星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

簪の贈り物 4

蘭瑶様と瑠霞姫にいじり倒され、ニラニラ観察されている国王夫妻。
果たして、陛下の閨へのお渡り差し止めは解除されるのか。
そしてrejeaはほのぼの系いちゃいちゃを書けるのか。
どうか期待せずご覧下さい!



黎翔のお渡りを退け続けて五日経つ。
居た堪れなくて三日で音を上げそうになる夕鈴だったが、連日の茶会の席で
「もう少し、苛めて差し上げなさいお妃さま。陛下にはいい薬ですわ。」
「あちらにも考える時間を差し上げてもよろしいのではなくって?」
と瑠霞と蘭瑤に励まされ(?)今日までまともに黎翔と顔を合わせていなかった。

「なんか、やっぱり怒り過ぎちゃったわよね、私……
陛下、ちゃんとお仕事してるかな。夜きちんと寝てるかしら……」
髪に挿した柘榴石の簪が黎翔の瞳を思わせて、なおさら会いたい気持ちを募らせる。
柘榴石が傍にあっても、やっぱり本人に会いたいものは会いたいし、寂しいものは寂しい。
でも自分から拒んでおいて、今さらそんな事も言いだせない。
今日で約束の五日だが、今までは喧嘩の度にちょこちょこ顔を出していた陛下も、今回は少しも顔を出さなかった。
もしかしたら、怒ってばかりの自分に呆れてお出でにならないのではないだろうか。

それでも黎翔が晏流公に対してあんな冷たい顔をするのは夕鈴は我慢出来なかった。
やはり、王族同士が普通の兄弟のように仲良くするなど夢のような話なのだろうか。
どれだけ願っても深い溝は埋められないものなのだろうか。

きれいだと言って欲しい。
自分が黎翔にとって初めての存在でありたい。
兄弟で仲良くして欲しい。

臨時妃の時からしてみれば夢のような毎日なのに、いつのまにか多くのことを望んでいる自分が浅ましく思える。
夕鈴はやるせない溜息をついて、寝台に突っ伏した。

「へーか……」
「呼んだ?夕鈴。」
呟いた声はどこにも届くはずはなかったのに、夕鈴は飛び上るほど驚いた。
「へっ、陛下!?いらしてたんですか!」
「うん、その……今日で約束の五日経ったから、話したくて。いいかな?」
「は、はい……どうぞ……」

部屋に漂う、ぎこちない沈黙。
五日ぶりに顔を合わせた夫婦は、寝台に腰掛けたままどちらもかなり緊張していた。
沈黙に耐えきれず、夕鈴と黎翔は同時に口を開いた。
『あのっ……』
「あっ、陛下から、どうぞ。」
「いや、夕鈴から。」
またしても沈黙が訪れる。
じりじりと汗をかく二人はまたしても同時に口を開いた。
「ごめんなさい!」
「ごめんね!」
一瞬ぽかんとした後、二人はまんまるな目をして見つめ合う。
「え……っと、その、ごめんなさい。私、ついつい感情的になっちゃって、あんなに怒ったりして。
ご兄弟の関係は難しいって知ってたのに……」
我に返った夕鈴が真っ赤な顔でもう一度謝罪する。
黎翔もその言葉に慌てて口を開いた。
「いや、謝らなきゃいけないのは僕の方だ、夕鈴。
君に会えなかった五日間、ずっと考えてたんだ。
僕は、君にちゃんと伝えなきゃいけないことを伝えないまま、すごくずるいことをしてた。
本当に、その……ごめん。」
見るからに萎れている黎翔を見て、夕鈴はぎゅっと心を締め付けられるようだった。
今すぐ抱き締めて背中を撫でてあげたいけれど、我慢だ。
瑠霞姫と蘭瑤様に散々言われたではないか。
きちんと向こうから気持を聞き出すまでは、絶対に手を差し伸べないように、と。

「あの簪、君は似合ってないから僕が外そうとしてるって言ってたけど、そうじゃないんだ。
すごく、かわいかった。
……ただ、僕以外の人から貰った簪を君がしてることが我慢できなかっただけ。
完全に、僕のやきもち。」

今、この人は何て言った?
夕鈴は頭の片隅で、今自分はどれだけおかしな顔をしているのだろうと思った。
(やきもち?弟で、まだ子供の瑛風様に対してやきもち?)
頭の中は疑問符で一杯だが、とりあえず話を遮ってはいけないと、夕鈴は黙って黎翔を見詰めた。

「それで君に対してあんな態度とっちゃって、閨立ち入り禁止になったわけだけど。
それで、一人の時間に考えたんだ。どれだけ格好悪くても、ちゃんと君に伝えなきゃいけなかったんだって。」
黎翔は袂から桐の箱を取り出した。
「開けてみて。」
促された夕鈴はそっと蓋を開けた。
中に入っていたのは、紅い玉石で花びらを模した美しい簪だった。
柘榴石よりも温かみを感じさせる色合いは、どことなく瑛風の瞳に似ている。
「これ……」
小ぶりなその簪は、地金の色を夕鈴が挿している柘榴石の簪とぴたりと合わせたようだった。
「もう挿しちゃ駄目だなんて言わないから、これも一緒に挿してもらえないかな。
一応、一緒に挿してもお互い邪魔にならないように職人と相談して作ったものなんだけど。」
「陛下……」
「僕からのおわびと、お礼。」
「お礼?何のですか?」
問う夕鈴に、黎翔は下を向きながらぽつぽつと答えた。
「僕が、晏流公とこうして顔を合わせることができるようになったのは全部君のおかげだから。
この簪、赤瑪瑙(あかめのう)っていう石で出来てるんだけど、『兄弟の絆』を表すものなんだ。
だから、僕の瞳に似てるっていうその簪と一緒に君に挿していて欲しい。
いきなりは無理だけど、君がそうして持っていてくれれば、いつか僕たちももっと普通の兄弟らしくなれるかもしれない。
それが、危険を顧みないで僕らを思って動いてくれた君に報いることなんだろうって思うから……
子供じみた願掛けだけど。」
そう言う黎翔の顔は決まり悪げに朱に染まっている。

夕鈴は堪らず黎翔に抱きついた。
「やっぱり、お二人は兄弟なんですね。なんだか、似てます。
私の事を考えて下さる、優しいところが。」
五日ぶりの妻からの抱擁に、黎翔はふうっと大きく息を吐いた。
「良かった……要らないって言われたらどうしようかと思った。」
「陛下の気持ちがこもってるものなら、要らなくなんてありません。
……すごく、すごく嬉しいです。」
涙を浮かべて微笑む夕鈴の髪に、黎翔はそっと簪を挿した。
柘榴石と赤瑪瑙が、夕鈴の薄茶の髪の上で最初から誂えたかのように互いを引き立てる。
「夕鈴、すごくきれいだ。似合ってる。
今回だって他の誰にも見せたくないくらい可愛いけど、もう出入り禁止は心底堪えたからあんまりいじわるしないように気を付けるよ。」
そう言う黎翔の言葉に、鈍い夕鈴も流石に引っかかった。
「あ……もしかして、陛下。
あの、蒼玉国の衣装を見立ててもらった時も、同じようなこと考えてたんですか?」
「え?勿論そうだよ。だってあんまり君がきれいで色っぽくて。
僕以外の奴が見立てた衣装であんなに艶やかになるなんて悔しいし、僕より先に晏流公にあんなに背中や足が出てるところを見せるなんて。
……夫としてはどうしても我慢できなかったんだ。」

頬を膨らませて文句をいう黎翔を見て、夕鈴は噴き出してしまった。
「ぷっ!ふふふっ。陛下ったら、子供みたい。」
「あんまり笑わないで、夕鈴。
本当に僕って、君の事に関しては心が狭いんだ。」
こつんとおでこをくっつけて、眉毛を下げた黎翔は言う。
頬に添えられた黎翔の手を、夕鈴は柔らかく掴んだ。
「ごめんなさい。嬉しくて。
簪のことも、きれいだって言って下さったことも、やきもちのことも、ぜんぶ。」
夕鈴はそっと、自分から黎翔に口づけた。
「大好き、陛下。」
堪らず、黎翔は夕鈴の肩先に真っ赤に染まった顔を埋めた。
「この五日間、本当に君に会いたかったんだ。
毎日、簪の出来具合を見ながら、受け取ってもらえるか不安だった。」
夕鈴は大きな夫の背を優しく撫でた。
「……私だってすごく会いたかったです。」
肩先に埋めた顔を愛しい妃に向けて、少し恥ずかしそうに黎翔は言う。
「ねぇ夕鈴……ちゃんと政務終わらせてきたから、今日は甘えてもいい?」
「ふふ、いいですよ?五日分たっぷり甘えて下さい、陛下。」

優しく温かな抱擁に包まれて、妃の寝所に甘い甘い夜が訪れる。
互いの熱を確かめ合うように密やかにゆっくりと、春の夜は更けていった。


簪の贈り物 2



後記。

小犬陛下、よくよく考えたらあんまり書いたことなかったです。
どっちかというと狼派なので。
でも書いてみると楽しいです。小犬。
晏流公にはカッコイイお兄ちゃんぶったのに、嫁の前ではでれっでれのへにゃっへにゃに甘えるのもかわいいかなと思ったんですが。
甘え過ぎたか!?と不安で一杯なまま晒します!

それにしても当ブログの夕鈴は怒ってるか喚いてるか陛下を突き飛ばしてるかが多いので、やっと優しいところを書けて良かったです。
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-04 Sat 08:47 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-07-04 Sat 09:24 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
ブラック病み陛下!?
なんですかその明らかに私を釣っているとしか思えないステキワード!!
入れ食いで食いつきますよ!!!
楽しみに待っております~♪
夏は苦手だけど楽しみができて良かったです。

ちなみに私もむずがゆいのです…
若いっていいねえと思いながら書いてました(笑)
2015-07-04 Sat 21:48 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
ゆらら様。
甘え陛下を受け入れて頂けて良かったです!
君のカッコイイお兄さんは嫁の前ではでろでろのスライム状態になるほど甘えてるんだよ、瑛風くん!
という気持ちを込めて書きました。←どんなだよ…
これからもへにゃっへにゃさせます!

甘えたら夕鈴は結構色々許してくれる気がしますよね。
私もそんな面白くて可愛い家事の得意な嫁が欲しいです。
2015-07-04 Sat 22:03 | URL | rejea [ 編集 ]

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