星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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狼な嫁と兎な陛下 2

傍迷惑な実験二次小説、入れ替わり夫婦の続きです。
狼な嫁も良いよな…というただそれだけです。
『』内に書かれている名前は外見を表しています。
読んでいてややこしくてイライラしちゃうわっ!という方はどうかご無理なさらず…



張元老師は長椅子に並んでいる国王夫妻をしげしげと眺めて口を開いた。
「もう一度確認すると、こちらに座っておられる『陛下』が掃除娘。」
肩を落としてすらりとした体を小さくさせている『黎翔』が情けなさそうに頷く。
「こちらに座っとる『掃除娘』が陛下でいらっしゃる、ということですかの?」
脚を組み、女王のような気品と貫禄を漂わせた『夕鈴』が薄く笑いつつ頷く。
「そういうことだ。
老師にはこれが一体何なのか、どうしたら元に戻るのか調べて貰いたい。」
「……この迫力は確かに陛下、ですのぉ。やー、長生きはするもんじゃな。
こんな珍妙な光景を見られるとは。」
感心したような呑気な張元の様子に、横にいた李順はすかさず口を挟んだ。
「これは国の浮沈が懸かった一大事。老師、どうか宜しくお願いします!」
「大袈裟だの、若造。こんな馬鹿みたいな話、信じる奴なぞそうはおらんじゃろ。
どうとでも誤魔化せるわい。」
ふん、と鼻で笑った老師に、李順は言葉を返した。
「後宮に関してはどうにでもなります。陛下が夕鈴殿の演技をするのに不安はないですよ。
ただ、政務はどうします?夕鈴殿が『陛下』として振る舞えると思われますか?」
「そりゃ無理じゃろな。」
あっさり否定する張元。
「私も絶対無理だと思います……」 
青い顔をして『黎翔』も頷く。
「何の為にお主がおるんじゃ小僧。取りあえず表立って動くのは李順。
陛下と掃除娘は二人して体調不良とでもして、陛下の自室に籠もられれば良い。
そこで署名なり落款なり、陛下に作業して頂くんじゃな。」
事も無げに指示を出す張元に、李順も溜め息混じりに頷く。
「やはりそれしか無いでしょうね。
張元老師、出来るだけ早く解決策を見つけて頂けますようお願いしますよ。」
「オレからも頼むよジッチャン。今の状態で刺客に襲われたら対応出来ない。
陛下だって『お妃ちゃん』の筋力じゃ剣なんて振り回せないだろうしサ。
二人で自室に籠もるってのは大賛成。」
浩大も真面目な顔をしてうんうんと頷いているが、その目はどう見てもキラキラと輝いている。
どうやらこの状況をかなり楽しんでいるらしい。
「取りあえず後宮の書庫をあさってみるかの。
……掃除娘の為にはなるべく早く解決してやらんと憐れじゃ。」
張元はちらりと『黎翔』の体になってしまった夕鈴を見やると、ひょいひょいと部屋を出て行った。

「私が憐れ……って、何ででしょうね?
大変なのは陛下も変わらないのに。」
『黎翔』は不思議そうに首を傾げる。
「何でだろうね?夕鈴。
ところで、妃の衣装ってすっごく苦しいね。帯でぐるぐる巻きだし、この下に何本も紐が通ってるみたいだし……
ちょっと緩めてもいい?」
さっさと帯に手をかける『夕鈴』に、『黎翔』は慌てて飛びついた。
「なっなっなっ、何てことするんですか!恥ずかしい!やめて下さい!!」
「えー。だって苦しいんだもん。
じゃあ……夕鈴が緩めて?」
にっこりと微笑む『夕鈴』と顔を真っ赤っかにして唸っている『黎翔』。
「へーか、完全に楽しんでんな。」
「いい気なものですね……全く、こちらとしては不測の事態過ぎて倒れそうだというのに。」
李順は苛立たしげに頭を押さえて嘆くと、ニヤニヤする浩大から離れ国王夫妻に向き直った。
「それではまずは陛下の自室にさっさと移動致しましょう。
夕鈴殿は堂々と背筋を伸ばして、黙ったまま大股で歩きなさい!
陛下は裾捌きに気を配りつつ小股で、夕鈴殿の後を一歩下がってついて来て下さい!」
李順の鬼のような気迫に気圧されて、じゃれていた二人はこくこくと真剣に頷いたのだった。



方淵は李順の指示で王宮内の陛下の自室へと書簡を運んでいた。
先ほど、陛下が急な体調不良で、午後の政務は自室で休みつつ行うことになったとの説明がなされたことで、政務室はにわかに蜂の巣を突いたような騒ぎになった。
急ぎ陛下に署名して頂く物を集め、意見を賜るものは質問事項をまとめ、出来た傍から順次運ぶ事にした。
最初は李順自ら運んでいたが、代理として会議に出席するとのことで、代わりに方淵が自室へ伺う大役を仰せつかったのだ。

「いいですか。陛下は体調が悪い中無理をなさっておられます。
くれぐれも長居はせず、粛々と運び入れ、出来たものを直ちにこちらまで戻すように。」

鬼のような形相の李順の指示を思い出しつつ、方淵は陛下の自室の扉の前で背筋を伸ばした。
「陛下、失礼致します。
追加の書簡をお持ち致しました。」

両手に捧げもった書簡の向こう側に見えたのは、陛下の机に座ってなにやら筆を走らせている『妃』の姿。
「貴女は一体何をしているんだ。」
方淵は眉間に深く皺を刻んでつかつかと文机へ近寄った。
「方淵殿、御機嫌よう。書簡ならそこに置いていくといい。」
さらさらと筆を走らせる『妃』に方淵は噛みついた。
「『陛下』はどちらにいらっしゃるのか。
これは貴女が手を出すべきことではないのではないか!?」
「『陛下』は今寝台でお休みになっています。
大きな声を出さないでもらいたいものです。」
じろりと視線を上げる『妃』の常にない迫力に、方淵は一瞬たじろいだ。
「それは……失礼した。だが、政務に使う書簡に貴女が手を加えるなど、越権行為も甚だしいのは事実だ。」
二人の間に一気に険悪な空気が流れる。

寝台の天蓋の陰で、『黎翔』は息を詰めて二人の様子を窺っていた。
(あーーー、もう方淵殿ったら。さっさと置いて早く帰りなさいよっ!
さっきからアンタが悪態ついてる相手は私じゃなくて、陛下よ陛下!!
……うーん、それにしても方淵殿が本当の事知ったら色んなショックのあまり頭丸めかねないわね…)
丸坊主の方淵を想像してなんとも言えない気分になった『黎翔』は、冷たい空気をばしばし放っている『夕鈴』の姿をはらはらと見守る。
(陛下!なんとかうまく誤魔化して下さいっ……)

「私は先ほど『陛下』からご指示頂いたことだけしか手を出しておりませんわ。
余計な口出しはしないで頂きたいものね、方淵。」
うっすらと冷気を漂わせて、『夕鈴』の口から言葉が紡がれる。
方淵は常に政務室で感じている空気を感じ取り、眉間に皺を寄せる。
(何だ、この視線は……これはいつもの妃ではない。
―――寧ろ、陛下に近い。)
「貴女はどうもいつもと違うようだ。」
『夕鈴』は内心で舌打ちした。
(しまった、こいつは夕鈴に対して遠慮する奴じゃなかったな……)
「具合でも悪いのか?」
近づく方淵に、ますます『夕鈴』の機嫌は悪くなる。
「いいえ、大したことでは。常に無い職務ですのでいささか緊張しているだけですわ。」
(方淵め。私の『妃』に近づき過ぎだ……)
じろりと睨むが、方淵はその視線に負けずに『夕鈴』の顔色を見た後、ふと手許を覗きこんだ。
そこには、見慣れた陛下の手筋と全く遜色の無い男文字で、修正箇所が指摘されていた。
「これは……なんと、『陛下』の書かれる文字と全く同じだと言っていいほどの出来だ。」
ハッキリ言って、方淵は『妃』を見下していた部分があった。
政務や王宮での情勢等に疎いこの『妃』のこと。
どうせ適当な女文字で見当違いな書き込みでもしているのではないかと。
「私は貴女をいささか侮っていたようだ。」
しげしげと眺める方淵に、『夕鈴』はひたすら冷気を漂わせて睨みつけるように応える。
「呑気なことを言っている場合か、方淵。
ここに書かれている壬州への追加予算案は昨日『陛下』が指示したものと違っている。
すぐさま政務室へ持ち帰り、訂正なさい。」
方淵ははっとして背筋を伸ばし、拱手した。
「…申し訳ございません。すぐに。」
方淵は落款や署名のなされた書簡を持ち、慌てて退出した。
『夕鈴』は不愉快そうに息をつき、その後ろ姿を見送った。

王宮の廊下を速足で移動する方淵の耳は、何時になく赤く染まっていた。
(どうしたというのだ、私は。
なぜかあの『妃』に睨まれて動悸がするなど―――)
方淵はぶんぶんと頭を振って迷いを消そうとしたが、脳裏に浮かんだ『妃』の妖艶で冷たい視線はなかなか消すことが出来なかった。
(違う。断じて違う!
……これは邪な気持などではないぞっ!!)
誰に対しての言い訳なのか、方淵は頭の中でぐるぐると同じ言葉ばかりを繰り返す。
それでもついつい先ほどの『妃』の視線と声音を思い出し、またしても頬を染めては頭を振るという奇行を何度も繰り返す方淵を、同僚たちは首を傾げて見守るしかなかった。
柳 方淵。
仕事は出来るが、男女の色恋についてはまだまだ修行が足りなかった。


方淵が部屋を出て行くと、『黎翔』はもそもそと天蓋から這い出して『夕鈴』の元へ近寄った。
「陛下、ちょっと、なんだか怖すぎません?迫力あり過ぎというか。」
「だって、方淵のやつ、『夕鈴』の体に近付き過ぎ。……いつもあんなに近い距離で話してるの?」
自分の顔に睨まれるというのはあまり気分のいいものではない。
『黎翔』は困ったように身を引いたが、その手はすぐさま『夕鈴』の小さな手に絡めとられた。
指と指を絡ませながら、『夕鈴』はじっと『黎翔』を見詰める。
「ねぇ、夕鈴、君は僕の妃でしょう?
他の男とそんなに近い距離で話したら駄目だと思わない?」
じっと自分を見詰める艶めかしい視線に、『黎翔』は慌てた。
「そそそ、そうですね、気をつけます。
だから、その、『私』の姿で夫婦演技は止めてもらえませんか?見ていて恥ずかしくて死にそうです!」
手を引こうとすると、その力に添うように『夕鈴』の体が『黎翔』の胸へ飛び込んでくる。
「恥ずかしくなんてないよ。中身は僕たちなんだから、いつもと変わらないでしょ。あ・な・た?」
うふふ、と上目づかいに色っぽく笑う『夕鈴』の姿に、『黎翔』は悶絶した。
「もう、陛下ったら!
……陛下は嫌じゃないんですか?ご自分の姿の私にいちゃいちゃするのって。」
『黎翔』は溜息を吐きながら胸の中にすっぽりと収まった『夕鈴』に問いかけた。
ハッキリ言って、自分に言い寄られるのはなんだか気味が悪いというか恥ずかしいのだが。
「うーん、全く同じ『僕』が相手だったら死ぬほど嫌だけど、今は中身は君だもの。
それに、夕鈴はいつだって夕鈴だから。全然嫌じゃないよ。」
『夕鈴』の瞳が美しく煌めいて、『黎翔』を捉える。
細い指先がつぅっと『黎翔』の胸の上を這った。
びくりと震える『黎翔』に腕を回して柔らかく抱きついた『夕鈴』はゆっくりと桜色の唇を開いた。
「いつか言ったとおり。君はいつどこで、どんな姿をしていようが、ただ一人の愛しい私の妃だ。
―――違うか?夕鈴。」
「へい、か……」
「……夕鈴、もう少し屈んでくれないと耳元で囁けないなあ。……残念。」
『夕鈴』は真っ赤な顔をしている『黎翔』をくすくすと見上げた。
(陛下って、どんな時でも陛下なんだわ。
外見は私なのに、こんなに色っぽいだなんて。私とは全然違うじゃない……)
『黎翔』はくらくらする頭を両手で抱えて唸った。

ついでに言うと同じ頃、政務室でも同じようなポーズで方淵が唸っている事など、夫婦は知る由もなかった。



後記。
方淵→『夕鈴』フラグ立ててみました。
絶対好きだろう方淵!と思って書いてました、ブリザードお妃さま。

原作では方淵×紅珠カップリング見られたらいいなぁと思ってるんですが。

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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-29 Wed 00:45 | | [ 編集 ]
方淵好きデスヨネ!?ブリザード妃!!←落ち着け(笑)
私も大好き( ´艸`)夫婦は似てくると云うので…将来的にはそんな夕鈴が見られるかな…。夕鈴が不憫って!?何が起きるのかしらん( ̄∇ ̄)続きが楽しみですなぁ(≧▽≦)今週も来週もラジオ体操当番に疲れ果てて…週末は部活お付き合い…(ノД`)私に活力を下さいませm(_ _)m
2015-07-29 Wed 12:37 | URL | 行 [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-29 Wed 20:27 | | [ 編集 ]
あい様。
入れ替わったのに全然色気のない展開しか書けない自分にがっかりしてます(T_T)

方淵いいですよね~、隠れM的な感じで(笑)
陛下が好きな時点でもう完全にMですよね。彼。
意外と尻にしかれるタイプな気がします。

あい様の大ちゃんかわいいです!
私が書くと性格悪くなるので、かわいい大ちゃんを堪能させて頂きました!
2015-07-31 Fri 20:54 | URL | rejea [ 編集 ]
行様。
職場と保育所の往復だけでへばってる私。
ラジオ体操なんて恐怖が待ち構えてるだなんて、小学校は恐ろしいところだ……(・.・;)
さらには部活まで…毎日お疲れ様です!!

ホントさっぱりお色気展開にならなくて申し訳ない限りです。
すみません!!
これじゃ活力にならない~~~…
ついついただの下ギャグっぽくしてしまう私の残念ぶりが、自分で悲しいです。
2015-07-31 Fri 21:00 | URL | rejea [ 編集 ]
ゆらら様。
お忙しいなかコメントありがとうございます!
簪読んで頂けて嬉しい~~~\(^o^)/
書いててすごい楽しかったです。

方淵もいじめて楽しい人ですよね~。
どんどん悩んで眉間にシワ寄せてイライラして欲しいです。
「私はあんな妃など気になってなんかないぞっ!!」
ってぶつぶつ言ってて欲しいです。
冷たくされると燃えるタイプですよね、きっと。
2015-07-31 Fri 21:05 | URL | rejea [ 編集 ]

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