星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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白陽帝国の花嫁 6

こちらはパラレルです。
苦手な方はスルーなさって下さい。

サブタイトル「狼元帥の甘い牙」

自分でがっかりな変態元帥にしてしまったせいですが、やっと元帥が本気出します。(遅いよ…)
微糖ですが、よろしければ。




狼元帥が不埒な犬と化した翌朝、軍本部に与えられた自室で目覚めた夕鈴は夢見の悪さに飛び起きた。
(何なの私……夢の中の元帥に耳と尻尾が生えてたなんて。しかもなんだかかわいく尻尾振って近寄ってくるとか。どれだけ昨日の元帥に驚いたのよ。)
昨日は二人きりになるとやはりいたたまれず、早々に退出したのだが。
職務上やはり黎翔の近くには行かなくてはならないし、体調も確認しなくてはならないだろう。
頭を振って気持ちを切り替える。
「洗濯!朝ご飯終わったらすぐ洗濯しよう!そしたら気分もスッキリするはずよね。」
だがハンガーに掛けたエプロンを見た瞬間、またしても昨日のことを思い出してしまう。
(エプロンに、こてって頭乗っけた元帥、なんだか青慎みたいでかわいかったなぁ。)
黎翔のあの様子から、しばらく会えていない弟のことを思う。
(そっか。しばらく青慎に会えてないから、あんな感じの元帥を見てキュンときたっていうか、動揺しちゃったんだわ。)
そう、きっとそうに違いない、と自分に言い聞かせるように何度も胸の内で呟きつつ、夕鈴は手早く朝の支度を整えた。
「そうだ、せっかくだから克右さんにお礼しないと。またみっともない所を助けてもらったし。」
洗濯の他にも今日やるべきことを頭の中で整理して、夕鈴は気合いを入れる。
「さっ、今日も一日稼ぐわよ!お姉ちゃん頑張るからね、青慎!」


朝からテキパキと動き回った夕鈴が昼過ぎに執務室に顔を出すと、昨日会った浩大という青年が黎翔、李順と話をしている最中だった。
退出するべきかと伺いを立てると同席するよう促される。
「昨日はすまなかった。君のおかげで体調はすっかり良くなったようだ。」
にっこり微笑む黎翔に夕鈴はまたも、どぎまぎしてしまう。
昨日からやはり、何かおかしい。
今まではこんなに穏やかに笑いかけたりせず、常にどことなく意地悪な顔で笑ってちょっかいをかけてきたのに。
「いえ……良くなられたなら、良かったです。」
なんとかそう返すと黎翔がベルベットの椅子から立ち上がり、近づいてくる。
思わず身構えると、黎翔は夕鈴の前で立ち止まった。
「……やはり私は君に嫌われているのだろうか。」
そう呟いた顔が余りに悲しそうでいじらしくて、夕鈴は慌てた。
「やっ、あの、嫌いというか何というかっ……緊張すると言いますか……」
否定の意味でパタパタと顔の前で手を横に振る。
その様子を見ていた浩大は必死に笑いを噛み殺し、李順は静かに微笑んだ。
狙い通りだ。
あとはじっくり彼女との距離を詰めていけばいい。
黎翔は悲しげな表情のまま、いつの間にやら手袋を外した手で体の前に無防備にさらされた夕鈴の片手をそっと掴んだ。
そのまま恭しく自身の手のひらに乗せ、挟みこむように上からもう一方の手を乗せる。
「確かに私は今まで君を困らせてばかりだった。本当にすまないと思っている。」
真摯な態度で接されると、振り解く訳にも行かない。
夕鈴は態度を決めかねて手を取られたままだ。
「―――どうやら、私は心から愛しいと思う人には意地悪したくなる質らしい。」
捨てられた犬のような顔のまま、黎翔は彼女のほっそりとした手の甲に一瞬だけ、つぅっと密やかに長い指を滑らせた。
夕鈴を見つめる潤んだ瞳が、ほんのわずか妖しい艶を帯びる。
思わず頭を撫でたくなるような可愛らしさを眼前で見せつけられたまま、ぞくっとするようなささやかな刺激を同時に与えられた夕鈴は、湯気があがるかと思われるほど一気に顔を赤く染めた。
(なっ、なっ、なんなのこれは!?犬なの狼なの!?それに、この人今何て言った?いっ、愛しい人って何ーーー!?)
もはやどうしていいのか分からず、夕鈴は手を取られたままで完全にフリーズした。

目の前で繰り広げられる愉快な攻防に耐えきれず、浩大は吹き出した。
(すっげー凶悪!やっぱ元帥が本気だすとすげーわ。コレどうすんの、李順サン。この人ちっともゆっくり口説く気無いみたいよ?)
浩大が楽しげに目を輝かせる一方、李順は顔には出さないものの、いきなり展開された想像以上の接近戦に内心で臍を噛んだ。
(さすがは軍神、といったところでしょうか。夕鈴殿の馬鹿正直で人のいい所に付け込んで拒絶できないようにしつつ、恋愛に疎い彼女に自身の気持ちを直球でアピール……さらには自らの触りたいという欲求まで満たす戦略を組んでくるとはお見事ですよ。二人きりの時には実行せず我々がいるタイミングを選んだのも、恐らく彼女の警戒を和らげる為の布石ですね。そこまでしてぎりぎりの境界を攻めるとは、やはり恐ろしい人だ。―――ならば私もただ大人しく見ているというわけには参りませんよ、元帥閣下!)
もはや少しの予断も許さない戦況に、李順が動く。
「元帥閣下の真剣な気持ちは十分伝わったことでしょう。余りに長く手を触れていると夕鈴殿が困ってしまいますよ?」
にっこり微笑んだ李順と笑みを浮かべつつも冷ややかな黎翔の視線が、夕鈴を真ん中に空中で絡み合う。
そこに火花が散ったように見えたのは決して浩大の気のせいだけではないだろう。
一瞬の睨み合いの後、黎翔は薄く笑って夕鈴の手を離した。
「さて、君は何か要件が合って顔を出したのではなかったか?」
顔をのぞき込むように、穏やかに問う。
夕鈴はなんとか息を整え、赤面したままで答える。
「そう、なんです。あの……これ、克右さんにお礼をと思って、作ってきたんですが、克右さんってどちらにいらっしゃいますか?」
腕に下げていた紙袋から綺麗に包まれたマフィンを一つ取り出し、黎翔に見せる。
一瞬、紅い瞳に何とも言えない光が宿ったがすぐに優しい微笑みで覆い隠された。
「……克右なら私の考えた特別訓練の為、今日からしばらく留守にしている。克右は我が軍が誇る優秀な軍人だ。奴を失わない為にも訓練の積み重ねは重要だからな。」
夕鈴は、想像していなかった黎翔の言葉に驚いていた。
「ご自分でわざわざ……元帥閣下って意外と部下思いなんですね。」
見直したわ、と素直な彼女の表情が物語る。
浩大はまたしても吹き出し、李順は憐れむような目を遠くの空へ向けた。
―――今頃克右はどうしているだろうか。
「でも、しばらく留守だったら無駄になっちゃったなぁ。」
たくさん作ってしまったので自分だけでは食べきれない。夕鈴が溜め息をつきながら紙袋を見やると、その様子を黙って見ていた黎翔が声をかけた。
「私が食べても構わないだろうか?こんなに上手に出来たものを無駄にするのはしのびないし……」
「もちろん、お嫌でなければ!助かります。」
夕鈴は嬉しげに笑った。
やはり自分が作ったものを食べてもらえるのは嬉しいことだ。
浩大はその瞬間、黎翔の耳がほんのり赤く染まったのを見逃さなかった。
(良かったねー元帥。とりあえず笑ってもらえたじゃんか。)
「あ、もし良かったら浩大さんもどうですか?」
面白くて仕方ないといった様子で見ている浩大にも夕鈴は声をかけた。
「マジで?オレ作りたての菓子って好きなんだよねー!あ、あと面倒だからオレのことは浩大でイイよ。じゃあ早速……」
御相伴にあずかろうとしたその時、黎翔と目があった。
穏やかな微笑みを浮かべているが、にっこり細められたその目は
(お前にも特別サバイバル訓練のプログラムを組んでやろうか?)
と言っている。
浩大は慌てて後ずさった。
「あーでも今はお腹一杯かな!元帥閣下、朝からの会議終わりで腹ぺこなんじゃない?全部もらったら?」
「李順さんはいかがですか?」
「私も遠慮します。元帥閣下に全て差し上げて下さい。密林行きは御免ですしね。」
二人に促され、では、とマフィンを差し出した。
「庶民のおやつですので、口に合うか分かりませんけど……」
おずおず差し出されたそれを、黎翔は大切そうに受け取った。
「君が作ったものなら何でも嬉しい。」
心底嬉しそうな笑顔に、またしても頭が沸騰する。
「わ、私、お茶淹れてきます!」
夕鈴は逃げ出すように退出した。

(何なの!?絶対変よ。にこにこして、優しいことばっかり言って、意地悪ばっかりしてた元帥と別人じゃない……あーー、もう、何であんなにかわいく笑うのよ!!)
夕鈴は無性に腹が立っていた。
おそらくついついときめいてしまう自分自身に腹を立てているのだが、そんなことに狼狽える彼女が気付く訳もない。
「落ち着くのよ、汀 夕鈴。私は衛生兵のバイトよ、バイト。遊びに来てるんじゃないんだから、偉い人の気まぐれに一々狼狽えてちゃダメよ!」
ぶつぶつ呟きながら紅茶の準備を済ませ、すーはー深呼吸しながら執務室へ戻る。
黎翔は待ち切れなかったのか、応接用のソファに腰掛けてマフィンを頬張っていたところだった。
(だから、なんでそんなに嬉しそうなのよぅ……)
またしても赤くなる頬を持て余しつつ、夕鈴は黎翔の前にソーサーとカップを置こうと腰を屈めた。
その瞬間、くっ、と髪を優しく引かれ夕鈴の体がぎくりと強張った。
「美味しいな。こんなに美味しいものは初めて食べた。」
「そ、それは、良かったです……」
固まる夕鈴の顔のすぐ前、鼻先が触れ合う程の距離に黎翔の端正な顔がある。
そして思わず見惚れるような微笑みを浮かべ、狼元帥は甘く低く囁いた。
「出来ることなら、毎日こうして君の作った食事を摂りたいものだ。……勿論、君と一緒に。二人きりで。」
そして手に絡めた髪のひと房にそっと口づけを落とした。
その言葉と、吐息がかかる程の距離に、夕鈴の鼓動は跳ねあがって、頬は薔薇色に染まった。
(そ、そ、それって……また、永久就職のこと言ってるの……?)
度重なる狼の怒涛の進撃に。
ついに、夕鈴は切れた。
黎翔の手を振り払い、上からキッと睨みつける。
「もーーーー!!だから、私は絶対、絶対、ぜーーーーったい貴方の事なんか好きにならないんですからね!!!」
自分でもなぜこんなに怒っているのかよく分からないが、とにかくもう元帥の顔を見ていたくない。その一心で部屋を飛び出した。
(これ以上近くに居たら、心臓もたないわ。一体何なの!?狼元帥の、バカっっっ!!!)

執務室に残された黎翔は、夕鈴の走り去っていく後ろ姿を見ながら言った。
「あんなに赤い顔をして、涙目で罵られるとたまらんな。」
「……お願いですから自重して、適度な距離を保って下さいよ、閣下。」
溜息をつく李順と、もはや笑いすぎて腹痛を起こす浩大。
執務室には、甘く甘く、マフィンの香りが漂っていた。




後記。
もはや文章に書けないので1コマで。
その頃の克右さんは。

克右 訓練中

がんばれ兄さん!!

そしてやっと元帥が本来のスペックを生かし出しました。
仕事のできる男は本気出せば大体なんでもできる!はず!!
身の回りの美女を手に入れた仕事の出来る野獣たちは皆「押しの一手とマメな攻めだ!」と言ってた気がします。


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白陽帝国の花嫁 | コメント:2 |
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コメント

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2015-05-19 Tue 08:13 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
いやいや!いつもコメント文、可愛らしいなあと癒されております

克右さんを苛めたくなるのは…親愛的な何かですかね(嘘臭い)
一番まともで一番良い人だからこそブラック同盟としてはいじり倒したくなりますね(^_-)-☆
2015-05-19 Tue 18:47 | URL | rejea [ 編集 ]

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