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酒と泪と元帥と衛生兵 2

続きです。
金銭で手を組んだ黎翔・浩大の作戦や如何に!

ガッカリな気配しかしませんが、続きをどうぞ。



「だぁかぁらぁ~~~、私はこうして向いてないお勉強も頑張ってる訳ですよッ!
んあ?ちょっとぉぉ、聞いてますかあ?」
予定していた状態と大分違う。
執務室のソファーで夕鈴にくだを巻かれながら、黎翔と浩大は困っていた。
まさか、こんなに少量の果実酒で泥酔するとは思わなかった。
とろんとした目許は色っぽいし、薄紅色の頬も項も見るからに可愛らしい。
だが、少しも色気のある展開になる気配がしない。
「……これまずかったね。完全に作戦間違えたわー。」
「確かにな。とりあえず酔いが醒めるまでついててやった方がいいだろう。
後で夕鈴自身が落ち込みそうだ。」
こそこそと囁き会う二人が面白くなかったらしく、夕鈴は果実酒のグラスを卓に叩きつけるように置いた。
「ずるいーーー!二人ばっかり仲良くして!」
ずんずんと迷いなく突っ込んできた夕鈴は、そのままの勢いで浩大にタックルをかました。
「浩大ったら、私も元帥と話したいのに!ずーるーいーのぉーーー!」
「うぅわっ!花嫁ちゃんそれマジ勘弁して!」
頭をぐりぐり押し付けられそうになるところを危うくひっぺがし、黎翔の方へ押しやる。
こんなところで無駄に散らすほど、自分の命は安くない。
「あーもー、ダメだこれ。オレ水もらってくるから。閣下、後はよろしく!」
浩大は形勢不利を悟るとさっさと執務室を飛び出していった。

残されたのは困惑顔の狼元帥と、くだを巻く衛生兵。
「あの、夕鈴。飲ませておいてなんだが、気分は悪くないか?」
ここまで弱いと急性アルコール中毒の心配もある。
黎翔はそっと背中を擦りながら、夕鈴の顔を覗きこんだ。
すると途端に大きな瞳がうるっと涙を孕んだ。
「うっ、うぅっ……元帥、やさしいーーーー!」
今度は黎翔の襟にしがみついたまま、わんわん泣き出した。
「どうしたんだ!夕鈴っ!?
そんなに叔母上の指導が辛いのか?」
「ちっ、違うんですっ……瑠霞さまは優しいし、キレイだし、スタイル抜群だし……
ああいう方が本当の淑女なんだなって、思って……」
しゃくりあげながら夕鈴はぼろぼろと泪をこぼす。
「分かって、たんです……自分が元帥に相応しくないこと、くらい……
でも、淑女教育を受け出したら、本当にこのままじゃダメなんだって……!
私、こんなのじゃ、婚約者って名乗れない……」
ひぐひぐと泣きながら紡がれる夕鈴の言葉。
普段は笑顔に隠して、決して黎翔に見せようとしなかった本音が、大粒の涙と共にこぼれ出てきた。
その言葉に、黎翔の瞳がするどく細められる。
「夕鈴……
君はそれを気にして、君の父親への挨拶も先延ばしにしてくれと言ったのか?」
「だって……もっとちゃんと、婚約者って名乗れるようになってからって、思って……」
何故挨拶を先延ばしにしたいと言ってきたのか分からなかったが、漸く理由がはっきりした。
「つまり、君は私の婚約者たる自信が無いということか?」
思いのほか低く鋭い語気に、夕鈴はびくりと肩を震わせる。
「それで、私に触れられるのを避けているのか。
いつでも逃げ出せるように、自分に逃げ道を作って―――?」
「違いますっ!」
苦しげに歪む黎翔の顔を振り仰ぎ、夕鈴は叫んだ。
またしてもぼろぼろと涙がこぼれる。
「一度そうしたら……ずるずる甘えて自分に言い訳しちゃいそうで怖くて……
わ、私も本当は……元帥に、触れたい……です……」
真っ赤な顔をして黙ってしまった夕鈴を、堪らず黎翔は抱き締めた。
こんなにも愛しいひとが傍に居る。
自分を想ってくれている。
こんな幸せが自分に訪れるなど、彼女に出会う前は考えてもいなかったのに。
胸に掻き抱き、想いを口にせずにはいられなかった。
「夕鈴、全く君と言う人は―――
どんな貴族の令嬢だろうがどれほどの美人だろうが、私にとってはそんなもの何の価値も無い。
私は、そのままの君が欲しいんだ。君以外、要らない。」
夕鈴は黎翔の胸に包まれて、小さく嗚咽を漏らした。
どうしてこの人はこんなにも一途に、何も持たない自分を求めてくれるのだろう。
国中の、どんな女性でも望めば手に入れられる人なのに。

黎翔は黙って夕鈴の背を撫でていたが、暫くすると口を開いた。
「甘えてしまうのが怖いと言ったな、夕鈴。
私が、君を甘やかしたいと心から願っていたとしても、か……?」
くらくらする頭に、耳元から滑りこんでくる黎翔の甘い声が響く。
温かい胸に包まれ泣くのを止めた夕鈴の顎を、黎翔は長い指で捕らえ上向かせた。
「夕鈴。君を愛している。苦しい程―――」
「元帥……」
柔らかな温もりが、そっと互いの唇に触れた。
久しぶりに合わせた夕鈴の唇に舌先で触れると、果実酒の香りと涙の味がした。
本来塩辛いはずのそれは、目眩がするほど甘く、芳しく、黎翔の心を融かした。



(この甘さを、どれだけ夢に見ただろうか……)
黎翔がうっとりと自分に身を任せる夕鈴の唇に舌を差し入れようとしたその時、執務室の扉が勢いよく開かれた。
驚いて振り返った先に―――
氷の微笑を浮かべた瑠霞と、彼女に猫のように襟首を掴まれた浩大の姿があった。
「ごめーん、閣下。つかまっちった。」
「私の預り知らぬところで、随分楽しそうなことをしているわね。
せっかくだから私も混ぜてもらいましょうか……?」

こうして果実酒によるふれあいを求めた攻防は、強力な奇襲を受けて終結を迎えたのである。



「それでね、私が部屋に入った時には、夕鈴さんはもうあの子の膝でぐったりしてたってわけ。
そんな状態の貴女を、黎翔に任せてなんておけないでしょ?」
くすくすと紅い瞳を細めて、瑠霞は囁くように昨夜の顛末を語った。
「そ、それは、本当にご迷惑をおかけしました……」
夕鈴は居たたまれず、出来得る限り姿勢を正して、同じベッドに寝転んでいる瑠霞に頭を下げる。
「いったぁぁ……」
その拍子にズキリと痛む頭を思わず押さえた夕鈴を労わるように、瑠霞はそっとベッドへ寝ころぶよう促した。
「悪いのは貴女じゃなくって、黎翔と浩大よ。
今日はゆっくりするといいわ。
私の方の仕事は浩大にやらせてるし、何にも気にしなくていいわ。」
瑠霞はするりとベッドから抜け出て、水差しからコップに水を移し夕鈴に渡した。
「今回は私もちょっと反省したのよ。
貴女には不安な思いをさせちゃったわ。
色々慣れない事ばかりの中頑張っているんですもの。
少しくらい恋人に甘えても何も悪くないのよ?」
予想外の瑠霞の言葉に、夕鈴は目を丸くした。
「で、でも、結婚前にべたべたするのはよろしくないんですよね?」
「それは、モノには限度というものがあるわ。
放っておいたら黎翔はそんなもの考えもしないでしょうけど。」
瑠霞は寝起きでも美しいその顔を嫣然とほころばせた。
「だから貴女が手綱を握りなさい、夕鈴さん。
触れてもいいけれど、節度を守らせるの。
これも花嫁修業の一環よ?」
真っ赤な顔をして黙ってしまった夕鈴に、瑠霞はにこりと微笑んだ。
嬉しいことに、思ったよりもこの娘は黎翔に惚れこんでいた。
少しは接触を持たせてあげなければ、彼女の方が責任感で潰れてしまうかもしれない。
黎翔との漫才のようなやりとりは、彼女にとっていい気分転換になるだろう。
この初々しく純朴な少女には是非とも幸せになってもらいたい。
そして彼女と出会う前は、こと恋愛方面に関して『歩く海綿体』のようだった甥っ子も、彼女のおかげで恋愛の機敏とは何かを感じられるようになったようだ。
このような僥倖は、彼女を逃せば今後万に一つもないだろう。
ウマが合わないとはいえ、甥は甥。
どうにかこれで一人前になれるのではないかと、瑠霞も期待しているのだ。
(それに、さんざん黎翔を兵糧攻め(食料、つまり夕鈴を絶つ戦術)して楽しめたことだし……
今度は据え膳にありつけない苦しみを味あわせてあげるのもまた一興だわ♪)
瑠霞は新しい戦略に、朝日に照り映える豊満な胸を躍らせたのだった。




後記。
はい、一言で言うと朝チュン詐欺です!!
冒頭の紅い瞳は、元帥ではなくて瑠霞さまの瞳でございました。
バレバレでしたでしょうか(^-^;
ガッカリ元帥は朝チュンを迎えられませんでしたが、ちょっとは進展したような。
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白陽帝国の花嫁Ⅱ | コメント:6 |
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-11-08 Sun 15:39 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-11-09 Mon 19:17 | | [ 編集 ]
すみません…内容が吹っ飛びました…歩く海綿体で(笑)←

なんでソコに反応するかな~私…(;´Д`)

イヤ、残念元帥大好物ナンですの!!自分のゲスさが嫌に成るわ~(笑)
2015-11-10 Tue 00:07 | URL | 行 [ 編集 ]
あい様。
朝チュンできませんでした、元帥~。なぜなら彼はガッカリだから…
そして彼のアレは、すでに無駄に臨戦態勢だったのではと思われます(*´ω`*)
前屈みで動けない隙に瑠霞様に夕鈴を盗られたのではなかろうかと。

おしゃれなお酒がわからない私、おもいっきり検索しました。
カクテル=おしゃれ女子!いいなぁ♪ステキです。しかもお酒強いですね!!
それにひきかえ、小料理屋で日本酒を飲むのがご褒美な私……最高のツマミはイカゲソ肝焼きです
女子力はどこかに棄てました(´Д`|||)

2015-11-11 Wed 23:34 | URL | rejea [ 編集 ]
ゆらら様。
そこ、気付いて頂けて嬉しいです!
一番書きたかったとこなのでヽ(´▽`)/←キスシーンじゃないのかよ

幼少から英才教育を受けた方に笑って頂けるなんて!やったああああ!!
しかもガッカリ感半端ないのに喜んでもらえるなんて恐縮です。
なんでこんなに進展しないんでしょう←ガッカリ海綿体だから
早く真人間になれればいいんですが、なる気がしませんね、元帥。

2015-11-11 Wed 23:45 | URL | rejea [ 編集 ]
行様。
大丈夫です!
書いてる私も今回のハイライトはそこだと思ってます!d(^o^)グッ

瑠霞さまは淑女。
さすがに『歩くチ(以下自粛)』と言わせるわけにはいかなくてですね。
上品さを演出するために漢字三文字でお届けしました♪←下品だよ
2015-11-11 Wed 23:51 | URL | rejea [ 編集 ]

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