星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

伴星  ~螺旋~

こんにちは。
最も初期のあたりからご来訪頂いている方はご存知かもしれませんが、久しぶりに天狼星シリーズです。
すなわち、夕鈴不在、過去捏造だらけの北の男祭りです。
いちゃいちゃも、ほんわかも存在しませんごめんなさい!

今回は、陛下のお兄さん視点になります。
暗いし、かなりの胸クソ話です。死ネタもあります。
苦手だと思われた方は遠慮なく、かつ容赦なくスルーして下さるようお願い申し上げます。
なお、本誌を読んだ上で妄想しております。
直接的なネタバレはございませんが、ご注意下さい。


陛下のお兄さんは「なぜこんなにも陛下を殺したいのか」。
酒色に走り続けた彼は、一体どんなひとだったのか。
壬州視察の際の「王の周りの女たちは皆不幸になった」という趣旨の克右の発言。
自らの子が王位についたことは『正妃』にとって決して不幸ではなかったはず。
なのになぜ、彼は彼女に対しても不幸という言葉を使ったのか。
上記を基に妄想しております。


では、どうぞ。



「螺旋」



「―――あの者の首は、まだですか。早く、早く、わたくしに首を持ってきて」
檻にきつく絡み付く指の先は、血の気などとっくに失せている。
眼だけをぎらぎらと光らせ、いつもと変わらぬ台詞を吐きつつ唾を飛ばす母に、私もいつもと変わらぬ応えを反す。
「申し訳ありません母上。此度も首はご用意できませんでした」
「なぜです、なぜ、早くあの者を殺さないの。
あの女が死んだのだから、あの子供を殺しさえすれば、今度こそ陛下がわたくしのところへ帰ってくる。そうでしょう?」
「母上。父上は、死にました。ご存じでしょう。……あれを殺したところで戻ってはこないのです」
何度も何度も。
飽きるほど言い聞かせても、もう母の耳に私の言葉が届くことはない。
「ねえ、今度こそ陛下はわたくしのところに戻ってくるわ。楽しみね」
母の声が、牢越しに空しく響く。




美しく、気品に溢れた母の姿は幼いながらに私の誇りだった。
国王である立派な父と、美しい母。
その長子として生まれた自分の役割も十分理解していた。
それで良かった。
例え、他の親子のように近しい距離でなくても、それは王家の者として、国を統べる者としての在り方なのだと思っていたから。
あの日、父のあの眼を見さえしなければ。
母も私も違う形でここに在れただろう。
舞姫とその息子に向けられる、父の温かな眼。
私には一度もかけられたことのないその情。
それは、母の最期の自尊心を打ち砕くには十分過ぎた。

「わたくしのことはもういい。けれど、この子はこの国を継ぐ子ではありませんか。
正しい血筋の、次代の王たる子です。それを、それを―――」

涙ながらに繰り返される母の言葉は、心の中に折り重なって降り積もる。
そうか、私は愛されぬ子だったのだ。
愛されぬ母と、愛されぬ子。
それが正妃と第一皇子の身分を剥ぎ取った後の私たちだ。
やっと浮かんだ答えは、単純でいっそ明快だった。



舞姫が死んだ後、父も後を追うように亡くなった。
最後まで口にしたのは彼女の名だったと、私は人づてに聞いた。
そして、その知らせに、母はとうとう心を狂わせた。
日に日にやせ衰え、かつての美貌など見る影もなくなった母が、鉄格子にしがみ付きながら願うのは、ひとつだけ。
黎翔を殺して。
それだけだった。





何人目なのかわからない女の汗と白粉臭い体から、だるい体を引き剥す。
小卓に置かれた杯に手を伸ばし、残っていた酒を流し込む。
王宮での政務の状況を報告する次官に、何事も良きに計らうようにと告げて、寝台に重い体を伏せる。
私を見る高官どもの目線がうっとおしくて、ここのところは王宮に姿すら見せていない。
奴等の愚王としての私を期待する眼差し。私欲を満たすためだけの実のないやりとり。
父のような英明さもない。
身分賤しい女の息子にこそ、その才気は引き継がれたのだと、ずっと昔から囁かれていたことも知っている。
ならば、いっそ奴等の望む愚王であればいい。
そして私の居ない王宮で、せいぜい互いに身を食らい合えばいい。
沈み行くこの国とともに、お前たちも沈んでしまえ。
私と母は、あの日からずっと出口の無い薄暗い螺旋を歩き続けているのだ。
ぐるぐると、あてもなく。
今さら、どこに行けるというのだろうか。





黎翔。
父の血を、色濃く継いだ弟。
あの紅い瞳を思い出す度に父の眼が過って落ち付かないのは、母だけでなく私も同じだった。
だからこそ、気の狂った母の願いを叶えるという名目で刺客を送り続けた。
何度殺そうとしても生き延びるあれを、年若くして辺境の前線に追いやった。
今度こそ息絶えてくれと、酒で濁った頭で祈りながら。

それでも。
どうやら、先に命が尽きるのは私の方であったらしい。
いつかはこうなるのだと、心のどこかで思っていたのかもしれない。
酒に混ぜられた毒に、喉が焼けるような痛みを覚えて胸を掻きむしりながら崩れ落ちる。
呼吸が出来ず、肺に空気が入らない。
死ぬのだ。
そう思った時に、脳裏に過ったのは父の紅い瞳だった。
―――ああ、やっとこれから逃れることができる。
それなら死ぬのも悪くはない。




なあ、黎翔。
今度はお前が、この薄暗い螺旋に捕われればいい。
延々と、あてもなく。
我等兄弟は、あの紅い瞳に囚われた、血のつながった同胞なのだから。




終。





後記。
お読み頂きありがとうございました。
陛下のお兄さんにも、色々思うことはあったんじゃないかなぁと。
あ、因みにお兄さんを毒殺したのは氾・柳・周の三人です。

しかし暗い!!
萌えねえ!!
ごめんなさい!!!







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天狼星 | コメント:8 |
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コメント

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2016-09-11 Sun 12:55 | | [ 編集 ]
こういうお話大好きです~。

私も、兄王が何故そこまで陛下の死に拘るのか、色々妄想してる中で、正妃の怨念というのもあるのではないか、と思ってましたんで。
気に恐ろしきは女の執念とやらですもんね。

しかも、辺境に追いやった後に寵愛?したのが蘭瑶さんという、おそらく陛下のお母さんとは真逆のタイプの方で。
閉塞し凝り固まった思いの矛先は、舞姫とその子供に向かったんだろうなあ、と。

最新号の絵を見てるとキャラのSD化が多かった炎波国編よりも若干線が細くなってきたんで、シリアス過去編期待できるかな?と思ってるんです♪
2016-09-12 Mon 11:16 | URL | novello [ 編集 ]
あい様。

あい様のためならば、夜更けにせっせと書きます(笑)
え?好きにしていいんですか?いいんですね!?

つんつんつんつんつんつん(*´∀`)σ)∀`)
↑とりあえずひたすらつつくというセクハラ


しかしこれでそんなに喜んで下さるなんて、菩薩かな?
菩薩なのかな?( T∀T)
ありがとうございます!
2016-09-13 Tue 17:44 | URL | rejea [ 編集 ]
novello様。

まさかの、ここにも気に入って頂けたお方が!!
ありがとうございます(*´▽`*)

私のなかでは、蘭瑤さまってお父さまにとっては舞姫を失ったあとの穴埋め、代替品みたいなイメージなんですよねぇ。
なんというか、あの人たち満たされてない感じがするので。
正妃もそれに気付いているからこそ、舞姫と陛下に怒りが向く、みたいなイメージで書いてました。
惜しむらくは描写力のなさ(笑)


シリアス過去編欲しいですよね。
陛下の闇部分に迫るのって、大半の読者さまは嫌なのでしょうかね??
私は待ってます‼
2016-09-13 Tue 17:56 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-09-18 Sun 12:26 | | [ 編集 ]
あい様。

そんなおそれ多い呼び名は受け取れないですわ~っっ(TAT)
天罰が下る気がする!

でも菩薩は押しつけます。あ、天使でもいいです。


ああ、またしてもカウンターが私の機動を大幅に上回っている!!
ごめんない&ありがとうございます♪
こっそりのんびりSSもラクガキまんがも制作中です。
いつになるかな……
2016-09-20 Tue 21:18 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-10-02 Sun 01:28 | | [ 編集 ]
あい様。

コメントありがとうございます~~~!
更新してない期間が20日だと……!?
って、自分ですんごい驚きました(@_@;)
さらには何もできあがってない……だと……!?←もう殴って下さい

あまりにもアレなので、なにかしら経過報告でもあげようかな、なんて思ってます……
2016-10-02 Sun 20:16 | URL | rejea [ 編集 ]

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