星空の隙間

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天狼星 1  北の娼館

注)シリアスです。少しお色気描写あり。黎翔、克右が娼婦と絡みます。
完全ねつ造です。



年若い娼婦は困惑していた。

最初は啄ばむように軽く、次第に舌を絡ませ蕩かせるように。
懸命に口づけをほどこすが、相手の少年は顔色一つ変えることもない。
服の上からそっと触れている心臓も、少しも飛び跳ねることはない。

―――どうしよう。



娼館の主に、今日は特別なお客様だからたっぷり満足させるようにときつく言い含められ。
客の1人、背の高い優しそうな人には過分な心付けを渡された。
「人恋しい年頃なんだ。せいぜい甘やかしてやってくれ。」
茶化すような口調とは裏腹に、その人の目は真剣だった。
それなのに。
自分もまだこの仕事を始めて間もないとはいえ、その道で食べている端くれだ。
どうすれば男の興をそそることができるのか分かっているつもりだった。
ここまで何も響かないなんて、初めて。
自分から身を離した華奢な少年が一つ溜息を吐く。
このままではいけない。
より深く口づけようともう一度顔を上げたその瞬間。

突如噛みつくように唇を奪われた。

先ほど迄と全く違う執拗な舌が、口の中を蹂躙する。
息もできず喘ぐものの、少しの自由も与えられない。
自分よりも背の低い少年の動きに翻弄され、突然のことに頭が追いつかない。
唯一動かせる瞳で目の前の少年の顔を見る。
ごく近い距離で、冷たく燃えるような紅い瞳がこちらを捉えていた。

ああ―――
涙を流し目眩を起こしながら、彼女は小さい頃猟師である祖父に言われた言葉を唐突に思い出した。

北の森には獰猛な狼が住んでいる。
奴等には決して近づいてはならない。
あの底光りする目に捉えられたら最後。
お前らのような女子供は。

―――喰われる。

背筋を這い上がる耐えがたい恐怖と快感に、娼婦は意識を手放した。



薄明かりの中で、膝の上を跨った肌蹴た足が白く輝く。
優しく顔を挟まれ口づけを落とされる。
「あの子は上手くやってるかな。なるべくすれてない子を頼んだんだが。」
すべすべした太腿をさすりながら呟く。
「弟さんの心配?優しいのね。」
耳を食まれながら囁かれる甘ったるい声。
「美女を前に余所事は無粋だったかな。」
さて、と柔らかい袷に手を入れたその時。
部屋の扉が遠慮がちに叩かれ彼女を呼ぶ声がする。
「ん、もうっ。いいところだったのに!ごめんなさいね、お兄さん」
つ、と指先で胸を触って娼婦は膝を下りた。
「いいさ。良い酒と良い女は一緒だ。待つほど旨くなる。」
に、と笑って克右は彼女を送り出した。

酒を含んでいると思ったより早く扉が開く。
「克右。入るぞ。」
「……黎翔様。入る前に声かけて下さい。というか、こっちが取り込み中だったらどうすんです。」
溜息混じりに問えば。
「舐めるなよ。部屋にお前の気配しか無いことくらい確認したさ。」
つまらなそうな答えが返ってくる。
「相方の妓はどうしたんです。まさか、追い出したんじゃないでしょうね?」
「お前が主に余計な金を渡したおかげでそんなこと出来なかったさ。あのまま追い返せば彼女は折檻だろ。」
じゃあどうしたんです、と聞かれた黎翔は顔色一つ変えずこう言った。
「口のなかを舐めまわされて疲れたから、同じことをして失神させた。」
末恐ろしい14歳である。
克右は人の良さそうな娼婦にこっそりと同情した。

「ただいま、お兄さん。あら?弟くんこっちに来てたの?」
克右の相方の娼婦が部屋に戻るなり黎翔に声をかけた。
「やっぱり恥ずかしくて。兄さんと一緒に居たくなっちゃった。」
にっこり微笑む黎翔に彼女はまぁかわいい、と満面の笑みだ。
どうやら今夜もお預けか。克右は深い溜息を吐いた。
ちゃっかり別の部屋で上手いことやっている隠密が羨ましい。
「ところで姐さん、何の用事だったんだ?」
「それが……このあたりの自警団の人たちが来ててね。近くの娼館の妓がまた行方知れずになったっていうのよ。私もよく知っている子だったから、何か心当たりはないかって。」
「またってことは何人もいなくなってるの?」
黎翔は興味を持ったようで、こくんっと首をかしげてかわいらしく尋ねる。
何度見ても恐ろしい演技力である。
「そうなのよ。今月に入ってもう5人目だわ。今度の子なんて、ついこの間、やっと本命の男が出来たんだって嬉しそうにしてたばっかりなのに。」
「ふぅん。僕、その話もっと聞きたいな。行方知れずだなんて、なんだかドキドキするね。」
にこっと微笑みながら笑う黎翔の顔を見て。
克右はいつものように自分の心臓が痛むのを早々に察知した。
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天狼星 | コメント:2 |
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コメント

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2015-04-17 Fri 22:30 | | [ 編集 ]
あい様。そうなんです!克右兄さんはなぜか苛めたくなるんです!!
書いているとどんどんカワイソウになってくるという。
ブラック殿下、気に入って頂けたようで嬉しいです。
あい様に背中を押して頂けたことですし、どす黒く行きます(笑)
2015-04-17 Fri 23:59 | URL | rejea [ 編集 ]

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