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狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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簪の贈り物 3

ほのぼのいちゃいちゃ本誌に逆行するような話をアップしてしまったのにも関わらず、暖かい拍手やコメントを頂戴して恐縮しております。
皆様なんてお優しいのでしょうか!。゚(゚´Д`゚)゚。←感涙

優しいといえば……
晏流公、いい子ですよね。優しいしかわいいし。
五日間も悶々とさせるのが可哀想だったので、出番を作ってみました。
それではどうぞ。





晏流公は、四阿から離れたツツジの植え込みで所在なさげに木の枝を振っていた。
昨日贈った簪が元で、尊敬する兄上と親愛なるお妃さまは仲違いしてしまった。
晏流公としては全く想像もしていなかった展開だ。
どうしてよいかとうなだれていても、瑠霞姫はにこにこと
「これは陛下にとって良い薬だから。」
と微笑むだけだし、母上は母上でいつになく上機嫌。
茶会に出れば自分に気を遣ってお妃さまはいつも以上に明るく声をかけてくれる。
逆にそれが辛いんだけど、とも言えず居たたまれなくなった晏流公は四阿を抜け出した。
せっかくなので剣術修行でもしようと思ったものの全く身が入らない。

「はぁ……」
王都へ来てからひと月あまり。
憧れの兄、黎翔の側近くに住むようになったものの、相手は多忙な国王陛下。
滅多に近しく話す機会も無く、当然、辺境軍の頃の武勇伝を聞かせて頂く機会にも恵まれず。
そんな自分を何かにつけて気遣ってくれるお妃さまに、何て差し出がましいことをしてしまったのか。

ほやっとした眉毛を下げて肩を落としたその時。すぐ後ろの植え込みがガサガサと揺れた。
「ひっ……!」
獣か、もしくは刺客だろうか。
驚いて悲鳴を上げそうになった晏流公の口が、大きな手で塞がれる。
「うっ、ぐっ!」
思い切り手足を振り回そうとしたその時。
「静かに。」
耳に届いたその声に、晏流公が目を白黒させながら振り向くと、そこには居るはずのない兄・黎翔の姿があった。

「兄上!なぜ、こんな所に?
……もしかして、お妃さまのご様子を見にいらしたのですか?」
「あぁ、まあ、そんなところだ。」
決まり悪げに黎翔は言う。
「あ、あの、お妃さまだけ呼んで参りましょうか?」
とんでもない。あの二人と共にいる今そんなことをしたら逆効果だろう。
「それには及ばん。
ここに私が居たことは、私とお前の間だけのことにしてくれ。」
「わ、分かりました。」
男二人の間に沈黙が訪れた。

黎翔は迂闊な自分を悔いていた。
夕鈴のことを思って気もそぞろだったこともあるが、こんな植え込みにまさか晏流公がいるとは。
てっきり庭掃除をしている侍女か何かだと思って近づいたのが間違いだった。
よりによって今最も気まずい相手に出会ってしまったのだから。
何と声をかけたらいいのか分からず、黎翔は取りあえず冷静を装って静かに晏流公に対峙した。

晏流公は晏流公で固まっていた。
兄上に会ったら言いたいことはたくさんあった。
ただ、言葉が喉の奥に張り付いてしまったかのようで、少しも声が出てこない。
兄上もまた自分を黙って見詰めている。
唇が、指先が震える。
早く、言わなければ。
怒られようが、避けられようが。

苦しそうに息を吸って、晏流公はやっとの思いで声を絞り出した。
「あ、兄上……すみません。私のせいで……私が余計なことをしたせいで、お妃さまが……」
いつも仲の良い兄夫婦が憧れで。
少しでも優しいお妃さまの慰めになればと思って。
言いたいことは胸につかえてしまって出てこないのに、じわじわと涙が浮いてくる。
(見られたくない。こんな、みっともないところを……)
晏流公はごしごしと瞼をこすった。

一方で黎翔は顔には出さずに困惑していた。
こういう時、普通の兄弟はどうするものなのだろうか。
(夕鈴と清慎くんはどうしていたっけ。
いや、清慎くんはそうそう人前で泣いたりする歳じゃないか……)
黙って見ているのもどうかと思うが、何が正解か分からない。
黎翔の前でよく泣いている人物と言えば夕鈴なのだが、彼女の時と同じように、優しく抱き締めて背や頬を撫でで涙を拭ってやるのはさすがにおかしいし、必死に涙を隠している彼の自尊心を傷付けるかもしれない。
目の前の晏流公が小さいなりに必死に歯を食いしばっている姿は、黎翔の胸を不思議な感覚で満たした。
これが、弟というものか。

その時、唐突に夕鈴の泣き顔が浮かんだ。
そうだ。
抱き締めて、甘い言葉をかけるだけでなく。
自分の成すべきことは、まだあった。


黎翔は、晏流公の頭にそっと手を置いた。
驚いた晏流公は、弾かれたように顔を上げた。
見開かれた赤い瞳が、庭園に注ぐ陽光にきらきらと輝く。
赤い瞳に映る兄の顔は、いつもと変わらず格好良くて、美しくて、晏流公は思わず見惚れた。
「……案ずるな。」
低いけれど、どこか温かな声が頭の上に落ちてくる。
置かれた手はすぐに離れ、兄は弟に背を向けた。
一言だけ残して去っていく黎翔の背を、晏流公は夢うつつに見送った。
だが、先程ほんの一瞬頭に置かれた大きな手の感触が、これは夢では無いのだと教えてくれる。

瑠霞姫の言っていた通りだ。
兄上は、お妃さまをそのままになさるような方ではない。
笑いたいような泣きたいような気持ちが湧き上がって、胸がいっぱいで。
晏流公はしばらくその場から動けずにいた。




休憩時間の政務室には、官吏は皆出払っていて李順しかいなかった。
静かな一時にふと眉間のしわを緩めたその時、政務室の扉が乱暴に開かれた。
「李順、急遽頼みたいことがある。」
駆け込むように戻ってきた黎翔は有無を言わさぬ勢いで李順に告げた。
「な、何でしょうか陛下。」
「今日は通常より二刻早く政務を終わらせる。その為の調整を行え。」
口を動かす間も、黎翔の手は筆を動かし何か書き付けている。
「そして政務の終わる時間に間に合うように書き出したものを至急手配してくれ。」
びっ、と書付を李順に向かって突きつける。
「これは……
そうですか。まぁ、今回だけは目を瞑りましょう。そんな気はしてましたしね。」
優秀な側近はてきぱきと書類を並べ、墨を摺り、にこりと笑って主を見た。
「狼陛下の面目躍如となりますよう、気合いを入れてお励み下さい。
私は至急こちらの手配をして参ります。
その間は方淵殿にでも手伝わせておきましょう。」
黎翔は早速書簡に手を伸ばしながら言った。
「言われるまでもない。」



いつの間にか四阿を抜け出していた晏流公が戻ってきた。
蘭瑶は、座についた息子の頬がうっすらと上気しているのに気付いた。
「晏流公、どうかしたの?顔が火照っているようだけれど、お熱でもあるのかしら。」
心配そうに覗き込む母に、慌てて首を振る。
「な、何でもありません。」
植え込みの陰での出来事は、私と兄上だけの秘密だから。
思わず口許が綻ぶ晏流公の様子を見て、蘭瑶と瑠霞は目を合わせた。
「……獣でも迷い込んでいたの?晏流公。」
母の言葉に晏流公はぎくりと固まった。
「ははは、はい、母上!お、大きな獣でした!」
その言葉に夕鈴は慌てた。
「大きな獣!?大丈夫でしたか、晏流公?
老師にすぐに安全を確認してもらわないと……」
すぐにでも動き出しそうな妃の様子に、晏流公は慌てた。
「いえっあのっ、大きいけれど……その、優しい獣でしたので!
それにもう行ってしまいましたし!」
「そうですか……?」
符に落ちない様子の妃の横で、瑠霞は扇に顔を隠して必死に笑いを堪えている。
蘭瑶は複雑な顔で息子を見詰めて、溜め息をついた。
まぁ、いい。
息子に元気が戻ったのは喜ばしいことだ。
ふと瑠霞に視線をやると、瑠霞もまた蘭瑶に視線を送っていた。
笑みを含んだその目は、どうやら動き出したみたいね、と言っている。
息子が言うところの、『大きな優しい獣』はどう出てくるのだろうか。
このお妃さまとお会いしてからというもの、本当に退屈しない。
ふわりと笑った蘭瑶は、愉快な妃と五日間たっぷり遊んで、狼をいじめてやろうと改めて決意したのだった。



後期。
お兄ちゃんっぽい陛下が書きたかったんです。
可歌先生が描かれるお兄ちゃん陛下がいつか見たい!!
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毒花※蘭瑤・瑠霞メイン | コメント:10 |
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-01 Wed 13:48 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-01 Wed 14:26 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-01 Wed 18:44 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
私も晏流公のような息子が欲しかったです。
なのに先日「ママの鼻くそばかやろう!」と叫ばれる始末……
もはや絶望的です。

リクありましたら!
このままでは私の独断で3000ヒットの時のお礼が朝チュン克右さんになっちゃいます(笑)
2015-07-02 Thu 23:19 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-03 Fri 00:25 | | [ 編集 ]
Re:
ますたぬ様。
お兄ちゃん陛下も見てみたくて書いてみました。
やっぱりぎこちなくなりそうだなーと。
夕鈴のマネしたら晏流公倒れちゃうかもしれませんね(*´▽`*)

ご期待に沿えるか自信ないですが…
もう少々お待ち下さいませ!
2015-07-03 Fri 00:56 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
ゆらら様。
簪編、書いてて本当に楽しいです。
毒花ポジションがすごい気に入ってしまって陛下を弄りたくて仕方ないです(笑)

晏流公、何となく初恋は夕花な感じがしますよね。
お妃さまへの淡い片思いフラグを勝手に感じてます!
でもなぁ……陛下怖いですよね。そうなったら。
私の脳では纏められそうにないけど見てみたいです。
「義姉と僕」的な話を(^-^;
2015-07-03 Fri 01:03 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
あい様。
了解致しました!
では、夜で!カラーで!
ちょい怪しくなるように頑張ります


因みにその際に、記事にお名前入ってても大丈夫ですか?
2015-07-03 Fri 01:14 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-03 Fri 01:48 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
大丈夫です!
もともと隙間産業的なブログです(笑)
荷長官SSとか、私以外そんなに重要ないものを堂々と晒しておりますゆえ!!
2015-07-03 Fri 22:29 | URL | rejea [ 編集 ]

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