星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

ただ、蒼く

ご来訪ありがとうございます!
さて、久しく書く書く詐欺をはたらいておりました瑠霞さまの過去捏造話です。
久々のSSがまたサブキャラの捏造かよって思った方、私もです!( ´Д`)スイマセン


以下、設定ご注意です。
蒼玉国のほぼ全てを捏造しています
瑠霞さまのお相手を捏造しています
当時の後宮の様子を捏造しています
そう、ここには捏造しかないです!
そして全編シリアス寄りでございます。
甘くない。甘くないのですよ……OTZ
さらには私の謎のこだわりで、お相手の男性の名前は決めておりません。
つまり読みにくい!ごめんなさい!
そんなわけで、何でも大丈夫な方は続きへお進み下さい。







暴力的なまでに抜ける青空と、潮の香を孕んだ熱い風。
そしてどこまでも続く海原。
蒼く。呆れるほどただ、蒼く。
私は彼に、それを見た。




「ただ、蒼く 1」



回廊の端で、瘧にでもかかったかのように震える侍女の肩に、瑠霞はそっと手を置いた。
「ごきげんよう、黎翔さま」
侍女の向かいには、艶やかな黒髪の小さな頭。
こちらを見上げる紅い瞳は、いつ見ても兄によく似ている。
「あら、そんな大きなお菓子なんていただいたら、食事がお腹に入らなくってよ?」
彼に向かって差し出されていた菓子を、侍女の手からひょいと取り上げる。
自分の帯に挟んでいた干菓子の包みを取りだし、代わりに小さな手の上に乗せてやる。
「これくらいなら母君も心配なさらないでしょう。ご一緒に召し上がっておいでなさいな」
小さくこくりと頷いた彼の足音が完全に遠ざかってから、瑠霞は侍女の目を見て囁いた。
「『これ』は私が処分しておくわ。
今後同じようなことがあったら、誰にも見つからないように管理人の張元に相談なさい。
あの人なら悪いようにはしないわ」
侍女は涙を浮かべ、ありがとうございますと、絞りだすように告げて頭を下げた。
彼女はここで働くようになって間もない。
断り方も誤魔化し方も知らない相手を選んである辺りが、これを寄こした相手の厭らしさを物語っていた。
食べ物に混ぜられた虫の死骸や髪の毛。果ては体調を崩す、何らかの薬まで。
国王の寵妃である舞姫の元へそういったものが差し向けられるのは、今や珍しくもなくなっていた。
瑠霞は素早く菓子を袖裏に押し込め、頭を下げ続ける侍女に背を向けた。


瑠霞がまだ幼かった頃は、後宮は表向き穏やかだった。
正妃を頂点とした、秩序を保った箱庭に異変が起きたのは、一人の女性がここへやって来てからだ。
舞姫様。
彼女に初めて会ったときの新鮮な驚きを、瑠霞はよく覚えている。
今まで会ったどの女の人よりもしなやかで、裏表のない笑顔を向けてくれたひと。
彼女からは、どこか外の風の香りがした。
兄が惹かれたのも無理はないと、幼心にそう思った。
それほど、彼女は魅力的な人だったから。
それでも、時が流れる毎に増す寵愛に比例するように、後宮の歪みは隠しようが無い程に大きくなっていった。
王の寵愛が、複数に向けられるならまだよかったのかもしれない。
だが兄が、あの冷たい紅い瞳に暖かな光を宿すのは、どれだけ時が経とうとも舞姫と相対する時のみだった。
その様は先にこの箱庭に据えられた妃たちにとって、どれ程恨めしく、妬ましかったことだろう。
後宮は日に日に荒んだ。
美しかった妃たちの顔が、日に日に醜く歪んでいく様子を間近で見続けた瑠霞は、幼い頃から後宮という場所の業をつぶさに見届けてきたのだ。


回廊を突っ切って、後宮の庭へ抜ける。
木々の間をくぐり抜け、誰の目にも留まらず端の端まで来ると、瑠霞は深く息を吐いた。
その辺りの木の枝で地面を掘って菓子を埋め、膝に着いた土を払う。
兄がやっと見出だした愛情は、周りを傷付けるだけのものなのかもしれない。
だが、それでも瑠霞は兄の行いを咎める気にはならなかった。
その行い全てが正しいとは言えなくとも、妹である自分だけは二人の気持ちを否定してはいけないのだと、彼女は半ば意地を張るように自らに言い聞かせていた。
愛は、本来素晴らしいものであるはずなのだから。


そのまま後宮から王宮の裏手へと続く小道を歩む。
この辺りは滅多に人が来ない、瑠霞の秘密の場所である。
梢の上に見え隠れする王宮の甍の波を、瑠霞は睨むように見据える。
もしも男として生まれてさえいれば。
きっとどんな手を使ってでも、心から愛しいと思える相手を自分の力で手に入れたろう。
王宮に蠢く謀に、正面から相対することが出来る立場であったなら。
それの叶わぬ女の身が悔しくなるのはこんな時だ。
瑠霞は今年で十六。かわし続けたきた縁談も、もう言い逃れが出来ない年齢になってしまった。

貴女はこの世の何よりも美しい。
その、紅い玉石のような瞳に、自分だけを映したい。
もしも貴女と添い遂げられなければ、苦しさに死んでしまうでしょう。
貴女を、愛しているのです。
貴方だけが、欲しいのです。

「……くだらないわ」
毎日のように届く求婚の文には、どれもこれも瑠霞からすれば同じ言葉だけが踊っていた。
彼らが欲しているのは、瑠霞自身ではない。
国王の妹である瑠霞の「立場」を欲しているのだ。
それを見え透いた美辞麗句で薄っぺらく包んで、愛を語ることのうそ寒さに、瑠霞はいっそ吐き気すら覚えていた。
後宮が揺らぐことで、王宮の情勢も今や楽観視できる状態ではない。
瑠霞に求められるのは、有力な貴族と王家の結びつきを強めること。
すなわち、王家の益となる相手に嫁ぐ、それだった。
だが、瑠霞はどうしても納得できずにいた。
高慢な姫であると陰口を叩かれても、この年になるまで縁談を退け続けてきたのは、どうしても生涯を共にする伴侶を自らの手で見つけてみたかったからだ。
それでも、瑠霞以外の王家の子女たちは勢力争いの波に逆らうことなく他家に嫁ぎ、各々の務めを果たしてきた。
瑠霞の周りの女性たちも皆、王の寵愛を得るという使命のために後宮へとやって来た者ばかり。
そんな中で、唯一兄が見つけ出した愛は、ただいたずらに平和を乱し、王宮の情勢を乱すものだと断罪される。
それが当たり前だとされる世界の中で、まるで自分一人がおかしくなってしまったかのようだった。
瑠霞は、押さえきれない苛立ちに、思わず足元にあった石くれを掴んで、思い切り放り投げた。



「……どなたか、いらっしゃるのですか」
ぼちゃりと、庭園を流れる清水が跳ね上がる音がした後に、控えめな声がした。
あまりに予想外のことに、瑠霞は柄にもなく慌てた。
まさかこんな王宮の庭の外れも外れに人がいるなど、思いもしなかったのだ。
「ごめんなさい、水が跳ねてしまったかしら」
木陰からそっと様子を伺えば、そこには一人の男が立っていた。
色素の薄い髪を頭上で纏め、目の覚める様な蒼い衣裳を身につけている。
その形も、腰に巻いた帯に成された刺繍も、あまり見かけたことのない風変わりなものだった。
「いえ、お気になさらず。幸い水はかかりませんでしたので」
言葉も、意味は確かに通じるものの、どこか耳慣れない発音に聞こえる。
「……もしかして、遠方の国から来ているという使節団の方?」
確か、昨今急激に力を付けてきた遥か南方の国から、初めての使者が来たのだと聞いた気がする。
瑠霞の問いに、彼は静かに頷く。
「蒼玉という国より参りました」
どうも、おかしな男だ。
使節団の人間が、なぜ一人でこんなところをうろうろと歩きまわっているのだろう。
瑠霞の訝しげな視線に気付いた彼は、目線を清水へと向けた。
「このような庭園様式は我が国には無いものでしたので、間近で見てみたかったのですよ」
その目は、水面の光を反射して青く光った。
「これはどこかから水を引いているのですか」
「え、ええ。王宮の北方にある湧水を、庭園を抜けて流れるようにしてあるの。
穢れを祓う、まじないのようなものね」
「それは、興味深い」
彼はしげしげと上流を眺め、また視線を流れに沿わせて下流へと向ける。
まるで瑠霞のことなどあまり気にしていないようだ。
(……なんというか、妙なひとね)
今まで、瑠霞に会ってまずその容姿を湛えない男はいなかった。
実際、瑠霞は輝くような美貌の持ち主であるのだか、彼女に限ったことではなく、女性への賛美の言葉は、貴族にとっては必要な立ち居振る舞いの一つでもある。
それを、この男はどうしたものか。
瑠霞よりも、目の前を流れる小川の方がよっぽど大事であるらしい。
「清水もですが、庭木も我が国とは大分違いますね」
暫く水面と向き合っていた彼は、今度は庭園の樹木に視線を移す。 
「そんなに違うものかしら」
半ば面食らいながらこぼした瑠霞の問いとも言えない問いに、彼は頷いた。
「やはり、気候の違いなのでしょう。花も葉も様子が違います」
聞けば、蒼玉の草木はもっと色濃く、花も鮮烈な色合いのものが多いという。
「陽の光も、この国よりもっと容赦のない激しいものですので、植物も自然、色濃くなるのでしょう」
なんとも情緒のない描写である。
この物言いでは、使節団の一員としては満足な働きも出来ないのではなかろうか。
「貴方、使節団の方なのにこんなところをほっつき歩いていていいの?」
半ば呆れたような瑠霞の言葉に、彼は軽く肩を竦めた。
「私はご覧の通りの不調法者ですので、専ら書類仕事が中心です。今は上司が白陽国の御歴々と語らっておりますので、手持ち無沙汰なのですよ」
瑠霞は自国の接待役の面々を思い浮かべてなるほど、と呟いた。
彼らは自身の昇進に繋がることにしか興味がない。
格式や文化を重んじる白陽の王宮では、この風変わりな人は確実に浮きまくったことだろう。
つまり、彼等にとっては関わっても旨味のない相手だというわけだ。
「ロクな接待も出来ていないようで、お恥ずかしいことだわ」
「いえ、私も彼らが望むような応対は不得手ですし。
それに私としても、実の無い会話で時間をいたずらに割くよりも、こうしてこの国の様子をもっと間近で見ていたい」
そう言って彼はうっすらと笑った。
「それよりも、姫君ともあろう方がお一人で出歩いている方が私としては驚きです」
瑠霞は切れ長の瞳を瞬いた。
「……貴方、気付いてたの」
「ええ。拝謁させて頂いた国王陛下によく似ておられます」
瑠霞は彼への評価を改めた。
変わり者ではあるものの、どうやら頭が悪いわけでも勘が悪いわけでもなさそうだ。
「それにお若い貴族の方々の間で、貴女は注目の的であられる」
「あぁ、どうせ我儘気儘な姫だとでも聞いたのでしょう?
まあ、その噂どおりよ。だからこそ、こうして一人でふらふらしているわけだけど」
苦笑する瑠霞を正面から捉えて、彼は静かに口を開いた。
「気儘な姫君だと言われる割に、貴女は随分と苛烈な瞳をなさるのですね」
まるで今日の天気について語るように、彼はさらりとそう口にした。
瑠霞は、暫し目を見開いて男の顔を見つめたあと、身を折って笑った。
「……ふっ、あははははは!貴方、面白いひとね。
男性にそんな風に言われたのは初めてだわ」
瑠霞はひとしきり笑うと、目の端に浮いた涙を指で浚った。
「ねぇ、貴方、明日も同じような時間にここに来れる?」
「ええ」
「なら、私に貴方の国のことを教えなさい。
代わりに私は貴方に白陽国の生活や伝統、文化について話してあげる」
「こちらとしては助かりますが……私のような者が相手でよろしいのですか?」
驚いたようすの彼に、悪戯っぽく瑠霞は笑った。
「最近、イライラしていたから目新しい話が聞きたかったの。頼めるわね?」
「はい、承りました」


綺麗に頭を下げる彼に、にっと一つ微笑んで、瑠霞は後宮へと踵を返した。
この瞳を玉石に例える男や、美しいと誉めたたえる男は数限りなくいたけれど。
(苛烈、ですって。女性に、しかも一国の姫に向かって……)
思い返して瑠霞はまたふっと笑みを零した。
自分を相手に、取り入ろうともせず、媚びへつらうわけでもない。
今までそんな相手と出会ったことなど、あっただろうか。
それは、彼女にとっては何か新しいおもちゃを見つけでもしたような―――どこか、心躍る出会いであった。






後記。
続きます!

お相手は皆様の想像と違っておりましたでしょうか??
瑠霞さまのお相手を書くなら、
①優しくおだやかな、どちらかと言えば地味な人
②理系男子っぽい、真面目だけどちょっと変わり者
の二択だったのですが、あえて変な方にしてみました←ほら、私ってひねくれてるから……

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瑠霞 | コメント:12 |
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コメント

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2016-11-04 Fri 01:25 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-11-05 Sat 01:43 | | [ 編集 ]
私も②を選択しますけど?←
もしくは両方絡めて… んな事はどうでもよろしい!
rejea様?ツボですよツボ!(壺では御座いません)なんですか?この隙間補充感。流石です(#^.^#)
つづき…待ってます。。。いつまでも待ちますが。。。。卒園後とか止めてね(笑)秋も行事が目白押しよね~…流行り病と←
2016-11-05 Sat 11:13 | URL | 行 [ 編集 ]
やっぱりrejea様のSSは面白い。
久しぶりに新作が読めて嬉しいです。
瑠霞姫なら①だけでは、物足りないというか惹かれないでしょう。
なので、私も②かしら?と。

続きを楽しみにしています!
2016-11-07 Mon 08:45 | URL | novello [ 編集 ]
この話好きです!誰も書いてないですけど、瑠霞様の話読みたいなーと思ってました。私にとってもツボです。
rejea様の話は読みやすく、どこか遊び心もあるので、スラスラっと入って来ます(о´∀`о)
続きお待ちしてますよー
2016-11-09 Wed 19:08 | URL | まるねこ [ 編集 ]
あい様。
うふふ、甘くない話をこれからもお届けします←いや甘くしろよ
変わり者に惹かれちゃう自分に戸惑う瑠霞さまが書きたいなあーという自分の欲望から、こんな感じになってたりもします(笑)
青臭く足掻く瑠霞さまが可愛く書けたらいいんですけど……

私の書く瑠霞さまはたぶん案外チョロいですσ(^_^;)
どーしよ……
2016-11-13 Sun 23:32 | URL | rejea [ 編集 ]
ゆらら様。
ありがとうございます!
お互いに遭遇したことのない珍獣と出会った感じかもしれませんね(笑)
瑠霞さまも嵐のようなお姫さまですし、かたや姫君相手に愛想もくそもない変わり者……
好きになるきっかけは何なんだろうかと、書いている私もまだよく分かりません\(^_^)/
2016-11-13 Sun 23:37 | URL | rejea [ 編集 ]
行様。
そう、このブログは隙間産業です!
甘さは期待してはいけません(笑)
そんなわけでツボって頂ける方は貴重なのですありがとうございます!!

卒園後……まっさかーぁ( ´∀`)って思ったけど、絶対無いって言い切れない自分が怖いです((( ;゚Д゚)))
2016-11-13 Sun 23:40 | URL | rejea [ 編集 ]
novello様。
おっ、②仲間さんですか!?嬉しいです♪
瑠霞さまって変な人好きそうですよね、濃い人というか←偏見
御本人が一筋縄ではいかないだけにそんな気がしてしまう……
愛情表現が分かりにくい人だから、瑠霞さまも飽きさせないような工夫をこらしたりしてるのかなー、なんて。

続きも面白いと思って頂けるように頑張ります‼
2016-11-13 Sun 23:47 | URL | rejea [ 編集 ]
まるねこ様。
気に入って頂けて嬉しいです♪
私も瑠霞さまの恋愛話読みたいなあと前から思っていたので、自給自足してみました。
謎に包まれてるのをいいことに、やりたい放題です!
嫌な奴とかも出してみたいなーとか、瑠霞さま暴れさせたいなーとか。

続き、頑張ります( *・ω・)ノ
2016-11-13 Sun 23:50 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-11-15 Tue 17:07 | | [ 編集 ]
あい様。
ありがとうございます♪
しっかし、アルバムもSSも何も進んでいないとは我ながら驚きですよ…
そして仕事のモチベーションもだだ下がるww
毎日しんどいOTZ
なんかテンションあがるようなことを探さなきゃ(^_^;)
2016-11-19 Sat 16:46 | URL | rejea [ 編集 ]

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