星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

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天狼星 7  天狼星

注)シリアスな上に甘くなく、且つ設定をねつ造しております。
苦手な方はスルーなさってください。
詳しい設定はこちら→ 天狼星について


白陽国王宮。
氾 史晴は回廊を歩きつつ、ちらりと後宮の甍を見やった。
国王が完全なる傀儡と成り果ててから三年。
今や国政は、親類縁者の美しい娘を入宮させた高官共に私されている。
(全く、愚かしいこと。)
宿主に寄生し、その命を長らえ繁栄させる者は、その身の為に宿主を肥えさせ、長きに亘り甘い蜜を啜るもの。
そんなことも判らない凡愚の動かす王宮は、確実に膿み爛れ、その毒は今や国中に広がろうとしている。
隣国にもその状況は漏れ伝わり、幾度となく侵攻軍が国境に進軍している。
この国が領土を侵されずにいるのは、ひとえに辺境軍にいるあの御方の力。
その方の死を望むなどまさに凡愚の極み。
思うことはあれど、後宮に縁者の居ない氾は国政に口を出す立場にはいない。
彼には11歳になる愛らしい愛娘がいる。だが、どんなに勧められても彼は年周りの合わないことを理由に、娘の入宮の手筈を整えなかった。

黒曜石のように煌めく瞳。桃色の頬。白く透き通った肌に映える、漆黒の豊かな髪。
そして、父にものをねだる時のあの甘い声音と潤む視線。
(―――彼女は天が我が氾家に与えられた、至高の宝珠。我が手中の珠。)
沈むと解り切った泥船に乗せるには、あまりに惜しい。
後宮から視線を戻し、今は使われなくなって久しい政務室へと足を踏み入れた。


「……ご足労を頂き、恐縮でございます。」
部屋で待ちうけていた周 康蓮は政務室に入って来た氾 史晴に声をかけた。
史晴に目を留めた柳 義広は、周に集められた自分たちがこの場で何かを決めなければいけないのだということ直感的に意識した。
ここにいる三人は今や大臣とは名ばかり。
後宮への繋がりを持たない我らが決めるべきもの。
(―――それにしても氾 史晴とは。此奴は一番腹の読めぬ男よ。)
一方の周 康蓮も、そのどんよりとした顔の裏で常に冷静に周りを観察し、驚くべきほど大局を読んでいる。
この二人を同時に相手にできるのは、今の王宮では柳 義広をおいて他にいない。

「さて。あまりのんびりしていても人目につきます。」
史晴は穏やかに微笑んで話を促した。
わざわざ人目につかない場所で語るにふさわしいこと。王宮内で禁句とされていることは。
義広が康蓮に問う。
「―――北の御方のご様子は如何に。」
あの方の身柄を預かる壬州長官の荷 文応とこの男は、長きに渡り交友を持っている。
荷からもたらされる情報はこの王宮内において最も信用のおけるものだ。

「其は、北辰に非ず。時は満ちたり。」
ぼそりと呟かれたその一言に、義広の眼光はするどく光り、史晴の顔からは常に浮かべる微笑が消えた。
「なれば、何だとお思いですか。」
史晴の静かな問いかけに、康蓮もまた静かに答える。
「―――天狼星、にございます。ひと度天高く座せば、その輝きは全天の遍く星々を従え、地上の闇に惑う我らを等しく照らす灯となりましょう。」
その言葉に、政務室は沈黙に包まれた。

最初に口を開いたのは義広だった。
「国を守るためならば、―――私は、弑することも厭わん。」
誰を、と言わないのが、この男の臣下としての最後の礼儀。
(なるほど、柳大臣らしい。)
史晴は思いを巡らせる。
この爛れ切った王宮を立て直すのに、まずは三年。
―――三年後、我が手中の珠は齢十四になる。
今はまだ固い蕾も、ほころび始める頃おい。
これはまだまだ楽しめそうだ。

いつもの微笑を浮かべ、史晴は言った。
「我が屋敷には身中の膿を出すのによく長けた薬師がございます。必要とあらば、お引き合わせ致しましょう。」



それから三カ月。
突然の国王崩御の知らせが国中に広められた。
北の地より呼び戻され、玉座に着いた新たな王の名は珀 黎翔。
弱冠十八。
彼は破竹の勢いで国内の反乱を鎮圧し、ついで荒れ果てた王宮にその牙をたてた。
たった三年で安定と繁栄の兆しを国民に示した若き王を、人々は尊敬と畏怖を込めて「狼陛下」と呼び慣わした。

その圧倒的な手腕の他に、歴代の王と最も異なる点がもう一つ。
若き美貌の狼陛下が統べる後宮には未だ一輪の花も咲かず、静かに、固く閉ざされたままであるという。







後記。
やっと終わりました。(読んで下さった方の『こっちのセリフだよ』という心からの突っ込みが聞こえてくるようです)
三大巨頭のどす黒会談で幕を閉じた、最後まで自己満足の「天狼星」。
陛下なんて名前しか出てこないし。ひどいや。
そんなわけで私の腹黒さが滲み出た最終話となってしまいました……

こちらも自己満足な話ですが、一応時系列で申しますと
初恋→天狼星1~7→原作1話~69話→初恋の行方
となります。
『暗黒の少年時代を過ごしてるにも関わらず、「生き抜くぞ。」とかかっこいいこと言っちゃってる陛下を支えてるのは夕鈴との思い出』
という個人の萌えの為だけに書き始めたシリーズです。

最後に。
書いてる本人も見返して思わず「なげーよ……」と呟いた文章を読んで下さった方。
拍手を下さった方。
コメントやリンクのお誘いをくださった方。
本当にありがとうございました!!
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天狼星 | コメント:6 |
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コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-04-22 Wed 15:37 | | [ 編集 ]
あさ様のところから参りました。
楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます。ちーっとも腹黒くありませんよ(笑)
よろしくお願いします。
2015-04-22 Wed 18:35 | URL | くみ [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-04-22 Wed 23:43 | | [ 編集 ]
あい様。
毎回暖かいコメントありがとうございました!
もーホント支えて頂きました!!
リポD飲みながら夜中に書きまくる日々でした(一気に書かないと忘れちゃうので……)
私もまたコミックス読み直して発売日に備えます♪
待ち遠しいですね
2015-04-23 Thu 00:05 | URL | rejea [ 編集 ]
くみ様。
ひたすら長ったらしい文章を読んで頂いて、コメントまで頂戴しありがとうございます!
こんなのでもまた読んで頂けると嬉しいです。
腹黒くないと言って頂けて良かったです(^_^;)
2015-04-23 Thu 00:09 | URL | rejea [ 編集 ]
Re
京様。
最終話の裏?テーマは「言いたいことをはっきり喋らないおじさん萌え」だったんですが、気に入って頂ける方がいるとはっ\(^o^)/
紹介記事アップさせて頂きました。
ご了承頂きありがとうございます!
2015-04-23 Thu 00:39 | URL | rejea [ 編集 ]

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