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狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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狼な嫁と兎な陛下 8

まずはLaLa仕様で最後まで。
臨時の二人って切ないですねぇ。
すれ違って寂しくて。それすら口にできなくて。
そこも好きだし、なにより不器用な二人が愛しいです。

最新刊発売したら第一章、1話から読み直そう(*´▽`*)←仕事と家事しろ







「ねぇ、夕鈴。こっち向いて?」
ぎくしゃくと茶器を温めながら貼り付いたような笑顔で下を向き続ける夕鈴の耳に、じれたような小犬の声が届く。
「ちょっとだけ、待って下さい。とにかくお茶を準備しちゃいますからっ。」
「僕、もうずーっと待ってるよ。早く可愛いお嫁さんの顔が見たいんだけどな。」
何故だろう。
今日の陛下は口調は小犬でも、こちらに向ける視線は常に狼の気配を纏っている。
夕鈴は思わず身を竦ませた。
この視線に、今、目を逸らさず対峙することなんて出来るのだろうか。
考えただけで指先が震える。
体中の血が沸騰してでもいるかのように熱い。
真っ赤になって黙ってしまった夕鈴に、黎翔は静かに問い掛けた。
「―――夕鈴。君は昨日のこと、どこまで覚えてる?」
「はっ、はい!?
……そうですね……体が元に戻ってからはなんだか頭がぼんやりしてて。はっきりわからないんです。
あの、私、陛下の部屋で寝ちゃったんですよね!?すみませんでしたっ!
覚えてないけど、わざわざ運んでもらったって聞いてっ……」
「本当に、なんにも覚えてないの?」
「全然っ!全く!なんっっにも覚えてません!」
必死な顔でそう繰り返す夕鈴に、黎翔は小さく溜め息をついた。
卓を回って、あっという間に夕鈴の横に腰を下ろすと、ひょいっと細い体を抱きかかえる。
いつもの事だがいきなり膝の上に乗せられ、背中から長い腕にぎゅっと抱え込まれ、夕鈴は息を飲んだ。
「へ、陛下っ、まだお茶が……」
「お茶より今は夕鈴がいい。」
「またそんなこと言って……」
(貴方がそんな風に言うと、勘違いしちゃうじゃない。)

だからあんな夢を見たのだ。
本当は自分はこの人とああなりたいのだと、思い知らされた夢。
口付けて、口付けられて。
痛いほどに抱きしめられて。
バイトの身には決して許されない望みなのに。

夢の感覚がまざまざと蘇って、恥ずかしさのあまり夕鈴は俯いた。
その拍子にさらりと揺れた髪と、そのすぐ横で紅葉のように色づいた耳に、黎翔は唇を寄せた。
「今日の君は、いつにも増して恥じらう姿が可愛らしいな。
何か、艶めいた夢でも見たのか?愛しい妃よ。」
耳許で、唐突に低くて甘い狼の声がする。
その声は、いつも夕鈴の頭を痺れさせ、思考を奪う。
「ゆ、夢なんて……なにも……」
ぎゅっと目を瞑った夕鈴の髪を一筋掬って、黎翔は薄らと笑みを浮かべた口許へと寄せた。
「私は昨日、とても佳い夢を見た。
―――君を抱いて眠る夢だ。
唇を、肌を互いに寄せあい、夜が白むまで君と二人。
出来ることならそのまま、まどろんでいたかった。」

夕鈴は目を見開いた。
(どうして陛下が私と同じ夢を見てるの―――)
魂が入れ替わっていたことと、なにか関わりがあるのだろうか。
夕鈴は上体を捻って、黎翔の顔を見上げた。
そこにあったのは、心臓が音を立てて跳ね上がる程美しい、狼の顔。
その熱の籠った表情も。
まるで心から愛するひとを見据えるような瞳も。
(ああ、狼の演技だ……)
陛下にとってはただの演技のネタに過ぎないかもしれないが。
夕鈴にとっては決して知られてはいけない、固く守るべき秘密の願いだ。

「そう、ですか……それは、嬉しいことですわ。陛下。」
無理やり妃らしく微笑んで、夕鈴は再び前を向いた。
なぜ、こんなに胸が痛いのだろう。
心のどこかで、こんな言葉をかけられるだろう『本物』の誰かが羨ましいと思っているからか。

「―――今宵は、この甘美な夢を現(うつつ)のものにしてはくれまいか。
愛しい妃よ。」

甘い声が頭上から降り注ぐ。
陛下の演技はいつだって完璧だ。
愛しているフリが、こんなにも上手―――

(わかってるわ。私は、ただの下町の売れ残りのバイトだってことくらい……)

「陛下。演技はおしまいです。
……今日の陛下は、演技過剰です。」
夕鈴は前を向いたまま、そう告げた。
そしてそのまま膝を抱えるようにして自分の顔を隠した。
絶対に見られたくなかった。
きっと、今にも泣き出しそうな酷い顔をしているに違いないから。
「……そっか。
ごめんね、夕鈴。」
小犬の声で黎翔が謝る。
決して振り向かなかった夕鈴は、黎翔の表情がどこか痛みを堪えてでもいるかのように歪んでいたことに気付かなかった。

肌寒い風が、四阿に吹き込む。
冬の気配が、静かに後宮へと忍び寄る。
春まだ遠い秋の日に。
偽物の夫婦はまた一つ互いに秘密を抱えて、静かに身を寄せあい座っていた。

もう少し。
もう少しだけ、このままで。





「のぅのぅ、掃除娘よ!
昨夜は陛下とぶっちゃけどこまで行ったんじゃ?らぶらぶしたんかの?
んん~~~??」
「だから、どこにも行ってませんて!
しつっこいんですよ、老師!何度目ですか、その質問っ。」
後宮へ戻った夕鈴を待っていたのは、張元の熱烈な歓迎と執拗な質問責めだった。
「せっかくの機会を棒に振るとは、いやはや嘆かわしい……
お主はバイトとはいえ妃なんじゃ。ガツンと行かんか、ガツンと!
いや、隠しとるだけで、ちょびーっと大人の展開があったんじゃなかろうかのぅ?
お主はなんか見とらんのか、小僧!」
老師は横で菓子をぱくついている浩大に矛先を向けた。
「いーや、なんにも。
てか、もしなんかあったとして、それをオレが見ようものなら、陛下に何されるかわかんないでしょ。」
「肝心な時に役に立たん奴じゃのう!」
むきいっと地団太を踏む張元を呆れたように見やった夕鈴は、やたらと取り澄ました顔をした浩大へと視線を向けた。
「浩大。あなた、本当に何も見てない?私、頭がぼんやりしてて昨夜のことよく覚えて無いんだけど……
その、なにか、陛下に失礼なこととか……してなかったかなって……」
浩大は夕鈴の肩にぽん、と手を置いた。
そして耳許で小さく囁いた。
「な~~~んにも、見てないよ?
お妃ちゃんがうっかり陛下を寝台に押し倒したり、そのまま抱きついてたりしたとこなんて、ネ。」

「っなっっ!?」
夕鈴が袖に掴みかかろうとしたその時には、悪戯っぽい笑い声だけを残して浩大は姿を消していた。
「なんじゃなんじゃ、どうした掃除娘!
今小僧は何を言ったんじゃ!!!」
茫然と立ちすくむ夕鈴には、張元の言葉など届いていなかった。
(どこからが夢で、どこからが夢じゃなかったの!?
陛下は、本当に夢だと思ってるの!?)
ただ、それを真正面から聞くのは危険過ぎる。
李順にばれでもしたら、きっとクビになるに違いない。



陛下の傍にいたいなら、やっぱり無かったことにしよう。
夕鈴は迷いを断ち切るように、ただひたすら掃除に精を出すのだった。



後記。
切なくなりすぎた気がしないでもない、最終話。
老師と浩大ですこし明るくなればいいなと書き足しました。

次はオマケの湯桶ルートを。






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コメント

あぁ。もう(T_T)
鈍感過ぎにも、ほどがある!
陛下と夕鈴の切なすぎる恋心。
今はラブラブの本誌だけど
私なんぞ、しょっちゅう読み返してますよー
で、新たなる発見があったりします。
2015-09-03 Thu 06:45 | URL | くみ [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-09-03 Thu 08:03 | | [ 編集 ]
くみさま。
切ないですよね、読み返すとほんとに。
瑠霞姫とピクニックで舟に乗っているときに、夕鈴の想像のなかで陛下と別の女性が寄り添ってるコマがあるんですが。
なんか、すごい悲しくなります。
夕鈴じゃなきゃ嫌だい!と叫びたくなります。
そろそろヤバいのかもしれません。

切ないあれこれの後の新婚編が堪らないですよね!
2015-09-03 Thu 23:56 | URL | rejea [ 編集 ]
あい様。
You、やっちゃいなよ!
ってことで湯桶をアップしましたのでお暇な時にでも読んで下さいませ(^-^;)
エロは難しいです、ほんと。
読んでるのが一番楽しいですな~。
シリアスな展開に一番驚いているのは、きっと私自身です(笑)
なんでこうなった…

コミックス楽しみすぎて連続アップしてしまいました。
書き下ろしあったら萌え死ぬかもしれません。
楽しみぃぃぃ。
2015-09-04 Fri 00:03 | URL | rejea [ 編集 ]

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