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白陽帝国の花嫁 9

ひたすらパロディ路線を突き進む「白陽帝国」、今回はまさかのシリアス突入です。
サブタイトル 「狼元帥の覚悟」
がっかり足フェチなだけではないところを見せないと夕鈴に惚れてもらえません!(T_T)

ちょっとお堅い狼元帥と衛生兵ですが、よろしければどうぞ。



「元帥が、出陣―――?」
夕鈴は廊下で出合った浩大から信じられない言葉を聞いた。
「え、元帥がご自分で前線に行くの?」
そんな、まさかとつぶやく夕鈴に、浩大は冷めた視線を送った。
「行かないとでも思ってた?この国は常時戦時下だよ。そりゃあ行くことだってあるでショ。」
戦時下とはいえ、外周の諸国とは既に平和条約が締結されて、国民自体にそこまでの危機感はない。
もともと豊富な鉱物資源を持つ白陽帝国は和平交渉を境に日に日に市場も安定し、いまや下町も活気に満ちているといってもいい。
そもそも軍人や貴族が住む地域と庶民が住む下町は高い壁で区切られており、軍事に関する詳しい情報も一般庶民の耳には入らない。
そんな中育った夕鈴も、戦争を身近には感じていなかった。
帝国軍の本部に来てからの日々も、彼女にとっては黎翔の迷惑行為を除けば平和で穏やかで。
まさか最高権力者たる彼が自ら出陣するなど考えてもいなかったのだ。
言葉を失う夕鈴に浩大は言う。
「このままでイイの?まだ元帥と距離とったまんまなんだろ?」
あの後、黎翔は顔を合わせる度にわたわたしながら謝ってきた。それでもなんだか面白くなくて5日ほど徹底して避けていたのだが、余りのわたわたっぷりに夕鈴は逆に可哀想になってきた。
そもそも恋人でもない自分が、黎翔の過去の女性問題に関してこんな態度をとっていることもおかしいと思えるくらいに頭も冷えた。
「もういいです。」と言ったものの、やはりどう接していいか分からなくて。
なかなか素直に話が出来ずにいたのだ。
「一度前線に行ったら、いつ戻ってくるかわかんないぜ。気付いた時には手遅れになることだってあるかもよ?」
にっと笑って浩大は言った。
「……そうよね。教えてくれてありがと、浩大。それで、出陣っていつなの?」
「明日の早朝だけど。」
「あっ、明日ぁ!?嘘っ、何で誰も教えてくれなかったの!?」
あわてる夕鈴に、浩大は苦笑した。
「アンタに心配書けたくないって、箝口令しいてたんだよあの人。これはオレの勝手なお節介だからどーするかは花嫁ちゃん次第かな。」
じゃあね、と片手をヒラヒラさせて去っていく浩大を、夕鈴は呆然と見送った。
「明日の朝って……どうしよう……」
とにかく話をしなくては。
焦る夕鈴だったが、さすがに出陣の前日。
黎翔は朝から続く会議で全く執務室に戻ってこない。
ただ時間だけが無情に過ぎていく。

(結局夜になっちゃったんだけど……)
出陣前夜。さすがにもう自室に帰って休んでいる頃だろう。
もともと悩んでいるのは性に合わない。
次いつ会えるのか分からないのだ。ちゃんと話をして、きちんとお見送りしなくては。
思い立ったらじっとしていられない夕鈴は、思い切って夜更けに黎翔の自室を訪ねた。

「君からこちらへやってくるとは驚いたな……」
黎翔はまだ自室の机に書類を広げて目を通している最中だった。
「お忙しいのにごめんなさい。明日はご出陣だって聞いて……」
「浩大か。」
黎翔は不愉快そうに呟いた。
「浩大は悪くないです。それより、どうして教えてくれなかったんですか?い、一度前線に行ったらいつ戻れるか分からないって……!」
言いながら、どうしようもない焦りと不安に包まれる。
このまま、この人が戻ってこなかったら。
これが、最後になるのだろうか。
夕鈴の目からぼろぼろと涙が零れた。
「こんなに泣かれるとは思わなかったな……」
黎翔は指でそっと涙を拭った。
「大丈夫だ、夕鈴。劉将軍の部隊が先行して平定に乗り出している。私が行くのは和平交渉を迅速に終わらせる為だ。一応、浩大も克右もいるしな。」
「……でも、それでも戦争に行くことには変わらないでしょう?」
泣き止まない夕鈴の頭をぽんぽんと撫でてから、黎翔は呟いた。
「確かにな。そして、帝国軍の最高責任者たる私がこの戦争を起こしていることもまた事実だ。」
夕鈴を静かに見つめるその瞳は、彼女がいつも見ていたものではない。
白陽の黒き軍神として恐れられる、冷酷非情の狼元帥のものだった。
そうだ、忘れていた。この人はその身に畏れを纏った黒い狼だ。
スカートや足ばかり気にして、ちょっかいを出してくる困ったひと。
夕鈴に怒られてわたわた謝る少し情けないひと。
それは例えるなら海面に浮かぶ氷山の一角に過ぎない。
今目にしているこの姿こそが本来の彼の核なのだ。
夕鈴はこの時になって初めて、黎翔が背負うものの重さに思い至った。
だが紅く深く、冷たく光る瞳を不思議と怖いとは思わなかった。
ただ、美しいと思った。
「望んで手にした地位だ。後悔したことはない。だが、君がいてくれるおかげでやっと覚悟を決められた。」
「……覚悟って、何の?」
「私が今まで奪ってきたものから、目を逸らさない。大事なものが出来たからこそ、向き合わなければいけないのだと。」
これでしばらく李順に脅し文句は使えないな、とくすりと笑う。
夕鈴は、意味は分からないものの、これは黎翔にとってとても大事な事なのだと思った。
夕鈴はそっと彼の手をとった。
「私、待ってます。ご武運を毎日祈ってます。私、まだあなたのこと全然知ろうとしてなかった。だから……ちゃんと帰ってきて下さい。」
黎翔は驚いたように目を見開いた後、穏やかに微笑んだ。
「……なら、私に勝利の女神の口付けを。」
囁きが耳に入った次の瞬間、夕鈴の唇に何かが触れた。
その少し冷たく柔らかいものは一瞬だけ唇の上に留まって、離れていった。
「……これくらいは許してくれ。戦場へ赴く私への女神の加護だ。」 
口元は微笑んでいるが紅い瞳が驚くほど真剣で、夕鈴は怒れなかった。
怒ろうとも思わなかった。
こんなことで無事に帰ってきてもらえるなら構わない。
夕鈴の頬をまたぽろぽろと涙が零れた。
「夜も遅い。……続きは無事に帰ったらだな。」
さあ、と肩を柔らかく押され、扉の外へ促される。
「私の帰りをいい子で待っていてくれ。」
少しふざけた優しい口調。それは柔らかな拒絶だ。
もう、退がらなければ。
夕鈴は頷いた。
扉が閉まる前に一瞬だけ見えた黎翔の横顔は、もう夕鈴ではなく遥か遠くを見つめているようだった。




後記。
どシリアスなまま次回へ続きます!
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白陽帝国の花嫁 | コメント:2 |
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コメント

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2015-05-30 Sat 16:32 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
あぁっ!麻婆丼がっ!(笑)
土日もお疲れ様です。

やっぱり夕鈴としたら『支えてあげたい』ってならないとグッとこないんじゃないかなぁと。
次で元帥の生態について李順さんが語ります!(もはや珍獣扱い。陛下、ごめんなさい。)
次で10話になっちゃうのでいい加減仲良くして欲しいと必死です(^_^;)
2015-06-01 Mon 08:11 | URL | rejea [ 編集 ]

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