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白陽帝国の花嫁 10

サブタイトル「狼元帥の帰還」
こちらはパラレルです。
がっかり元帥とバイト衛生兵がシリアス展開に挑戦中です。
頼むからもう少し仲良くなってくれ!

苦手な方はご無理なさらずに。



黎翔率いる直属部隊が前線に向けて出陣してからもう半月。
手薄となった軍本部で李順とその補佐を買って出た夕鈴は日々膨大な仕事に追われていた。
「夕鈴殿……この書簡でとりあえずキリがつきそうですよ……」
「お疲れ様でした李順さん……ちょっと、休憩しましょう……」
ヨレヨレの二人は崩れるように机に突っ伏した。
まさかこんなに忙しいとは。
バイトの夕鈴でこの有様。実質軍本部を任された李順は身をすり減らすようにして働いていた。
「閣下がいないといつもこうなんですよ……ああ、あと何日続くのか……」
呻く李順が不憫で、夕鈴は元気付けるように言葉を探した。
「あー、そういえば李順さん。元帥閣下が『もう李順さんに脅し文句は使えない』って言ってましたよ。『復唱せよ』っていう、アレですよね。良かったですね。」
突っ伏した李順が顔を起こした。
「それは……元帥閣下が確かにそう仰ったのですか?」
「ええ。なんだか分からないけど、私のせいみたいです。」
そうですか、と李順は呟いた。
「夕鈴殿、その時貴女は元帥閣下をどのように思いましたか。」
背筋を伸ばした真剣な眼差しの李順に、夕鈴も姿勢を正す。
「私、今まであの方のことちゃんと見てなかったんだなって。『冷酷非情の狼元帥』もあの方に違いないのに。ふざけてるところだけ見て怒ったり避けたりしてきました。私への態度が真剣なのかもちゃんと考えてませんでした。
今は……もっとちゃんと知りたいって思ってます。」
夕鈴はこの半月ずっと考えていたことを素直に話した。
よく分からないけれど、元帥は『目を背けない覚悟を決めた』と言っていた。
ならば自分も向き合ってみよう。

夕鈴の強い眼差しを受け止めて、李順はふぅっと溜息をついた。
「そろそろ潮時ですかね。もはや私の手のひらには余ります。」
「はぁ……?何がでしょうか。」
面食らう夕鈴に構わず、李順は話を続ける。
「夕鈴殿は、黎翔様が元帥の地位を得た経緯をご存じですか?」
「初めてお会いした時に李順さんから聞いた程度しか。久しぶりに王族から元帥になられたんですよね?」
「その通りです。かつて帝国軍は武器商人と癒着した上層部の一部によって牛耳られていました。彼らは私腹を肥やすためだけに無用の争いを引き起こし、国民を危険にさらしていました。」
「そんな……王宮の方々は何も仰らなかったんですか?」
「その資金が王宮に流れていたんですよ。つまりは軍上層部の言いなり、ただの飾りものです。それを黎翔様は毛嫌いされて帝国軍へと入り込むことになさいました。
数年かけて膿を出し、敵を退け、外周諸国との和平を結び、遂には最高権力者たる元帥の地位を手に入れて、帝国軍を現在の姿へと導かれました。
人から冷酷非情の誹りを受けてもひたすらに自分の信じる道を進んできたのです。
もともと仲が良かったわけではありませんが、兄上である国王陛下を上回る力を手に入れた今、ご家族との繋がりなどほぼありません。」
夕鈴は黎翔の冷たく光る瞳を思った。あの瞳の底にあるものは、悲しみだ。少しも気付けなかった。
「戦争に勝つ、ということはそれと同時に敗者を生みだします。例え勝者であろうとも、犠牲を出さずに戦など行うことはできません。
黎翔様はそのことから意識的に目を背けていらっしゃいました。そこに目を向ければ自らの歩みを止めることになりかねませんから。大きな戦をこなす度にふらりと姿を消されるのも、押し隠している逃げ出したい気持ちの表れでしょう。」
夕鈴の瞳から静かに涙が零れた。
「ただ、夕鈴殿。元帥閣下は『もう脅し文句は使えない』と仰ったのでしょう。それは『逃げない覚悟』を決められたということです。」
「それが、どうして私のせいになるんですか?」
呆れたような顔をして李順は眼鏡を指先で直した。
「元帥閣下は貴女にどのように仰ったんですか?」

―――大事なものが出来たからこそ、向き合わなければいけない―――
大事なもの。
触れるだけの口づけと、真剣な眼差し。

夕鈴の顔が赤く染まった。
「後は直接元帥閣下の口からお聞きなさい。」
さぁ、次の仕事に移りますよと、李順は夕鈴を追いたてた。


それから毎日夕鈴は黎翔のことを思って日々を暮らした。
初めは怖いし、セクハラばかりだし、とんでもないひとだと思った。
次になぜか捨てられた犬みたいにこちらに寄ってきて、なんだか放っておけなくて。
かと思えば至近距離で恥ずかしげもなく甘い言葉を囁いて髪や手や頬に触れて。
無理やり唇を奪おうとしてきたこともあった。
そして眉毛を下げた半泣きの顔でわたわたわたわた色々言い訳や謝罪を口にして。
それと同一人物とは思えない、『狼元帥』としての顔も。
(ホントによく分からない方だわ。不思議なひと。)
直接会って話がしたい。
本当のあの人が知りたい。

痛む胸を抱えたまま仕事に励む夕鈴のもとへ、李順から凱旋の知らせが届いた。
「李順さん!元帥戻ってくるんですか!?」
執務室へ飛び込んだ夕鈴の目に入ったのは、頭を抱える李順と、毎日帰りを待った黎翔その人だった。
「あ、あれ!?元帥!!どうしてもういらっしゃるんですか!?凱旋のパレードは!?」
「……どうしても我慢できず、単騎で先に帰っていらしたようですよ。全く、本当に困った方です。」
ほどほどに、と言い置いて、李順は執務室を後にした。
「夕鈴……」
「元帥、お帰りなさい。」
夕鈴は黎翔のもとへ駆け寄った。
「怪我や、具合の悪いところは……無さそうですね。よかった。」
思わず安堵し、目に涙を浮かべたままふわりと笑った夕鈴の顔を見て、黎翔の表情が変わった。
「夕鈴……ただいま。」
そのままきつく抱きしめられる。
いきなり腕の中に捕われても、撥ね退ける気にはならなかった。
黎翔の顔が、狼でも甘えたような犬でもなくて、泣き出す寸前の小さい子供のようだったから。
その顔から彼の心の痛みが十分に想像できた。
それでもこのひとは逃げないと言ったのだ。
自分がこうしていることで、少しでもその苦しみが和らぐのなら。
夕鈴は静かに彼の背中を撫で続けた。


「夕鈴……私が無事に戻ったら続きを、と言ったこと覚えているか?」
夕鈴の肩口にしばらく頭を埋めるように預けていた黎翔が小さな声で呟いた。
「え、元帥……今何て?」
「君に会いたかった。……君は?私に会いたかったか?」
「あっ……は、はい……」
紅い瞳が夕鈴を捕らえる。
(なに?胸がドキドキして……息ができなくなる!)
焦る夕鈴を置き去りに、黎翔の整った顔がゆっくりと近付く。
後頭部に手を回され、視界が黎翔の綺麗な顔で埋まる。
鼻が触れ合う程の距離で
「夕鈴。愛している。」
と囁かれ、次の瞬間には口づけされていた。
出陣の時とは違う口づけ。
下唇が優しく噛むように挟まれ、その挟まれた唇に黎翔の舌がちろりと触れた。
「……っ!!」
予想外の刺激に夕鈴は一瞬で沸騰し、そのまま気絶した。
「えっ……夕鈴!?夕鈴!!」
床へ崩れ落ちた夕鈴を抱えると、小さな寝息が聞こえる。
どうやら驚きと緊張で倒れてしまったようだ。
その時、黎翔は彼女の目の下にくっきりと出来た隈に気付いた。
黎翔が心配でこのひと月あまりよく眠れていなかったようだと李順が言ったのを思い出す。
無理をさせないように、とも。
安らかな寝息を耳に、黎翔はもう一度その温かさを確かめるように夕鈴を抱きしめた。
自分の腕の中にある幸福と、他者から奪った幸福とを思って。












後記。
こういう人だと設定は考えてたんですが、書いてみたら想像以上にシリアスでした。
元帥、悪いものでも食べたんでしょうか。


最後の後頭部に手を回し至近距離で囁く、これを考えた直後に息子4歳にやられて驚きました。血は争えません。
鼻が触れ合う距離でニヤリと笑ったヤツは
「ママ……壁ドン。」
とドヤ顔で言ってました。惜しい!ちょっと違う。
テレビで覚えたそうです。

働き者の夕鈴は一生懸命お仕事してる男性がやっぱり好きなんだろうなーと書いてて思いました。

次の話はふざけたいと思います!
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白陽帝国の花嫁 | コメント:6 |
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コメント

夕鈴、許容量越えちゃった(笑)残念でした(泣)元帥!
息子さん可愛らしい(*^▽^*)そんな時も有ったなぁ…←遠い目(笑)
今じゃ図体ばかりデカくなりおって!反抗期真っ盛りの中学男子メ!まぁ、まだまだかわいいところもありますがね(笑)
2015-06-01 Mon 22:08 | URL | 行 [ 編集 ]
おふざけも楽しいですが、ここのところのシリアスもいいです~。
さてさて次回が待ち遠しいです。
2015-06-01 Mon 22:48 | URL | ゆらら [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-06-02 Tue 00:48 | | [ 編集 ]
行様。
陛下・お妃様に比べてかなり恋愛偏差値ガッカリな元帥・衛生兵です(^_^;)
ガッカリなお付き合いをするんだろうなぁと生暖かい目でご覧ください……

息子さん、反抗期なのですね。
自分の反抗期を思い出すとガクブルです(T_T)
今からこのベタベタを動画で撮っておいて「クソババア!」と言われたら上映してやろうかなどとついつい考えてしまいます。
2015-06-03 Wed 08:12 | URL | rejea [ 編集 ]
ゆらら様。
まじでもいいですか!?やったぁ!
シリアス展開も書いてて楽しいので、そういって頂けると嬉しいです。
ちなみにパロディ路線の時はノリと勢いでごまかしてます。ごまかせているのかどうかもよく分からない……

只今キャパオーバーにつき、続きはもう少々お待ち下さい(T_T)
2015-06-03 Wed 08:17 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
あい様。
最近まともな陛下・お妃様を書いてないことに気づきました。陛下のかっこよさを忘れないようにしないと……
元帥が一段落したら毒花書きますので、もう少しお待ち下さい(T_T)
話は出来てるけど書く時間がっ…

ちび彼氏さん可愛いですね(*´▽`*)ママ大好きなんですね
本当にどこで仕入れてくるんでしょうね?男の子って。
本能なんでしょうか(笑)
2015-06-03 Wed 08:26 | URL | rejea [ 編集 ]

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