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狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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白陽帝国の花嫁 3

パラレル「白陽帝国の花嫁」3話です。
サブタイトル「狼元帥、自覚する」

狼陛下と違ってがっかりな狼元帥が出てきます。苦手な方はスルーなさって下さい。

元帥を「暴れ狼」と呼んで下さった方がいらっしゃいました。
素晴らしい呼び名に恥じないよう、元帥にテコ入れしてみます。
このままでは夕鈴に嫌われたままなんで……




「それで真正直に『これなら太腿に触れる』って言っちゃって、怒られたってワケ!?ぶっ……マジでウケる!オレ笑い死にしそうっ。」
白陽帝国の最高権力者、珀 黎翔元帥の自室で、浩大は込み上げる笑いを止めることができずにいた。
「―――ならばすぐさま介錯してやろう。その首を差し出せ。」
「や、嘘っす嘘。本気で勘弁して下さい。」
腰に佩いた剣をすらりと引き抜き近づく黎翔から慌てて距離をとる。

珀 黎翔元帥直属の隠密部隊の隊員である浩大は、任務である敵地での諜報活動から戻ると未だかつてない程愉快な様相を呈する帝国軍本部の様子に胸を躍らせた。
どうやら、あの狼元帥がたかがバイトの小娘一人にぶんぶん振り回されているらしい。
嘆く李順から大体のあらましは聞いたものの、ここはやはり珀元帥本人に聞いてみないことには!と、報告のついでに聞きだしたら、それがまぁとんだお笑い草だったのだ。
どこの世界に『お姫様抱っこで合法的に太腿を触りたい』と言われて喜ぶ女がいるというのか。
その『合法お触り発言』はついに彼女を怒らせて、この二週間半径1メートル以内に入れてもらえないのだという。
この国の最高権力者を撥ね退けるバイト。かなり面白い人材のようである。
それにしても。
(この人普通のモテ方味わったことないから、ずれてんだよなぁ。
このまま放っとくってのも笑えるけど、それだと状況は変わりそうにないし。
ここはキビシー軍隊生活をさらに面白いものへと導くべく、浩大お兄さんがすこーし恋愛指南でもしてやるかねっと。)
にっこり微笑んだ浩大は両手を前にし、猛獣を宥めるような手つきで黎翔へと近づいた。
「そんなにイライラしてたら今度は怖がられてまたまた避けられちゃうよー?
オレ、ちょっとイイこと思いついたんですけど、聞きたくないっすか?」
「いいこととは何だ。」
ぶすっとした顔でどうにか剣を鞘へと納めた黎翔は浩大を疑わしそうに見つめる。
「どんな敵でも攻略するにはまず事前に調査しなくっちゃ。色恋だって同じことっすよ。」
そういいつつ懐から書類を取りだす。
ぴらぴらと指で弄びながら黎翔の机に差し出した。
「これは、夕鈴のバイト申請時の履歴書か。」
几帳面な字で学歴や家族構成、今までのバイト経歴がきっちりと書きこまれている。
「さっき李順サンに借りといて良かったわー。さて閣下、これ見てどう思う?」
「かわいい。」
貼られた証明写真を見て即答する黎翔に浩大はがくっと崩れた。
「そういうことじゃないって。ほら、ここ。彼女、弟とお父さんと三人暮らしなんだってサ。」
「ほう、だから何だ。」
「要するに弟の母親代わりしてきたってことだろ。さらには閣下がお色気で迫っても全く反応しないし、それどころか嫌がってる。」
びしっと黎翔の顔を指差し、浩大は告げた。
「つまり、彼女は母性本能をくすぐられるのに弱いとオレは見た!」
「……で?」
浩大は再度膝から崩れた。
やる気あんのかね、この御方は。
「で、じゃなくて。後は自分で考えて下さいよ。」
「……どうして良いか分からんからお前や李順に相談してるんだがな。」
ふぅ、と溜息をつきながら悩ましげに顎を手に乗せ黎翔はぼやいた。
どうやら本気で悩んでいるらしい表情を目にして浩大は嬉しくなった。
(なんだ、やっぱマジなんじゃん。おもしれー!)
「分からない、大いに結構じゃないっすか。今まで周りの女に対してそんな風に考え込んだり悩んだりしたことなかったんでしょ?
それはきっと閣下にとってイイことなんだとオレは思いますけどね。」
「分からないことが、か?」
納得のいかない様子の黎翔に、浩大は続けた。
「好きな娘に振り向いてもらうにはどうすればいいかアレコレ思い悩むってのも、大事なことなんじゃないすか。」

好きな娘。
黎翔は浩大の言葉を胸で反芻する。
夕鈴のことを考えると胸が暖かくなるような気がするし、視界に入ればいつの間にやら頬が緩んでくる。
他の男が彼女のすらりとした足を無遠慮に目にすれば殺してやりたいほど面白くないし、自分だけでずっと一人占めして見ていたいと思う。
最近は全く近寄らせてもらえなくてつまらない。
私は駄目なのに、李順とは親しげに会話する様も心底気に入らない。
もっとたくさん彼女の声を聞きたいし、触れたい。
それに、心からの笑顔が見たい。

「……あぁ!これが『好き』ということか。」
ぽん、と手を打って黎翔は腑に落ちたような顔をした。
「って、えぇ!?自覚無かったんすか??じゃ、何でわざわざ永久就職持ちかけたワケ?」
「いや、えげつない女を宛がわれて政略結婚させられるくらいなら、気が強くて面白くて気立てもいい足のキレイな子がいいなーと思って。」
あー、そうか私は彼女のことが好きだったのか、と呟く黎翔を別の生き物でも見るような目で浩大は見つめる。
(ホント、難儀なお人だなぁ。ま、もっと難儀なのはこの方に気に入られちゃった汀 夕鈴って娘、だけどな。
さてさて、自分の気持ちを自覚した狼はどう出るかね。)
履歴書の写真をちらりと見たとき、重厚な造りの扉が叩かれた音がした。




夕鈴は今日もせっせと衛生兵としてのバイトに勤しんでいた。
元帥専属とはいえ、それだけでは日中暇だ。自分から進んで共有部分の掃除も継続して行っている。
恐ろしく高い軍服が汚れないよう、作業着の時に身に着けていた何の飾りも無い白い木綿のエプロンを身につけ窓の清掃を行っていると、窓ガラスに見知った顔が映った。
「あ、貴方はあの時の軍人さん!」
「おや、あの時の清掃員の娘さんか。」
その優しそうな声音の背の高い男は、夕鈴がゴミを投げ捨てた大佐に喰ってかかった時に仲裁に入ってくれた人物だった。
「あの時はご親切にありがとうございました。私、汀 夕鈴と申します。」
ぺこりと頭を下げながら名前を名乗ると、男はやっぱりなあ、と言いながら笑った。
「俺は徐 克右。噂には聞いたけど、本当に君の事が気に入ったんだなあ、あの御方は。」
やはり自分のことは者笑いの種になっているのだろう。夕鈴はうんざりした。
「貴方も、私が元帥閣下専属のバイトだって知ってるんですね。」
「そりゃあ元帥閣下は娘さんを一目見たときから気にしてたし、俺はその場にいたしなぁ。なんだかんだで傍に置くような気はしてた。」
夕鈴は驚いた。いつの事だろうか。
「俺が仲裁に入った時だよ。あれは元帥閣下が大佐を止めろって指示したんだ。俺はそれに従っただけだからお礼なら元帥閣下に直接言わないとな。さすがにバイトの子が大佐にあんな口聞いたらただじゃ済まなかったろうから、あの方も心配されたんだろう。」
そういいつつぽんぽんと頭を撫でられた。
(元帥……そんな事一言も言ってなかったじゃない。)
一体珀元帥とはどんな人なのか。かれこれ二週間以上一緒にいるが、夕鈴にはまったく見えてこない。
恐ろしい狼元帥なのか、ただのセクハラ元帥なのか。それとも本当は、とても優しい人なのか。
夕鈴は下を向いて考え込んだ。
急に黙ってしまった夕鈴を覗き込むように、克右は屈んで視線を合わせた。
「気分でも悪いか?」
「あ、いえ!大丈夫です。」
「そうか。じゃあせっかくだから、一緒に元帥閣下のところへ顔を出してくれないか。その方が礼も言いやすいだろう?」
明るい笑顔を向けられ、夕鈴も自然と微笑んだ。
(すごくいい人。元帥もこんな風に明るくて優しい人だったら少しは楽だったのかしら。
……あの人といると、なんだか本当に心臓に悪いんだもの。)
そんな事を考えつつ二人で黎翔の自室へと向かう。
歩く間も取りとめのない話をする。夕鈴は久しぶりになんということのない会話を気楽に楽しんだ。

黎翔の自室の扉をノックして入ろうとした瞬間、夕鈴は躓き部屋の中へ倒れそうになる。
「きゃ……」
倒れると思った時には力強い腕に支えられ、引き起こされていた。
「おっと。大丈夫か娘さん。」
自然に手を貸してくれる克右に、夕鈴は照れたように微笑んだ。
「度々すみません、克右さん。」

そんな様子を中から見ていた浩大は思った。
(あーあ、コレってまずいよなぁ。
アイツ本気でタイミング悪い男だよな。)
そっと背後の黎翔を見やると、なんとも予想外の表情をしている。
これは、面白いことになる。
浩大の鋭い勘が全力で告げている。
「じゃ、閣下。オレはこれで。
今の克右も参考になるんじゃないすかね。後は、さっきオレが言ったことよーく考えて下さいよっ。
おい克右、死にたくなければお前も一緒に外、出ろ。」
「……なんだかその方が良さそうだな。
では元帥閣下、失礼します。」
様子のおかしい黎翔を一目見て、克右も浩大の言葉に素直に従った。
浩大は扉の所で摺れ違う夕鈴に声をかけた。
「アンタがお気に入りの衛生兵の夕鈴ちゃんだろ?
オレは浩大。よろしくなっ。
それで早速なんだけどサ、元帥閣下が具合悪いみたいよ。ちょっと看てやってね。」
一気に言うだけ言ってさっさと退出した。
さぁ、あとは若い二人にお任せだ。
楽しい予感に浩大は何となく浮かれた様子で、克右の鳩尾に一発拳を突きいれた。
「うげっ……お前、いきなり何するんだ。」
「あんまし不用意にアレに触るなよ。次やったら多分殺されるぜ。」
克右は、あーと小さく呟いた。
「もうそんなとこまで墜ちたか。」
「閣下が一方的にだけど。
ま、空気読めないお前のおかげで思ったより盛り上がるかもしれないけどな。」
こんなに楽しいのは久しぶりだ。
せいぜい狼をぶん回して、翻弄させてやってくれ。
浩大はこれからしばらく退屈しないですみそうだ、とニヤリと笑った。


後記。
もはや浩大と克右がセット扱いになってきてしまいました。
克右さんはなぜかいじりたくなります。書く度にしんどい目に合わせてしまいます。













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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-05-14 Thu 02:09 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-05-14 Thu 18:52 | | [ 編集 ]
Re:
あい様。
克右兄さん、書いてるうちにどんどん出番が増えました。
克右さんと付き合ったら普通に楽しそうですよね。
女の子に対して一番ちゃんとしてそうです。
浩大、やっぱりおいしいとこばっかりになっちゃいますね(^_^;)
もっと黒い浩大が書きたい!
2015-05-15 Fri 06:35 | URL | rejea [ 編集 ]
Re:
ゆらら様。
本能のままに突っ走ったらまた夕鈴にビンタされそうながっかり元帥ですが、もう少し効果的に迫ってくれないかと四苦八苦しています。
紅珠も頭の中ではぼんやり出番を考えてるんですが、ダラダラ書いてしまう悪い癖でちっともたどり着けません(ToT)
夕鈴とガールズトークしてもらいたいのでなんとかそこまでいきたいと思っています。
2015-05-15 Fri 06:43 | URL | rejea [ 編集 ]

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