星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

氷雨の追憶 2

蘭瑤様の過去ねつ造編の続きです。
暗く重苦しい内容となっておりますので、苦手な方は本気でスルー推奨致します!
楽しいこと一個もないです。

話のラストは茶会が開かれる前日。
まだ瑠霞姫と再会していない状態です。
蘭瑶様が「陛下」と呼びかけてるのは全て父王陛下です。
黎翔様のことは「狼」と吐き捨ててます。
病んでる蘭瑶様でも受け入れて下さる方はご覧ください!




瑠霞姫はいつかの宣言通り、後宮を出て行った。周りのものを巻き込む嵐のように熱い情熱で、愛する者を手に入れて。
この檻から逃げ出すことも、動くことすらもできない蘭瑤はただそれを遠い話として耳にした。
「……貴女は貴女の望むものを手にしたのね、瑠霞姫。」
やはり貴女は私とは違う。
自分がこの後宮という檻の中で愛を手に入れるには、どうしても邪魔な者がいる。
呟く蘭瑶の顔は、先に後宮にいた他の花々と怖ろしいほど似通っていた。

後宮の地に沁み込んだ毒はいつしか蘭瑤の全身に回り、その身を別のものへと作り変えていた。
いまではそれを嘆くほど無垢なわけでもなければ、後宮の道理を弁えぬほどの子供でもない。
ここではこの地に根付き、生き抜いて大輪の花を咲かせた者こそが自らの「幸せ」を掴むことができるのだ。
あの花には、その強さが無い。
至上の寵愛を得て、そして誰もが求めてやまないあの方の男御子(おとこみこ)を得てもなお、あの花が心から喜びを感じていないことに、蘭瑶はとっくに気付いていた。
そして、それは殊更に彼女の憎しみを募らせた。
だが、決してあせってはならない。
今は静かに根を張り、その時を待つ。
正妃とその取り巻きの妃たちは何かにつけて舞姫に辛くあたって憂さ晴らしをしているようだが、蘭瑶は決してそこに連なることはしなかった。
そう遠くなくあの花はこの地の毒に弱りきり、枯れるだろう。
愛する花を枯らした毒を愛でるほどあの方は愚かでも無ければ、そこまで私情を棄てきることも出来ないと、蘭瑶には分かっていた。
花が枯れたその時こそ、この私が後宮の新たな花として咲き誇ってみせる―――
蘭瑤は数年を経てさらに美しさを増した顔を、来るべき未来を思い浮かべて暗い喜びに染めた。


後宮の毒は日に日に舞姫を蝕んだ。
毒に染まることも出来ず、はね除けることも出来ない儚げなその花は、遂に追われるように後宮を去った。
後宮の裏門からひっそりと去っていく親子の後ろ姿を、蘭瑶は物陰から静かに見送った。
その日は王都にしては珍しく小雪がちらついていた。親子の姿をかき消すように舞い落ちる雪を、蘭瑶はうっとりと眺めやった。
舞姫はただの一度も振り返りはしなかったが、御子は一度だけ、何かを確かめるように後宮を振り返った。
蘭瑶の目に遠く映るその瞳は、怖ろしいほど陛下によく似ていた。
だが、それを目にするのも今日までのこと。
胸の中の澱んだ思いと一緒に、雪と共に消えてくれればそれでいい。
蘭瑶は静かに、だが強い意志のこもった足取りで後宮へと踵を返した。


舞姫が去ってから数日。
その日は奇しくも氷雨が降っていた。
正妃は変わらずいるものの陛下より年も上であり、家格からいって夜伽の役が蘭瑤のものとなったのも自然な成り行きと言えた。
氷雨の音に包まれながら、何時かのように陛下が蘭瑶の部屋を訪れた。
久方ぶりに間近に見た陛下の顔は、以前の面影よりも弱々しく、また痛々しかった。
よほど、舞姫が北の地へ去ったことに絶望されたのだろう。
そしてまた、愛する者を守ることができなかった自分自身にも。
もう、待つ必要はない。
蘭瑤はこの時を何年も待ち続けた自分を実に誇らしく思った。
肩から夜着をすべらせて、蘭瑶は闇の中に淡く輝く様に白い肢体を晒し、そのままの姿で陛下を柔らかく包み込む。
「よろしいのですよ、陛下。私を舞姫様と思ってお抱き下さいまし。」
紅い瞳が驚いたように見開かれ、蘭瑤を捉えた。
蘭瑤はその顔を見詰めながら、ただ美しく微笑んだ。
あくまでも穏やかなその目はこう言っていた。
―――それが、私と貴方の仕事。何も知らない私にそう教えたのは、貴方でしょう?
紅い瞳が苦しげに歪み、閉じられた瞼から一筋涙が伝うのを蘭瑶は静かに指で浚った。

蘭瑤の心はとっくに壊れていた。
今さら自分を掻き抱ながら違う女の名を呼ばれても、胸など微塵も痛まなかった。
ただ愛しげに頭を撫で、背を抱いて、唇を合わせる。
そして甘い甘い毒を、その紅い唇から囁き続ける。
「陛下。私がおりますわ。私は、いつまでもお傍に。」

―――私をこのような毒花に変えたのは貴方。
自分の犯した罪も、そしてまた私の切なる望みも貴方はその紅い瞳で見抜いた筈だ。
私に子を宿して。私は待って待って、待ち続けたのだから。
そして董家の娘である私との間に子を成すことの意味も、貴方は充分ご存知のはず。
貴方と舞姫が王宮に招いた混乱を、私への寵愛が鎮めるのだ。
なんという皮肉。
なんという優越。
貴方は自らの犯した罪に震えながら、私の躯に溺れればいい―――


二度目の閨で蘭瑤が得た睦言は、彼女自身に向けられたものではなかった。
だがそれでも蘭瑤の目は薄暗い快楽を心から愉しむように、嬉しげに細められていた。
今の自分を見たら、瑠霞姫はまたあの美しい顔を歪ませるのだろうか。
それでも構わない。
最後に生き残り、「幸せ」を掴むのはこの私なのだから。
蘭瑤は咲き乱れる花のように、白い首筋をのけぞらせ、微笑んだ。



明方、蘭瑤は降り続く雨音が聞こえた気がして目を覚ました。
随分と昔の夢を見たものだ。
きっと後宮からの遣いがもたらした知らせのせいに違いない。
―――明日、瑠霞姫と茶会を。
まだ乱されるほどの心が自分の中に残っていたことに蘭瑶は驚いた。
暗い褥に身を起こし、少しの間夢の余韻に身を任せる。
あの紅い瞳。
あの忌まわしく、焦がれるほど愛しい私の陛下。

寝台を抜け出し、鏡台の引き手の奥に仕舞われた簪を取り出した。
もうすっかり古くなってしまった、柘榴石の簪。
ただの一度も髪に挿さぬまま、あの方は居なくなってしまわれた。
「忌々しい下賤な狼……
本当に貴方にそっくりですわ、陛下。」
後宮の様子を間近に見るにつれ、それは昔の悪夢を思い起こさせる。
素姓の知れぬ賤しい妃をのみ愛でる、紅い瞳の王。
二人の『陛下』の瞳と同じ、深く鋭い輝きを持つ柘榴石。
蘭瑶は簪を折り砕こうとして手に力を込めた後、苦しげに顔を歪ませた。
どうしても出来なかった。
もう何度こうして壊そうとしただろう。
初めて結ばれたあの夜から。
蘭瑤は手にした簪をもう一度眺め、そっと鏡台の奥深くへ仕舞った。

王都はそこかしこに花が溢れ、今が春の盛りだというのに。
もう一度褥に体を横たえた蘭瑤は、冷たい氷雨の降る音を確かに耳にした。
そして胸の内に響く、幼い頃の自らの叫びも。

嫌い。みんな嫌い。
みんな消えて、なくなってしまえばいいのに。

煩わしい狼も、昔の悪夢も。
いつまでも耳にこびりついて離れない、冷たく降りしきる氷雨の音も。
そしてあの方が死してなお、この身を縛る妄執も。
「消せればいいのにね……」
蘭瑶はそっと呟いて自らの肩を抱いた。





後記。
とりあえず蘭瑤様の過去ねつ造編はこれにて終了です。
すみません、暗い話で。書いた本人は楽しかったです!

次からやっと本筋に戻ります~。





関連記事
スポンサーサイト
毒花※蘭瑤・瑠霞メイン | コメント:4 |
<<簪の贈り物 | ホーム | 氷雨の追憶>>

コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-06-20 Sat 00:59 | | [ 編集 ]
病んでる病んでる皆様…。←楽しそう(笑)
本筋に戻られて、病んだ蘭瑶様が心穏やかになられる事を御祈念致しますわ( ´艸`)なんてったって夕鈴と同類ですものね(〃▽〃)弟溺愛者と息子溺愛者!!通じるモノがあるハズ!!
2015-06-20 Sat 18:04 | URL | 行 [ 編集 ]
Re:
あい様。
ありがとうございます!体調はやはり気合でなんとかなりました(私もなんとかな部類です♪)
今の部署に来てから四年間、自分の体調不良で休んだことなかったって今回気付いてびっくりです。
ふふ、立派な社畜になれるかな……(T_T)ナリタクナイ

最近本誌でちらちらお父さん陛下が出てきて、ただふらふら女をとっかえひっかえしてる感じじゃなさそうだなあと。
長髪美形の陛下と14歳の美少女の組み合わせ……見た目大事です!

蘭瑤様はきっとなんだかんだで夕鈴に救われると思います。
とにかく夕鈴は最強ですので(笑)
暗い雰囲気なんてぶっとばしてくれそうです。
2015-06-21 Sun 21:37 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
行様。
もうヤンデレしかいません(笑)
父陛下に、あっさり舞姫から蘭瑤様に乗り換えて欲しくなかったので病んでもらいました(^_^;)
本当はもっとドライに「仕事ですから。」って感じかもしれませんが、じっとりさせてみました。
もはやじとじとしすぎて腐ってる感じです。私の脳が。

きっと蘭瑤様は夕鈴の事気に入ってるんだろうなーと思って、消したいものの中に「下賤な妃」って入れてないんです。
通じるもの、私もあるといいなと思います。
そんなわけで私の希望が勝手に込もった「簪編」になりそうです。
2015-06-21 Sun 21:47 | URL | rejea [ 編集 ]

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。