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物思う道具 「つまみ食い」

ご無沙汰してしまいました。
しかも、このタイミングで浩大がメインです。
本誌の笑顔にやられました。
王道を求めていらっしゃった方、すみません。
そもそもサブキャラを書くのが好きな上、王道いちゃラブを書くのが苦手ということもありますが…
本誌と諸先輩方の素晴らしいSSを読ませて頂いてもはやご夫婦に関しては満たされてます!
幸せ気分です。
何回読んでるんだ自分!でも何回読んでも良いものは良い!


さて、本題です。コミックス10~11巻、夕鈴が下町に帰ってきているあたりまでを想定しています。
ただ最新71話を読んだ上で書いておりますので、読まれてからの方がいいかなーとも思います。

浩大の過去を勝手に暗く設定して書いてます。
ただただ、自分的に浩大を美味しくするための話ですので、余計な設定が苦手な方はスルーなさって下さい。





初めはただの興味本位だった。
何が特別なのか知りたくて、手を出した。

食事に毒を混ぜられることが当たり前の世界で生きてきた主が、バイト妃だという少女の淹れた茶と添えられた菓子を嬉しそうに口にしているのを目にして浩大は驚いた。
ただの茶と菓子が、何故狼をあんな顔にさせるのか。

浩大は親の顔も覚えていない頃に捨てられ、拾われた先の隠密の頭の下で日々訓練を施され育った。
彼にとって食事は栄養を補給する為の物であり、多少の美味いまずいはあれど、それ以上でもそれ以下でもない。
冷えた残飯だろうが干からびた木の根であろうが、食べて傷を癒すだけの体力を付けなければ到底生き残れない程の過酷な日々。
要は食えれば良かったのだ。
一人前の隠密となった今でも食に対する感慨は大して変わらず、もっぱら諜報活動中や警護対象の周りで立ったままさっさと食べて済ませてしまう。
そんな自分と不幸な境遇という点でも食に対してそう興味がない点でも似たり寄ったりだった主の変容に浩大は興味を示した。
それに。
眉間にシワを寄せて唇をへの字に曲げたり、時々赤くなったり。かと思えば嬉しそうに微笑んでみたり。
そんなふうにして、たった一人のことを考えながら選ばれた菓子は、他の食べ物と何か違うのかもしれない。
浩大はバイト妃がただ一人の為に懸命に選び抜いた菓子をひょい、と口に放り込んだ。
結果はなんということもない、普通の菓子だ。
張元老師のもとで糖分を摂取する為にくすねている菓子と何も変わらず、ただ甘い。
そりゃあそうだよな、とつまらなそうに呟いた所に、妃がやってきた。
「ちょっと!これは陛下にって、とっといたのに!何でアンタが食べちゃうのよ浩大っ。」
面倒事はごめんとばかりに、浩大は窓から外へ身を滑らせて後宮の屋根へと逃れた。
一瞬だが、胸の内側を爪で柔らかく擦られたような不思議な感覚に襲われて首を傾げる。
考えたもののよく分からない。
考えるうちに、そういえば自分は今までこのように人から怒られたことがなかったなとふと思う。
訓練や任務で失敗をすれば容赦なく叱責や体罰をくらってはきたものの、それとは違う。
真っ直ぐで、あけすけで、馴れ馴れしくて。
もしも母親や姉妹がいたら日々こんな風に怒られたのだろうかとふと考えて、そんなことを思った自分が馬鹿馬鹿しいと頭を振った。

それから度々浩大はバイト妃のおやつをくすねた。
あの、胸の内側を軽く引っ掻かれるような感覚を自分なりに分析してみたいとも思ったし、なによりあの娘は反応が面白い。
狼の道具である自分をまるで友達かなにかのように扱うその能天気さが新しいとも思う。
だが、そんな思いと裏腹にこうも思う。
―――自分は道具だ。あの人にとって必要なくなれば、この娘も即、切り捨てる。それが自分の仕事だ。

だが、結局そんな必要はなかった。
主は自ら大事な妃を手放したが、浩大の護衛の任務を解くことはしなかったからだ。
必要なくなったからではない。この上なく欲しているくせに、彼女を守る為に手放した。
馬鹿だなとは思うものの、道具である浩大は黙って任務に励むだけだ。
結果、浩大は期せずして今までで一番近くで夕鈴と接する日々を送る事になった。

後宮から下町に戻ってきた夕鈴は、かつての様子とはやはり違っている。
日が出れば洗濯に勤しみ、手が空けば家じゅうの掃除をし、時間になれば家族のための食事を作る。
だがその合間合間にいちいち怒り、溜め息をつき、遠くを見やっては涙ぐむ。
その様子を見た浩大は、泣きながら作った料理を食わされる弟の気持ちはどんなもんだろうと、聡そうな弟を少しだけ不憫にも思った。
いつものようにつまみ食いをして
「今日のその煮付け味付けちょっと濃くね?」
とからかうが、後宮で張り上げていたような怒鳴り声も返ってこない。
あきれたように小さくぼやくだけだ。

それでも今日も浩大はつまみ食いをする。
あの、胸を擦っていく不可思議な感覚を無意識に求めて。
自らを道具だという彼は、その感覚が思慕や淡い恋情に近いものだとは気付かないままに。

今日も今のところ下町は平和だ。
先程くすねてきた湯気の立つ饅頭を屋根の上で齧る。
美味い。
でもやはり今日も少ししょっぱい気がする。
その時階下から声がした。
「あー!饅頭が一個足らない!さてはまた食べたわね!!」
意外と元気な声に浩大は笑った。
こっちはなんとか大丈夫そうだ。
そういえばさっき幼なじみとかいうボウズともやりあってたなと思い出す。

王宮の様子はどうだろうか。
この怒鳴り声を心から聞きたいと思っているあの人は。
浩大の瞳が猫科の獣を思わせる鋭いものに変わる。
『夕鈴』は確かにどこにあっても幸せを掴めるだろう。そういう強さを持った娘だから。
ただ、あの人は違う。
浩大は遠く霞む王宮を暗い瞳で見据えた。

その時、王宮に続く道筋によく見知った陰気な顔が見えた。
彼―――周 康蓮は、浩大の顔を見上げて小さく頷いた。

本当に難儀なお人だ。
自分で切り捨てたものを守る為にこの国の宰相まで寄越すなんて、とんだ笑い話だ。
思わず溜め息が漏れる。

どうせ諦めきれないなら、守る覚悟を。
下町にある、普通の「幸せ」を奪う覚悟を。
隠密が主に求めたものは自身の胸にそのままはね返り、彼にこそ覚悟を決めさせた。
「……もしかしたらアンタの幸せはここにもあるかもしれないけどな。アンタに手を伸ばす覚悟があるのなら、とことん利用させてもらうよ。お妃ちゃん。」
せっかく手に入れかけた馬鹿馬鹿しくも騒々しい日々を結構気に入っているし、何よりこのままではあの人が保たない。
道具としては長く使ってもらわないことには困るのだ。
あの人の幸せは、汀 夕鈴―――『お妃ちゃん』の側にしかないのだから。

さあ、この後の賭けがどう転ぶか。
浩大はつまみ食いの最後の一口を飲み込んで、狼の唯一の花嫁のもとへと向かった。




後記。
今までで一番書き直しました。
直しすぎてもうよく分からない……
浩大のつまみ食いがこんな理由だったらオイシイな、という願望で書き出したんですが、周宰相まで出ちゃったという。
この願望フィルターを通すとこの後の浩大の活躍が私的に美味しくなります。
晏流公の屋敷から脱出する時とか。71話の笑顔とか。
「利用している」と無意識に自分に言い聞かせてたら堪らんな、という。
でも度重なる命令違反、処罰されるかもしれない賭けに出てる時点で、ものすごい覚悟だと思います。
浩大かっこいいー。



このタイミングで几鍔と浩大が出会ったら相当仲悪い気がします。
陛下が触れられないものに軽々しく接しやがって、みたいな。
そんな二人も見てみたいです。

浩大と几鍔
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-05-28 Thu 00:19 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
PR大使に煮詰まってる時に書き出したんですが、71話を読んで大幅修正、脳内浩大祭りになってしまいました。
元帥はちっとも捗ってませんσ(^_^;
あー、足フェチどうしよう…
それにしてもこのタイミングでご夫婦を書かず、自分の趣味に走る残念ぶりが我ながらアレだなあと思います。

ブラック浩大、二部でどんどん出てきたら嬉しいですね!
夕鈴がブラックさに気付く時が来るのかなーと思うとわくわくします。
北の頃の話とか生い立ちとか気になりますし。
あ、もちろん国王ご夫妻にはこっちが恥ずかしくなるほどいちゃついてもらいたいです。
2015-05-28 Thu 08:14 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-05-28 Thu 13:17 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
おおっ……元帥、次の話でトラウマというか弱いとこを夕鈴に晒そうと思ってたんです。瑠霞様は出ないけど…

というか、蘭揺様、今私が一番注目してるサブキャラです!書きたいけどネタが思い付かないと思ってたところにあい様から天啓が!
妄想の方向性がぴったりでビビりました。
面白そうで勿体ないので単独で一本書かせて頂けないでしょうか?
2015-05-28 Thu 18:32 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-05-28 Thu 21:03 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-05-29 Fri 00:02 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
いやいや!
話に行き詰まるとコメントを参考にさせて頂きながら書いてるので助かります(*^_^*)
ありがとうございます!

妖艶美女二人、年齢近そうですよね。
仲悪そうでたまりません。
蘭瑶様は後宮入り→順番待ち→息子10歳で30前後ですかね?
悪さに磨きがかかる頃ですね(笑)
2015-05-29 Fri 06:19 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
ゆらら様。
サブキャラ話読んで頂いて嬉しいです!
隙間産業(?)のこのブログ、おじ様祭も開催したいところです。
氾 史晴さんはかなり気になるお人です。
夕鈴を面白がってるところがまた魅力ですよねー!
義広さんも最近急上昇してます。なにげに苦労性っぽいですし。
真剣に働く大人の男性は魅力的です。
2015-05-29 Fri 06:35 | URL | rejea [ 編集 ]

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