たのか」

不安に揺れていた目に、いつものような明るさが戻ったように見えた。
お妃ちゃんはけっこうな勢いで自分の頬をばちんと叩いた。
「ありがと、浩大。目が覚めたわ」
ぐっと拳を握って、いつもみたいに力強く笑う。
そうだ。
迷うな。揺れるな。
あんな顔、こっちは見たくない。
アンタが弱気になると、落ち着かない。
「そうそう、アンタはアンタらしくぶつかってってやればいいよ。
第一考えるの性に合ってねーんだし」
からかうようにそう言うと、お妃ちゃんは苦笑した。
「ほんと、そうよね。最初っから答えは私の中にあったのに」
お妃ちゃんは王宮に視線を向けた。
きっと、その目には陛下が映っているんだろう。
陽の光を浴びた鳶色の瞳が明るく輝いて、なぜか強く心に残った。
「早く、会いたいな」
そう呟いた声は、ほんの少し熱を含んでいるようだった。


後宮の一角、管理人の部屋。
顔を出したオレを見てじーちゃんは待っていたかのように茶菓子を出してきた。
「なんじゃ、そんな顔して。儂に何か言いたいことがあるんかの?」
しれっと言ってくるじーちゃんに呆れつつ、山のように積まれた饅頭に手を出した。
「よく言うよ。
じーちゃんこそ、お妃ちゃんに何か余計なこと言っただろ。
随分、悩んでたぜ?」
じーちゃんはでかい茶器にどぼどぼ茶を注ぎながら笑った。
「そうかそうか、お主に相談したか。
あの娘のことじゃ、大丈夫だったじゃろ」
オレはノンキなじーちゃんに呆れた。
なんでこのタイミングでそんな面倒なことをしてくれたんだ。
「余計な手間かけさせるなよな。
放っとけばさっさと最後までできただろーに……」
「あの娘が、何も知らず陛下の背に庇われることを諾しとするような娘なら、儂も何も言わぬがの。
そんなタマじゃなかろうよ。
正面からぶつかるのがあの娘には似合いじゃ」
じーちゃんは、くっくっと笑った。
「で、どうじゃ。今夜は首尾よく行きそうかの?」
「……じーちゃん、本当お妃ちゃんのこと気に入ってんのな」
質問に答えず饅頭を頬張ったオレを、さも心外だとでも言うような顔でじーちゃんは見た。
「そんなもん、お主には言われたくないわい」



翌日もお妃ちゃんは変わらず妃修行に励んでいる。
眉間の皺は消えたから、どうやら上手くいったらしい。
やれやれ。
これで一安心だな。
これ以上続くようなら飢えた狼に八つ当たりされるところだった。

休憩時間に侍女と一緒に中庭に出てきたお妃ちゃんは、きょろきょろと辺りを見回している。
多分、オレを探してるんだろう。
お妃ちゃんに分かるように、木の梢から少し手を振ってやると、お妃ちゃんはこっちに気付いた。
そして、ちょっとだけ顔を赤くして微笑んだ。
その口許が微かに動いたのが分かる。

ありがとう、か。
そっか。よかったな。お妃ちゃん。
陛下も、やっと我慢が報われたな。

心底ほっとしたのに、何故か胸の辺りがもやっとする。
きっと、じーちゃんのところで饅頭食べ過ぎたからだな。
うん。
そういうことにしといた方が、いい気がする。
オレは改めて気を引き締めるように、懐に忍ばせていた暗器を握った。

大丈夫。
オレが守るから。
陛下もお妃ちゃんも、何にも心配しないでちゃんと新婚生活満喫しろよ。


後記。
すみません。
趣味丸出しで。ふへへへ。
関連記事
スポンサーサイト
はじめての | コメント:3 |
<<カウンター18,000御礼 | ホーム | はじめてを共に紡ぐ>>

コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-12-07 Mon 22:34 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-12-08 Tue 10:38 | | [ 編集 ]
あい様。
まさに誰得(rejea得)の話に温かいコメントありがとうございます!
あい様の優しさが半端ない(ToT)
しかも歌詞検索してくださったんですね~~!
なんとなく第二部にぴったりな気がする歌詞なんです。
会社で眠くなるとこっそり脳内で歌いまくってSSを妄想してます←働け

あとあと、お祝いコメありがとうございます!
久々に御礼記事アップしたいと思います♪
2015-12-09 Wed 21:17 | URL | rejea [ 編集 ]

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |