星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

狼な嫁と兎な陛下 5

暑い日が続いてますが、いかがお過ごしですか?

お盆時期は電車が空いてるのでSSも書きやすかったです。
そんな腐った通勤風景…

さて、肉食夕鈴、政務室へ出向きます。
方淵頑張れ!






常日頃烈しくも厳しい、極寒の気配漂う狼陛下の政務室が、今日はどうにもふわふわと甘ったるい空気に満ちていた。
理由は、そうーーー

今日のお妃さまは、何かヤバい。

官吏一同はついつい一箇所に吸い寄せられる視線を逸らすのに必死だった。
普段は初々しい少女のような爽やかな可愛らしさを身に纏う方が、今日は一体どうしたというのだろう。
熱を帯びた視線は常に陛下に向けられ、目が合う度に笑みを含んで細められる。
その微笑みは何故か艶を孕んで、まるでその度に陛下を誘っておられるようで。
指先の動き一つ、座る仕種一つとっても、その身体から隠しきれない色香が溢れ出ていて、純真無垢な普段との違いが際立ってどうにもいけない。
つまり、陛下に愛される時はもっと……と、知らず知らずのうちに想像してしまうのだ。
はっきり言って目の毒以外の何物でもない。

それにお妃さまもそうだが、陛下も何やらいつもと違う。
お妃さまと目が合う度に、微かに陛下の耳の先が赤くなるのを何度も目撃した若い官吏は、今までお二人が常に無く体調不良で休んでいたことといい、あの冷静な陛下が此処まで動揺なさるとは、先ほどまで一体何が行われたのだろう……と想像を巡らせ、背を屈める羽目になった。

そして何よりも、今日一番政務室でおかしいのは、謹厳実直、滅私奉公の八文字を陛下ただ一人の為に体現する男―――
柳 方淵その人である。

いつもは周りがお妃さまの来訪に浮き足立てば眉間にシワを寄せ
「無駄な愛想を振り撒く暇が有れば、陛下の為に少しでも早く動け」
だのなんだの小言を喰らわせてくる彼は、どうしたわけか手元の書類を睨みながらひたすら下を向いている。
時折、すごい勢いで首を左右に振ってなにやらブツブツとつぶやく様は、不気味以外のなんでもない。


「私は気になどしていない……してなどいないっ……」
呪文のように同じ言葉を繰り返しながら筆を動かすものの、まるで泥ででも書いているかのようにちっとも捗らない。
その合間にも、方淵の長い前髪の隙間からは嬉しげに陛下を見つめる妃の姿が覗く。
(何なのだ、今日のあの方はっ!なぜあんなにいつもと違う!?
なぜ、私はいちいちあの方を気にせねばならんのだ!)

気になるなら堂々と見た方がすっきりするのだが、真面目な方淵の頭にその方法は浮かばなかったらしい。
さらには女性に目を奪われるという経験自体無いものだから、落ち着かない自らに苛立ち、その怒りを夕鈴へと転化してしまっている。
(くっ……あんなにいちいち嬉しげに微笑むな!)
こっそり毒づいた次の瞬間、ふと夕鈴の視線が方淵を捉えた。

ふ、と。花が風に揺すられたようにほんの少し。
夕鈴は微笑した。
そしてすぐに、すっとしなやかな腰を伸ばし、扇で優雅に顔を隠し、真っ直ぐに陛下を見つめる。

方淵ははっきりと、自分が彼女に目を奪われたことを自覚した。
陛下一人を心を込めて見つめるその横顔は、今まで見た女人の中で一番美しいと思った。

(他の男など、視界にすら入っていないのか。
先程私に向けた微笑みと、今とでは、全く違う……)
分かりきっていたことであるのに、なぜかその事実は方淵の胸の中、微かな痛みを呼び起こす。
(……馬鹿馬鹿しい。)
方淵はもう何度目になるか分からないが、改めて頭を振った。

そんな方淵を眺めて、水月はくすりと笑う。
「若いって素晴らしいねぇ。青春だなぁ。」
「無駄口を叩く暇があるなら仕事をしろ。
第一、一つしか歳は変わらんだろうに。」
キッとこちらを睨む方淵の手元を覗き込んで、水月は言う。
「今日の君よりは、私の方が大分捗っているよ。珍しいことにね。」
うっ、と詰まった方淵に水月は宥めるような微笑を送った。
「花が人目を奪うことも、また花に目を奪われることも、決して罪ではないよ。
人は美しいものを愛でたくなるものだから。」
ちらりと夕鈴を見やってから水月は苦笑した。
「ただ……今日のお妃さまは普段見慣れないだけに反則かな。
あれは見るなと言う方が無理だと思うよ。
見てごらん。」
水月の視線の先。
今まで自分の事に手一杯で気付いていなかったが、口を半開きにして妃を見つめる官吏たちの姿が目に入る。
「あの破壊力に対抗できるのなんて、李順殿くらいじゃないかな。」
「これは……まずいのではないか?」
揃って陛下の表情を盗み見る。
そこには予想通り、すこぶる不機嫌な顔が周りを睨みつけていた。


(夕鈴があんな色っぽい顔するから……
それにしても何なんだあいつらは。
我が妃をジロジロと無遠慮に眺め回すとは。
この私を前にしていい度胸だ。)
あまりにも夕鈴が嬉しそうなので耐えていたが、もはや我慢も限界。
あのいかがわしい視線にこれ以上夕鈴をさらし続けるなど、言語道断だ。
「我が妃よ、書庫の整理を頼んでもよいか?私も共に行こう。」
立ち上がりつつ溜まりかねて口を開いた黎翔に、夕鈴は花が綻ぶような笑顔で応えた。
「はい、陛下。
少しの間だけでも、また愛しい陛下と二人きりになれるなら………
私は何でも致します。」
(か、可愛すぎるっ……!!)
声にならない男たちの叫びが各自の胸の内でこだました。



「ねぇ、夕鈴。あの……ちょっとだけ離れてくれないかな?」
「えー?ヤです。さっきくっつかれるのお嫌じゃないって仰ったじゃないですか。」
黎翔の膝の上、胸に頬を擦り寄せながら夕鈴はくすくすと笑った。
「もちろん嫌じゃないけど、落ち着かないよ!」
「私はとっても落ち着きますよ?陛下の匂い……」
首もとで息を吸い込む微かな音。
それと共に立ち上る花の薫り。
(何で僕のお嫁さんはこんなに可愛いんだ……)
黎翔は赤い顔を手で覆って天井を仰いだ。
「あのね、夕鈴があんまり可愛いから、官吏の皆が仕事にならないみたいなんだ。
だから、今日は悪いけどこのまま後宮に戻ってもらえないかな?
僕自身、あんまりにもあいつらが君のことジロジロ見てるから気になって仕方ないよ。」
夕鈴は一瞬きょとんとした後、ゆっくりと微笑んだ。
「陛下。それって、ヤキモチですか?」
普段決してこんな直球勝負に出ない夕鈴からの一言で、あえなく黎翔は慌てふためいた。
「ヤ、ヤキモチっていうか、その、まぁ、はっきり言えばそういうことになるのかな……」
「ふふふ、かわいい!」
夕鈴はご機嫌で黎翔に抱きつくと、耳元で囁いた。
「陛下のお望みですから先に後宮に戻りますけど……
お仕事早く終わらせて帰ってきて下さいね。へ・い・か?」


(僕のお嫁さんは可愛すぎる!!もうこれは反則だ!)
後宮へ去る夕鈴を見届けながら、黎翔は深い深い溜息をついた。





後記。
大体普段夕鈴がやられてることばっかりなので、陛下も慌てふためいたらいい!
お妃さまの苦労を知ればいい!
そして方淵は無駄に振り回されればいい!! 
最近方淵をいじりたくて仕方ないです。
暑いからでしょうか??

…水月さんって女性に心奪われたりするんですかね?
この人が一番よくわからないです。
関連記事
スポンサーサイト
狼な嫁と兎な陛下※臨時妃設定 | コメント:8 |
<<狼な嫁と兎な陛下 6 | ホーム | おそまきながら…>>

コメント

きゃー、肉食夕鈴素敵!
このまま突っ走ってしまえー、なーんておもってしまいました。
さて、方淵殿、ときめいてますよ。
真っ直ぐ立てる?(笑)
2015-08-17 Mon 05:56 | URL | くみ [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-08-17 Mon 11:00 | | [ 編集 ]
くみ様。
さすがです!
コメント読んで吹き出しました

なんとなく作業中で座ってるのでセーフ!
ということにしますか?
むしろ前屈みでアウト!がご希望ですか?(笑)
2015-08-19 Wed 08:02 | URL | rejea [ 編集 ]
あい様。
仕事しながらの夏休みは本当に恐怖ですね(・_・;)
夫が家にいるのに何もしない…よくある!!
本気でマンスリーに家出したくなった時も数回(笑)
居なくて家事やらないならまだしも、居てもやらないのは本当にキツいですね(T^T)
ご自愛下さい!


ど、どこまで迫ったらいいですかね?
数日悶々と考えてます…
2015-08-19 Wed 08:09 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-08-19 Wed 22:18 | | [ 編集 ]
あい様。
高校野球は確かに楽しいけどもっ!
なにこれ、うちの話かしらと目を疑いました(^_^;)


おおお、押し倒してご奉仕ですと!?
陛下、幸せすぎてどうにかなっちゃうのでは(笑)
それもいいなぁー…えへえへへ…←ヤバい

臨時にしなきゃ良かったかなぁ…
と、悶々としています
いっそ爽やか陛下Ver.とイカガワシイ陛下Ver.両方書くかなぁーなんて思ったりもしてます。
2015-08-19 Wed 23:52 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-08-20 Thu 12:16 | | [ 編集 ]
あい様。
本当めっちゃ悩みます…
いかがわしいバージョンだと、陛下が完全にセクハラ魔(むしろ痴漢?)になってしまう!

まぁ、いいか…だって二次だし!いかがわしくてナンボよ!

いやいや、陛下は紳士なのよ!清く正しくするべきよ!


…という天使と悪魔の声が脳内に響いてます(;´Д`)
2015-08-20 Thu 23:35 | URL | rejea [ 編集 ]

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |