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簪の贈り物 6

皆様のコメントから出来上がった毒花シリーズ簪編、こちらでラストです。
自分でも思っていなかった方向に話が転がってとても楽しかったです。
ありがとうございました!

最後はやっぱりあの二人に締めてもらいたいと思います。




明るい日差しに、妃の髪に挿された二本の簪がきらきらと輝く。
その輝きに負けないほど妃の顔は微笑みで満ち溢れ、内から輝く光が手に取るように分かる。
その屈託の無い美しさに、蘭瑶も瑠霞も暫し見惚れた。

「美しい簪ですね、お妃さま。兄上からの贈り物でしょうか。
本当によくお似合いです!」
晏流公は柔らかくつやつやした頬を桃色に染めて隣に座る夕鈴を見上げた。
「ありがとうございます、晏流公。」
照れたように笑う夕鈴に、蘭瑶と瑠霞は我に返った。

二人とも、黎翔が妃に簪を贈ることは予想していた。
晏流公の簪を外させることが出来ないなら、きっと自分からも贈ってそれを挿させるに違いないという読みは当たっていたが、赤瑪瑙を選ぶとは。
より煌びやかな意匠の柘榴石にするか、高価な紅珊瑚あたりで張り合ってくるかと思われたが、赤瑪瑙はそれらに比べれば白陽国では手には入りやすい。
無論、庶民がおいそれと身につけはしないものの、後宮に住まう女性達には馴染み深い石でもある。
それゆえ蘭瑶も瑠霞も、赤瑪瑙が何を意味するものか分かっていた。
妃が晏流公に向ける嬉しげな眼差しから察するに、陛下は簪に込めた意味を妃にも伝えたのだろう。

蘭瑶は驚きを鎮めるように、静かに花茶を含んだ。

―――あの狼が。
必要とあらば、私ごと弟である瑛風をも切り捨てる覚悟でいた彼が。

蘭瑶はしみじみと妃の顔を見た。
この見た目は平凡ではあるが、後宮において特異な花は、狼にとって真に唯一無二足り得る花であったのか。
おそらく他にどれほど美しく位の高い娘が来ようとも、狼の凍土のような心を温めることが出来るのはこの方だけだろう。
蘭瑶は目の前の妃のことを素直に羨ましいと思った。
後宮という檻の中に居るにも関わらず、立場にも権力にも縛られず、大切な相手をただ想い、手を差し伸べることの出来る強さを持つ彼女を。

夕鈴の髪に燦々と輝く柘榴石を、蘭瑶は心から美しいと思った。

ああ、私が見たかった輝きはこれなのだ。
後宮では決して手に入らないはずの輝きが、今目の前にある―――

蘭瑶は、遠い昔の自分が胸の中で微笑んだのを確かに感じた。

「………だから言ったでしょう?
私はお妃さまを信じてるって。」
瑠霞も晏流公と語り合う夕鈴を眺めながら小さく言った。
「それにしても、赤瑪瑙とはね。流石に驚いたわ。
やっぱり、お妃さまが隣に居れば、困ったあの子もなんとか幸せになれるでしょう。」

ふふ、と笑った瑠霞は背筋を伸ばして夕鈴に向き直った。
「お妃さま。此度のこと、陛下と晏流公の叔母として御礼を申し上げます。
本当に、貴女でなくてはこうはいかなかった。」
突然の瑠霞の言葉に、夕鈴と晏流公は揃ってきょとんとした顔をした。
「瑠霞姫、私は特に何も……」
不思議そうな妃に、瑠霞はもう一度笑みを深めた。
「貴女が、貴女のままで陛下の隣に居て下さることが本当に嬉しくて、御礼を言いたくなったのよ。
その二つの簪に相応しい方は貴女以外に決していなどしない。
どうか、ご自分に自信をお持ちになって。」
包み込むような瑠霞の眼差しに、夕鈴は何故か胸が熱くて涙が浮いてきそうになった。
「ありがとうございます……」
目の端に涙を溜めて微笑みを返す夕鈴に、瑠霞はさらに言葉をかけた。
「感謝の気持ちと言ってはなんですけれど、お妃さまに一つ、後宮の女性に伝わる赤瑪瑙のおまじないを教えて差し上げますわ。
……きっと陛下もご存知ないでしょうから。」
蘭瑶はあらやっぱり言うのね、という表情を浮かべた後、にっこりと微笑んだ。
夕鈴を捉える瑠霞と蘭瑶の瞳はなぜか煌めいて、それこそ宝石のような美しさを放っている。
「瑛風、いらっしゃい。」
呼び寄せた息子に微笑むと、蘭瑶は晏流公の両耳を自分の手でそっと押さえた。
それを見た瑠霞は牡丹の花もかくや、といった大輪の微笑みを妃に向けてから楽しそうに口を開いた。

「赤い瑪瑙は『兄弟の絆』やひいては『家族の絆』を強める石と言われているけれど……
そこから転じて、後宮の女性の間では『子宝成就の御守り』として身に付けられている石でもあるわ。」

子宝成就。それってつまりは私が陛下といちゃいちゃ甘々を願ってるということで。

ぽかんと口を開けた妃に、瑠霞は追いうちをかけた。
「昨夜、効果はございまして?」
にっこりと微笑む美女二人の視線に晒されて、夕鈴は簪と同じくらい真っ赤に染まった顔を扇の影に隠すことしか出来なかった。

「うふふ、真っ赤になられて初々しいこと。」
「この可愛らしい様子ではきっと今夜も効果が期待できますわね。」
二人は愉しそうに微笑みを交わし、妃をからかいながらも愛おしむ。

辺りは春爛漫。
かつて一輪の花も咲かず、冬枯れの様相を呈していた狼陛下の後宮は、類い希なる花のもたらす希望の香りで満ち溢れている。





後記。
柘榴石の意味…「真実の愛」 イメージは陛下  「一途な愛」 こちらはお父さん陛下
赤瑪瑙の意味…「兄弟愛」「兄弟の絆」ひいては「家族愛」 そこから転じて「子宝成就」
だそうです。
Google先生ありがとう!
石って色んな意味があるんですね~。

そういえば、何故倹約家の李順さんが、ほいほい簪を作らせてくれたかと言うとですね。

以下、李順さんへインタビュー。

「なぜですって?
どうせ簪を贈りたいとおっしゃるとは思っておりましたから。
あの方は晏流公の簪だけを挿している夕鈴殿の隣で笑ってなどいられないでしょう。
材質が割と安価な赤瑪瑙ということで、職人を三人程呼び寄せて作らせたわけですが、予想していたより掛かりは少なくて済みました。
それに、職人との打ち合わせの時間を捻出する為に、陛下も何時になく政務が捗っておられましたし。
費用対効果の面から見ても上出来です。

そういえば今日は一緒に入浴するとかで、またしても凄まじい勢いで政務に励んでいらっしゃいましたね。
夕鈴殿には申し訳ないですが、風呂だろうがなんだろうが妃の務めとして頑張って頂きましょう。」

……だそうです。

本筋に入れられなかったのでこんな形で。

お読みいただきありがとうございました!
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-12 Sun 16:12 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
最初にコメント頂いた時は単発でと思ってお茶会書いてたので、こんなに続くとはびっくりです。
ありがとうございました(*^_^*)

あい様のブラック楽しみです。
あせらず待ってます!
私は描きたい部分以外の繋ぎとかをいっつもどうしようと悩んでしまいます。
そして悩み過ぎると落ち込んで上げられなくなるので、わからん!もういい!とさっさと上げてしまいます(笑)

そんなわけでリクエスト克右さんもわからなくなったので上げました。
受け取って頂けるかどきどきです……
2015-07-13 Mon 00:15 | URL | rejea [ 編集 ]

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