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狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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氷雨の追憶

毒花シリーズ過去ねつ造編です。
蘭瑤様、瑠霞姫の過去をねつ造しています。
年齢は適当です。皆さん年齢不詳なものですから。
蘭瑤・・・14歳
瑠霞・・・12歳
陛下・・・20代後半くらいでしょうかね?黎翔様のお父さんです。

もうなんというか、蘭瑤様に思い入れたっぷりです。
ただ書いといてなんですが、悲惨な話です。
救いのない暗い話でも大丈夫な方のみお読み下さい。
ご無理はなさらず。
ちなみに話に出てくる柘榴石は、ガーネットの別名です。

子どもに風邪うつされてPCに向かえず、スマホから。
後々手直しするかもしれませんがとりあえず上げときます(^_^;)





後宮の一室で、蘭瑤は降りしきる氷雨をぼんやりと眺めていた。
入宮した時は一面燃えるようだった紅葉も散り終わり、後宮といえども冬枯れの気配は色濃い。
もう、三月(みつき)。
入宮した時、初めて挨拶を申し上げた時以来、陛下のご尊顔を拝していない。
蘭瑤の脳裏に、入宮前夜の父の様子が浮かぶ。

―――頼んだぞ、蘭瑤。お前に我が董家の、ひいては国の浮沈がかかっておるのだ。
今寵愛を一身に受けているのは何の後ろ盾も身分もない、一介の舞姫。王宮の情勢はまこと不安定なものなのだ。
お前の美しさならば、後宮のどの花に比べても劣ることなどない。加えて品位も教養も下賤な舞姫など足元にも及ばん。
いいか、持ちうる全てを使って必ず陛下の寵愛を勝ち取るのだぞ―――

肩に置かれた父の手の熱さに、蘭瑤は自分が背負うものの重さを知った。
自分が寵愛を受けるか否か、それが董に連なる一族全ての命運を握り、国の中枢たる王宮での勢力争いにも多大な影響を及ぼすのだと。
大丈夫。私ならできる。
小さい頃からその為だけに習い事を朝から夜半まで続けてきたし、歩き方一つ、目配せ一つにしても手抜きなどしなかった。
幸いに容姿も他の妃に劣ることはないだろう。
そう信じて後宮へやってきた。
それなのに。
三月待っても、陛下のお渡りはなかった。
蘭瑤ほどの家格の娘なら、入宮したその日の夜にお渡りがあることも珍しくないというのに。
置かれた我が身のやるせなさに、蘭瑤は溜息を吐いた。
手のひらに乗せた美しい簪が灯篭の明かりをきらきらと反射する。
はめ込まれた美しい玉石は一度だけ近くで見た陛下の瞳と同じ、深く紅い、透き通った輝きを放っている。
陛下のお渡りの後、その証に髪に挿そうとわざわざ作らせた柘榴石の簪を、もう何度こうしてただ眺めたことだろう。

「お嬢様、大丈夫ですよ。一度この愛らしさを間近で目にしたら虜にならない男の方などおりません。
加えてお嬢様には、後宮で一番の若さがあります。正妃様はもうお若くないですし、舞姫様はお体が弱いと聞いています。
きっといまにお嬢様こそが寵愛を得て、珠のようなお子を授かります!」
董家から連れてきた従順な侍女が、もう何度目か分からない慰めを口にする。
また気を遣わせてしまった。
蘭瑤は侍女の顔に、無理やりに作った笑顔を向けた。
「ありがとう。……それにしても、今夜は冷えるわ。雨音もこんなに強く。」
「今日は少し長く湯殿を使わせて頂きましょう。きっと心も温まりますわ。」

その時、蘭瑤の部屋に王宮からの遣いがやってきた。
驚くべきことに、今夜陛下のお渡りがあるという。
「やりましたね、お嬢様!うんと念入りに磨きあげましょう。お香もとっておきの白檀に麝香に……夜着も母上様からお預かりの極上の絹ものに致しましょうね。」
はしゃぐ侍女に曖昧な微笑みを向けつつ、蘭瑤は黙考した。

この機会を絶対に逃してはならない。
失敗は許されない。
私が寵愛を賜って、父上の――― 一族の期待に応えなければ。

蘭瑤の薄い肩が寒さのせいだけでなく震えていることに、侍女は気付いていなかった。


その夜更け。
蘭瑤の寝所に陛下が訪れた。
ぎりぎりまで落とされた明かりの中に、長身の影がゆらめく。
蘭瑤は膝を揃えて褥の上で拱手した。
「董 蘭瑤にございます。よろしくお導き下さいませ。」
雨音だけが耳を突く。
応えのない空間に、自分の心臓の音まで響いている気がする。
もうすでに、何かしくじってしまったのだろうか。
蘭瑤は内心の動揺を抑え、身動きひとつせずに、陛下の挙動を待った。

急に体が寝台へと横たえられる。
衣擦れの音が雨音に混じり、それが自分の夜着が解かれる音だと気付いたのは、もう肌も露わになった後だった。
大きな手が蘭瑤の無垢な体の上を這ってゆく。
本で教えられたとおりに、男性を迎え入れなければ。
蘭瑤は潤んだ眼差しで夫となる陛下の顔を正面から見つめた。
紅い瞳を捉えたその時、蘭瑤は少女特有のするどさで、男の心を嗅ぎ取った。

―――この方が見ているのは、私じゃない。別の女(ひと)。

「あ……」
動揺して思わず上がった声に、陛下の目が一瞬暗く笑ったように見えた。
―――董家の少女よ。それが、私たちの仕事だろう。
その目は、確かに蘭瑤にそう伝えていた。
「あ、ああ……」
蘭瑤は理解した。
この度の急な夜伽。王宮内で父からの相当な圧力があったのだろう。
この方は、私のことなどまるで見ようともなさらない。
それでも王として私を抱かねばならないのだ。
そして、自分も、その目に他の女性を宿した男に抱かれなければならないのだ。
陛下は、この私の望みも、陛下のお心を悟ってしまったことも、全て分かっていらっしゃるというのに。
私は、何も分かっていなかった。

どうしようもない虚無感と、身を裂くような痛みに、蘭瑤は静かに涙を流し続けた。

明方、まだ瞳の乾かぬ蘭瑤の眦を陛下は指でそっと浚った。
「……許せ。蘭瑤。」
足音が遠ざかる。
冷たく暗い褥に一人蘭瑤は残された。
耳に残ったのは降り続く雨音と、たった一言だけの睦言。
まだ十四の少女はこうして純潔を失った。



「ねぇ、蘭瑤様。昨夜待ち望んだ兄上のお渡りがあったんですって?」
紅い瞳がこちらを見据える。
「え、えぇ。」
蘭瑤は俯いて答えた。今はその瞳を見たくない。
陛下の妹である瑠霞姫は、兄と同じ色の瞳を輝かせて、質問を重ねる。
「それで、ちゃんとご夫婦にはなれたの?」
「……勿論よ。」
「じゃあなんであの簪は挿さないの?ちゃんとした妃になったら挿すんだって、大切にしてたのに。」
「……もう、あの意匠じゃ子供っぽい気がするわ。」
柘榴石の意味するものは『絆』であり、『真実の愛』。
それを本気で手に入れられると信じていた自分の幼さの、なんと愚かなことか。もう、あの簪を挿すことはないだろう。
蘭瑤の美しい眉がかすかに、だが苦しげにしかめられた。
瑠霞はその様子を見て、気遣わしげに声をかけた。
「ねぇ、蘭瑤様。貴女、大丈夫?昨夜は、お幸せだったの?」
「なぜ、そんな事を聞くの。身に余る幸せよ。」
蘭瑤は精いっぱいの虚勢で微笑む。
その様子を見た瑠霞の整った顔は、悲しげに歪んだ。
「私、後宮に来たばかりの頃の貴女の顔が好きだったの。自信に溢れて、美しくて。必ず自分の幸せを掴むんだって、そういう強い気持ちが見ているだけで分かった。
ここの女の方たちはみんなもっと厭な顔をしているから、いつもいつも息苦しかった。
貴女だけが私と同じだと思ってた。
……兄上のお渡りがあれば、またそれが見られるって期待してたんだけどね。」
瑠霞姫ははぁっと息を吐いた後、蘭瑤をするどく見詰めた。
「ねぇ、蘭瑤様。本当にそれでいいの?貴女が欲しかった幸せってそんなものなの?」
「……私は正妃でもなんでもないの。陛下の御心に沿うだけよ。」
「つまらないわ。」
瑠霞は吐き捨てるように言い放った。
「私は、自分が心から欲する人を必ず自分の力で手に入れて見せるわ。どんな手を使っても。」
挑むような瑠霞の言葉。

―――貴女と私は違うわ。生まれながらの王族で、地位も権力もある貴女と、正妃でもなく寵愛も持たない、ただここに居るだけの妃妾に過ぎない私とは。
喉元まで込み上げた叫びたいほどの衝動に、蘭瑤は必死に耐えた。
心の儘に叫んだところで、王族としてここにいる瑠霞には分かるはずがないのだ。このみじめな気持ちなど。

嫌い。みんな嫌い。
みんな消えて、なくなってしまえばいいのに。

蘭瑤はゆっくりと立ち上がった。
「瑠霞姫さま。私、まだ昨夜の痛みが取れておりませんので退がらせて頂きとう存じます。ご無礼をお許し下さいませ。」
瑠霞は先ほどまでと口調の変わった友人の顔を驚いたように見上げ、少しの沈黙の後ゆるゆると首を振った。
「残念だわ、蘭瑤様。もう、あまりこうしてお会いすることもないのでしょうね。
年の近い方は貴女しかいなかったから、姉のように思っていたけど、仕方ないわ。
……貴女が、私を拒むなら。」

部屋を去る蘭瑤の後ろ姿に瑠霞は最後に声をかけた。
「私は、絶対に自分の求める愛をいつか手に入れてみせる。
貴女は貴女の愛を探して。」
蘭瑤の耳には、それはただの煩わしい呪詛にしか聞こえなかった。
そして、友人の言葉すらそのように捉えてしまう、自らの内に渦巻く真っ黒な思いに、体を震わせることしかできなかった。
このまま自分も後宮の毒に染まってゆくのだろうか。
周りの、妬みや嫉みに美しい顔を歪ませた花々のように。
「……寒い。」
蘭瑤の呟きを聞きとる者も、その薄い壊れそうな肩を抱いてくれる者も、この後宮には一人として居なかった。




後記。
最初から毒花じゃなかったんじゃないでしょうか。蘭瑤様。
そんな設定で書いてみました、毒花の萌芽。
14歳でこんなとこ放り込まれて重責担わされたら、普通おかしくなると思います。

どブラックなまま毒花の開花の瞬間へと続きます~。
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-06-17 Wed 10:57 | | [ 編集 ]
ドシリアスも、良いよね~(*´д`*)毒花!!シリーズ化で(笑)
はっ!もしや、その柘榴の簪を夕鈴に…←勝手なことを(笑)
お身体大丈夫ですか!?子供達からの風邪…あるあるですよね(・_・、)子供の風邪は大人が掛かる風邪より重い種類だから親が掛かると辛いんだそうですよ(小児科医談)。お大事になさって下さいませ。
2015-06-17 Wed 12:34 | URL | 行 [ 編集 ]
蘭瑶さんて何故か無表情?
いえ、どう表現していいかわからないけど
心の中が見えませんよね。
14歳で・・・うーむ
17の夕鈴が嫁きおくれなんだから
そんなものなのかもしれませんよね。
ああ、庶民で良かった(笑)
シリアス、ブラック好きです。
簪は念がこもってそうですねぇ。
2015-06-17 Wed 17:45 | URL | くみ [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-06-17 Wed 21:18 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
ご心配ありがとうございます(*^_^*)
風邪は仕事してれば治る!という根性論で仕事には行くんですが、家事をひたすらさぼってます。
そんななか夫のPCに向かえば確実に怒られるんで……

陛下(父)も可哀想な人ですが次で痛い目見てもらいます!
やられっぱなしじゃあ蘭瑶様可哀想過ぎるので(^_^)b
2015-06-19 Fri 08:12 | URL | rejea [ 編集 ]
行様。
そうなんです。さすが行様!
「追憶」書かないと、本題の「簪」が書けないんです。
イライラする陛下とかわいい瑛風様も書きたいところですが、まずはブラック蘭瑶様頑張ります。

なるほど、風邪、私の方が長引くのはそういうことなんですね(*_*;すごい納得!
良くなって来たので更新めざして書いていこうと思います。
2015-06-19 Fri 08:18 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
くみ様。
もうドロドロの念で蘭瑶様自身動けなくなっちゃってる感じかなーと(^_^;)
何考えてるか分からないので逆に好き勝手やっちゃってます。

中国の後宮はよくわからないんですが、日本では9歳あたりで天皇に嫁いだお姫様もいるんです(T_T)
庶民の私はガクブルです。
2015-06-19 Fri 08:27 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
ゆらら様。
瑠霞姫も可哀想ではあるんですが、まっすぐな若さが蘭瑶様にはトドメになっちゃった感じです。

毒花の色、ずーっと意識しながら書いてるのでドキッとしました!なんだか嬉しい!
私としては闇のなかで、そこだけうっすら光ってる白い花で、花心だけ紅いのを想像してます。
触ったらいけないってわかってるのに、つい手を触れてしまうような妖しい花にできたらいいなーと思ってます(._.)φ
2015-06-19 Fri 08:41 | URL | rejea [ 編集 ]

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