星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

晦、妻籠

自分でタイトルつけといてなんなんですが、ナマムギナマゴメを思い出しましたrejeaです。
ひらがなで書くと「つごもり、つまごめ」なんですけど、もはや早口言葉にしか見えない。

年末ってなんだか寂しくなることあるよねっていう、ご夫婦設定のお話です。
でも気付いたら半分青慎くんの話になってました。
それでも読んで下さるという貴女さま、続きからどうぞ。




ちらちらと、垂れ込めた雲間から雪が舞い降りる。
少年はふう、と冷えかけた指先に息を吹きかけ、空を仰いだ。
冷たい風が路地を吹き抜け、枯葉がかさりと音を立てて灰色の空を舞っていく。
「あ、いたいた。青慎、お疲れ!」
呼び声に振り向けば、学問所の友人が手を振ってこちらに駆けてきた。
「あっという間に今年も終わっちゃうな」
「そうだね。年が明けたらまた試験もあるし、頑張らないと」
「そうだな。俺の家、普段は大したもの出ないけど、年始の料理だけは豪華だからさ。
試験に備えてこの機会にいっぱい食べて体力つけなきゃな!」
握り拳で意気込む友人に、青慎は笑う。
彼はいつでも気のいい、学問所のムードメーカーなのだ。
「お前も細いんだから、風邪引かないようにいっぱい食べろよ!
……って、そっか、お前の家、今、姉さんいないんだもんな。男二人じゃ大変だよな」
彼は口にしてから、しまったというように眉を下げた。
「母さんに言って、なんか持って行ってやるよ」
「ありがとう。でも、僕も普段から料理はしてるし、足りないものは屋台で買ってもいいし、大丈夫だよ」
友人にありがとうと手を振り、青慎は家路についた。
道すがら、通りを行き交う人々に目を向ければ、皆忙しげに、でもどこか楽しげに年始の飾りや食材を買い込み歩いている。
「…そう言えば、姉さんもこの時期はいつも忙しそうだったなぁ」
細い腕に、掃除道具やら大根やら飾りやらを抱えて走り回っていた姉を思い出して、彼はふう、と一つ息を吐いた。
瞼の裏に、くるくると立ち働く姉の姿が浮かぶ。
つん、と痛んだ鼻の奥を寒さのせいにして、青慎は家路を急いだ。


「……ただいま」
父もまだ帰らない、明かりのつかない我が家の戸を空けた途端、青慎は大きな目をしばたたいた。
鼻をくすぐる、嗅ぎ慣れた匂い。
これは、姉得意の鶏料理の甘い香りだ。
慌てて明かりに火を灯して辺りに目をやれば、卓の上に大きな箱が三段重ねで積まれている。
中を見れば、よく見知った料理がずらりと敷き詰められていた。

青慎の好きな甘辛く煮付けた鶏に、砂糖をまぶした揚げ餅。
父が酒の肴に最高だと言ってはつまんでいた、香味野菜を効かせた魚の姿煮。
花の形に整えられた根菜に、きつね色の春巻き。
きれいにひだの寄せられた、たくさんの餃子――――

どれもこれも、姉が毎年、年の瀬に用意してくれたものばかりだ。
「いつの間に、こんなに……」
箱の横に小さく折りたたまれた紙が添えられているのに気付いて開いてみれば、姉の字で餃子はこうして食べろ、とか、饅頭はふかし直してから食べた方がいいとか、走り書きでびっしりと注意が書かれている。
料理のことに散々触れたあと、青慎の身体を心配し、父の遊蕩に釘を差すそれに、青慎は思わず噴き出した。
「相変わらずだなぁ、姉さん」
走り書きのような字を見ると、どうやら急いでしたためられたようで、自分のことは最後に一行、
私は大丈夫!心配しないで。
とだけ、書かれている。
「……本当に、姉さんらしいや」
青慎は、その手紙をそっと指先でなぞってから、竈に火を入れた。
きっと父も目を丸くして驚くだろう。
ふ、と笑う青慎の頬を、竈の火が暖かく照らしている。



「それでですね、餃子を大量に包むのに結構時間がかかっちゃって。
でも、青慎が好きな揚げ餅も入れてあげられたし……
あっ、もちろん陛下の分もとってありますからね!」
にこにこと、楽しげに準備した料理について語る夕鈴に、黎翔は微笑んで頷いてみせる。
毒見役(という名のつまみ食い担当)兼、宅配係の浩大によれば、それはもう獅子奮迅といった様子であったそうだ。
「いや、ホントすげーのなんのって。あっという間に何品作ったんだろ。
お妃ちゃんって、やっぱ料理好きなんだなぁ」


彼女が臨時妃だった時分、黎翔はそんな彼女の様子を間近で見るのがことのほか好きだった。
生き生きと、飛び回るかのように立ち働く彼女の姿は生命力に満ち溢れて、可愛くて、見ているだけでこちらも楽しかった。
けれど今はそれだけでなく、後ろめたさと、少しの寂しさを覚えずにはいられない。
夕鈴が、夕鈴らしくのびのびと生きる道を奪ったこと。
後宮に、自らの側に、無理をさせて縛り付けていること。
夕鈴が最も輝くのは、やはり外の明るい世界なのだということ。
それらを改めて感じずにはいられないのだ。

「ごめんね、本当は里帰りさせてあげられれば良かったんだけど」
「いえ、そんな!台所を使わせてもらえただけで嬉しいです。本当はこんなこと出来ないんでしょうし」
夕鈴はぶんぶんと手を振った。
「家族に会えないのは、もう決心してきてますし。
それに、その、陛下が、早く帰ってきてくれましたから……」
耳まで赤くしながら嬉しいです、と笑う夕鈴の優しさに甘える自分に、黎翔は苦笑した。
「―――狡いな、私も」
「え?なんですか?」
「ううん。本当なら家族団欒で過ごす日に、こんなにかわいいお嫁さんを独り占めして、僕は狡い男だなあって」
そう言って、黎翔はあっという間に夕鈴を膝の上に抱え上げた。
「ぎゃっ、もう!なんですかそれ!
それに陛下が狡いのなんて、ずーっと前からそうじゃないですか」
膝の上で何やらむくれる兎に、黎翔はぱちぱちと瞬きした。
「え?そう?」
「いっつも私ばっかりどきどきして。
……陛下は、いつだって狡い、です」
それに、と続けて彼女は形の良い唇をなおも尖らせた。
「家族団欒って他人事みたいに。
私と陛下だって、夫婦なんだから。今だって家族団欒、でしょう?」
そう言ってぽすん、と胸元に顔を隠す彼女の温かさが、体中を包み込むようだった。

黎翔は彼女を抱く手にそっと力を込めた。
「ねぇ、夕鈴。僕の名前、呼んで」
「へっ!?今、ですか?ど、どうしても?」
「うん。今。どうしても。
僕が夕鈴のものなんだって、ちゃんとわからせて」
そう言って覗きこむ夫の顔は、口調は小犬なのに、どこか狼の気配を纏っている。
騒ぐ胸を服の上から押さえつけて、夕鈴は必死に名を紡ぐ。

積り始めた雪が辺りの音を吸い取り、怖いくらいに静まりかえっている。
互いの名を紡ぐ声が密やかに響く、そんな晦の夜。
愛しい妃を腕の中に閉じ込めたまま、黎翔はそっと口づけを落とした。
夕鈴への、言葉にできないほどの感謝を込めて。






後記。
本年も偏ったブログに足を運んで頂きまして、ありがとうございました。
来年も、なにか書けたらいいなと思っております。
色々持ち越してますし、ええ……

皆様、よいお年を。
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両想い設定 | コメント:13 |
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コメント

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2016-12-29 Thu 01:04 | | [ 編集 ]
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2016-12-29 Thu 08:36 | | [ 編集 ]
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2016-12-29 Thu 20:02 | | [ 編集 ]
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2016-12-31 Sat 12:10 | | [ 編集 ]
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2017-01-03 Tue 08:37 | | [ 編集 ]
もも様。

コメントありがとうございます!
そしてフミフミ嬉しいです~♪
こちらこそよろしくお願い致します( ´∀`)

妻籠…本当はもっと色っぽい話に使うべき単語なのに、私が書くと物理的に閉じ込めた話にw
タイトルを「妻籠(物理)」にしておけばよかったかもしれない!と今さら閃きました。

2017-01-04 Wed 18:32 | URL | rejea [ 編集 ]
あい様。

青慎、可愛いですよね!実は大人だし。
息子がいる身としては、年末ぽつんとしてる青慎くんが気になって気になって(^_^;)

最近甘い話を全く書けない病に冒されているので、あい様、糖分を下さい( ´∀` )b←年始から人任せ
2017-01-04 Wed 18:36 | URL | rejea [ 編集 ]
ゆらら様。

こちらこそ、本年もよろしくお願い致します!

何だか私、可哀想な陛下が好きみたいで…
最近こうして悩んでる陛下ばっかり書いてる気がします。
そして懲りずにきっとまた書きますw
2017-01-04 Wed 20:44 | URL | rejea [ 編集 ]
花愛様。

こちらこそ本年もよろしくお願いします♪( ´ ▽ ` )ノ

こ、更新ぼちぼちがんばります……
えーと、気長にお待ち頂けると嬉しいです←頑張れよ
2017-01-04 Wed 20:47 | URL | rejea [ 編集 ]
あい様。

ふおーっ!ありがとうございますっ!
わざわざ早起きまでしてくださるなんて(。´Д⊂)ほろり

なんかPCあさって送りつけますっ←答えを聞かずに押し付ける系
2017-01-04 Wed 20:49 | URL | rejea [ 編集 ]
くれは様。

お忙しい年末だったのですね。
主婦の鏡ですなっ!
え?私は実家でごろごろしてました\(^_^)/←主婦を名乗ってはいけない人種

本年もよろしくお願い致します♪
あ、きっと陛下は夕鈴があーんして餃子とか食べさせてくれたんじゃないかと思います( ´∀`)
2017-01-04 Wed 20:53 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017-01-21 Sat 09:37 | | [ 編集 ]
あい様。

ありがとうございます♪
そしてピュアピュアもありがとうございましたーーーーっ
いや、本当ねだって良かった←厚かましい
何もお返し出来ず申し訳ないです。

いつか何かしらお返し出来たら!という心持ちで岩海苔と化しています‼
2017-01-21 Sat 17:29 | URL | rejea [ 編集 ]

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