星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

はじめてを共に紡ぐ

続きです。
つまり初夜なんですけども。

エロニモセズ、ギャグニモセズ
タダ真面目ニイチャツイテイル。
ソウイウ王道ヲ、私モ書キタイ。

―――という目標を掲げてやっております!
ああっ、文豪ファンの方、殴らないで!!

そんなわけで年齢制限の要らない内容ではありますが、ご夫婦の夜のお話です。
苦手な方は無理なさらず…





王宮から遣いが来て、陛下のお戻りは少し遅くなるから先に休むように伝えられた。
でも、今日こそちゃんと伝えなきゃいけない。
挫けそうになる気持ちをどうにか堪えて、薄暗い寝台で陛下を待った。

夜半を迎える少し前。
ささやかな衣ずれの音がした。
それと一緒に漂う、陛下の香り。
思わずどきりと心臓が跳ね上がる。

「夕鈴、起きてたの?」
天蓋の布を払いながら陛下が顔を覗かせた。
「おっ、おかえりなさいませ、陛下」
「うん、ただいま」
陛下はふにゃっと嬉しそうに笑って寝台に腰を下ろすと、私を抱き締めた。
「今日は疲れたな。周と李順、二人がかりで書類の山を押し付けてきたよ」
陛下、お疲れなんだ……
じゃあ、変なこと言って余計疲れさせちゃうかしら。
早く休んでもらった方がいいかもしれない。
私の肩に顎を乗せて小犬みたいに甘えている陛下の顔をちらっと盗み見る。
ああ、でも、やっぱり言わなきゃダメだ。
このひとが辛い思いをしてるのなら、すぐにでもどうにかしたい。
今日いきなりどうこう、ってことじゃなくても、まずは私の気持ちを伝えるのが大事なんだから。

でも、いざ言おうと思うと、緊張の余り体に力が入ってしまう。
腕の中で身を固くしている私に気付いた陛下は、そっと私から離れた。
「夕鈴も疲れたろう?
李順が最近驚くほど熱心に勉強していると言っていたし。
僕は明日も朝早いけど、君はゆっくり休むといい」
ああ、このままじゃ、また。
「……待ってくださいっ」
私は必死に離れていく陛下の袖を掴んだ。
「夕鈴?」
陛下の袖を掴んだまま、私はぎゅっと目を瞑って息を吸った。
よし、言うわよ夕鈴。
ぱっと目を開きざま、陛下の顔を仰ぎ見る。
「陛下、あのっ……
私、陛下のことが大好きなんです!」
……ああ、違う。だからそうじゃなくてっ!
「つまり、その、陛下のことが怖いなんて、そんなことちっとも思ってなくてっ」
まずい、何を言いたいのか自分でも分からなくなってきた。
陛下も驚いた顔で私を見つめている。
「怖かったのは、私、まだ何にもわかってなくて。
本物の妃って言っても、陛下のために何が出来るのかわからなかったから……」
でも、そんなの前から分かってた。
そうよ。いつだって。
―――心ひとつで、私は陛下の傍にいる。
バイトの時も、これから先も。それは何も変わらない。
「私は妃に必要なものを何も持っていません。
私が持っているものは貴方が好きだっていう心だけです」
だけど。
今は無理でも。
ただ背中に庇われてるんじゃなくて。
いつか貴方の横に並んで、貴方を隣りで支えたい。
「この前も言ったけど、私、これからいっぱい、いっぱい頑張りますから」
私は貴方に幸せにして欲しいんじゃない。
「絶対、陛下のこと幸せにしますから……っ」
ずっと傍にいて、大好きな貴方を自分の手で幸せにしたい。
その為に、戻ってきたんだもの。

もう。
やっぱり全然うまく伝えられない。
まるで糸が絡まったまま回らない糸車のように、言いたいことの半分も紡げない。
もどかしさと胸が詰まるような苦しさに、涙が浮いてくる。
いっそ、胸を開いて私の気持ちを全部そのまま陛下に見せられたらいいのに。

陛下は長い指で私の目に溜まった涙をそっと拭った。
「……夕鈴。君は、僕を想う心しか持たないと言ったけど……
それが一番欲しかったんだ。ずっとずっと。
望んではいけないと解っていたのに、どうしても手を伸ばさずにいられなかった」
陛下の指が、する、と私の頬を撫でる。
陛下の瞳に宿る熱が、私にもはっきりと分かった。
「僕は充分幸せだよ。君が傍にいてくれるから。
だけど、そんなに可愛いことを言われたらさすがに自制が利かなくなってしまう」
その熱を押し込めるように陛下は微笑んだ。
頬から離れていく手が寂しくて、私は陛下の手に自分の手を添えた。
「だったら……全部受け取って下さい」

私の言葉に、陛下が小さく息を飲んだ。
「まったく―――君は本当に困った兎だ」
大きな手が、静かに動いて私の唇に触れる。
「いつだってそうして私を驚かせる」
もう一方の手が背に回される。
「なら、全てを貰おう。
いつか君に言った通り、この涙も唇も。髪の一筋に至るまで全て。
……君のその心ごと」
陛下は低くそう言うと、私の眦に口づけた。
溢れそうになっていた涙が、熱い舌に舐めとられる。
「妃として必要なものなんて、関係ない。
夕鈴。君でなければ、こんなにも欲することなんてなかった」
囁きながら、陛下の唇が頬を滑るように降りていく。
私の唇に触れる直前で、陛下は一度顔を離して真っ直ぐこちらを見た。
「私は王としてではなく、ただ、一人の男として君を抱く。
だから、君に呼んで欲しい。
―――私の名を」

「……黎翔、さま」
はじめて口にした陛下の名前。
好きなひとの名前を呼ぶだけでこんなに胸が痛むだなんて、知らなかった。
拭われた涙が、また自然に溢れていく。
そんな私をを見る陛下も、本当に嬉しそうなのにどこか泣きそうに見えた。
「黎翔さまっ」
私は、陛下の腕に飛び込んで背中に手を回して必死にしがみついた。
もう、ほんの少しでも離れていたくなかったから。

腕に飛び込んだと同時に、熱い口づけが降ってきた。
今まで何度か深い口づけを交わしたことがあったけれど、それとは比べようがないほど深く。
私の全部を奪おうとするかのような激しい口づけに、息がきれる。
体の力が抜けて、腰がくだけてしまいそうになる。
「待っ……て、れい……」
「嫌、だ……っ
飢えた狼を煽ったのは君だろう?
……これ以上は待てない」
はあっ、と息を吐いて陛下が私の肩を抱え込んだ。
そのまま私の身を寝台に柔らかく抑え込む。
常夜灯に照らされる陛下の瞳が燃え上がるように美しくて、私は息を飲んだ。
このひとは本当に私を欲している。
一目見て、それが分かった。
もう、拒む理由なんてなかった。
私も、もっと陛下の傍に行きたい。
「夕鈴。君を愛してる」
そう言ってもう一度微笑んでから、陛下は私に触れた。


陛下に触れられて掻き立てられる熱も、泣きたくなるような恥ずかしさも。
耳元で聞こえる熱い吐息も、甘く囁く声も。
陛下のきれいな肌に光る汗も、微かにしかめられた端正な顔も。
そして与えられる身を裂くような痛みですら。
そのすべてが苦しいほど愛しい―――

陛下に触れてもらってやっとわかった。
口では伝えきれない想いを伝えたくて。
だからこうして愛しいひとと肌を重ねるんだ。
そうして二人で想いを紡ぐんだって。
私たちは、固く抱きあって何度もお互いの名前を呼んだ。



朝を告げる鳥の声に、私は目を開けた。
お腹に重い痛みを感じて、思わず身じろぎする。
「ん……」
私の動きに、私を抱きかかえて眠る陛下が小さく声を漏らした。
―――よかった。起こさずにすんだみたい。
朝日が差し込む寝台で、私は安らかに眠る陛下の顔を見つめた。
昨夜は気付かなかったけど……
陛下の整った顔に、薄らと隈がある。
きっとこの三日間、よく眠れてなかったんだろう。
「お待たせしてごめんなさい、黎翔さま」
陛下の優しさが切なくて、思わず手を伸ばしてしまった。
そっと頬に触れる私の指を、突然長い指が絡め取る。
「大丈夫。……もう待ったりなんてしないから」
「おっ、起きてたんですか!?」
陛下は慌てる私を見てちょっとだけ意地悪そうに笑った。
「昨夜の君は本当に愛らしかった。
今日からはいくらでも愛しい君を愛でていいのだろう?」
昨夜のことを思い出して、思わず顔が真っ赤になった。
「……ほっ、ほどほどに、お願いします……」
「それは無理な相談だな。私の兎は可愛すぎる。
おまけに君は、狼を煽るのが実に巧い」
陛下は笑って私に口づけた。
口調とはうらはらに、その口づけは蕩けるように優しかった。


これからたくさんの夜を貴方と共にすると思うけれど。
きっと私は、昨夜のことををずっとずっと忘れない。
はじめて本当に貴方のものになった夜を。






後記。
はじめての夜に紡がれたのは、相手への気持ちだったり愛しいひとの名前だったり。
そしてもちろん、愛だったりしたらいいんじゃないでしょーか。


お二人に幾久しく、いちゃついていただけますように。













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2015-12-04 Fri 07:01 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-12-04 Fri 08:00 | | [ 編集 ]
ゆらら様。
王道認定ありがとうございます!!嬉しい~~~ほっとしました。
通勤電車で「真面目な初夜」を延々と考え続けた甲斐があったというものです。
(アレ、なんだか私ヤバイ奴だな…)

夕鈴によって名前を呼ばれるって、やっぱり重要だと思うんですよね!!
「個」としての自分を捨ててきた陛下が「個」としての自分の存在を確立し、それを肯定する為の重要な通過儀礼なんじゃないかと!!!
(マジすぎてキモイな自分…でも私も好きなんです陛下がっっ)
それとも呼ばれるとお母さんを思い出しちゃってトラウマ発動なのかなぁ…
それはそれでオイシイ展開だなぁ…ふへへ

いつか原作で夕鈴に呼んで欲しいですね!
そして陛下に幸せそうに赤面して欲しい!!
2015-12-05 Sat 23:19 | URL | rejea [ 編集 ]
あい様。
年齢制限をつけない…
ならば、おばちゃんは若人の夢を砕くわけにはいかん!
という決意でぴゅあ~な感じに(笑)

書いている間、今息子とどハマりしている、タイナカ サチさんという方の「いとしい人へ」という曲を脳内エンドレス再生。
ピュアモードを保つのに大変助かりました。(ないとギャグか下衆になる)
1番の歌詞を夕鈴→陛下への思い
2番の歌詞を陛下→お母様、夕鈴への思い
として聞くとなぜかすごいしっくりきました。
別のアニメのエンディングなんですが、おススメです♪
2015-12-05 Sat 23:30 | URL | rejea [ 編集 ]

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