星空の隙間

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天狼星 6  北辰

注)シリアスな上に甘くなく、且つ設定をねつ造しております。
苦手な方はスルーなさってください。
詳しい設定はこちら→ 天狼星について
ちなみに文中に出てくる「北辰」は北極星の中国名です。昔は旅人が北を知る道しるべだったみたいですね。


浩大いわく、「美少女だらけの囮大作戦」から5日。
黎翔はいつものように鍛錬場の外れの庭で大刀の手入れを行っていた。
克右の剛剣を幾度となく受けてきたそれは、こまめに手入れをしてやらなければ使い物にならないのだ。
「やっと片が付きそうです。」
蒙商店の一連の取り調べに携わっていた李順が久しぶりに顔を出した。
「こちらまで顔を出すのは珍しいな。」
「できれば人の耳に入れたくありませんから。結論から申しますと、蒙商店は取り潰し、第一補佐の袁は文官の任を解かれました。」 
李順の報告に黎翔はやっぱり、という顔をした。
「袁を解雇に留めたか。文応らしいな。」
「やはり、蒙商店は隣国から密輸した麻薬を売りさばいて荒稼ぎしていました。商い物の小麦とともに運び込み、大々的に広めようとしていたようです。」
娼婦を攫ったのは媚薬の効果も持つそれなしではいられなくなった女たちを麻薬と共に売り払い、その金を袁へのさらなる賄賂としようとしていた為らしい。
「最近袁の金遣いの荒さは噂になっていたからな。」
「荷長官も確たる証拠を掴めず手をこまねいていらっしゃいました。結果的には薄汚い鼠の尻尾を捕らえられてよかったですね。追加の賄賂を強請って足が着いた。愚かな男です。」
李順は眼鏡を指先で触り、一つ小さく息を吐いた。
「文応には苦労をかけたからなぁ。辺境へ行く前のいい置き土産になった。」
「ならあと半年、もう少し大人しくなさって、ご心労を減らして差し上げて下さい。」
朗らかに言う主に李順は小言で返す。

あと何度、こんな他愛もないやり取りが出来るだろうか。

不意に北から冷たい風が吹き、二人の髪を揺らした。
黎翔は黙って李順に背中を向け、また剣の手入れに戻った。
その、まだ薄い背中を見て思わず李順は口を開いた。
―――怖いですか。
そう言ってしまいそうになってから、それは臣下の自分には過ぎた問いだと我に返る。
しかし開いた口は止まらず思わぬ言葉を紡ぎだす。

「……辺境は、寒いでしょうか。」
辺境はここより更に北。
焦った結果、あまりに当たり前の事を主に問いかけてしまった自分に李順は慌てた。
黎翔も驚いたらしい。李順の方を振り向いた。
李順は思わず顔を赤く染めた。
(私は、何を。馬鹿馬鹿しい。)
そんな李順の様子を見て、黎翔は声を上げて笑った。
それは年相応の少年の笑顔そのものだった。

その時北からまた強い風が吹きつけた。
風に弄られる髪をそのままに、黎翔は真っ直ぐに北を見据えて静かに言った。
「生き抜くぞ。李順。」

李順は突如込み上げた涙を悟られないよう、拱手した。
―――やはりこの方は私にとっての北辰だ。
凍える北の夜空に縫い止められても決して輝きを失わない、導きの星。
例えどんなに踠き、迷っても、この方がいてくだされば私は正しい道を選ぶことができる。

「はい。我が君の御心の儘に。」
答えた李順に、もう迷いはなかった。



後記。
今まで原作っぽい李順さんを書こう書こうとしてきたんですが。
この設定18歳だったんだ!と……
結果赤面したり泣いたり忙しい感じになりました。
お気に召さなかったらすみません。
書いてるうちに、李順さんが殿下を好きすぎて、もう他のものが目に入らなくなってました。
夕鈴への風当たり、めちゃくそ強そうです。


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天狼星 | コメント:4 |
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コメント

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2015-04-21 Tue 22:21 | | [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-04-22 Wed 01:18 | | [ 編集 ]
北に居た頃の陛下が「北極星」っぽいなぁーって「天狼星」ってタイトルにしたくせに悩んでおりまして。
なんとかねじ込むことができました(^_^;)
夕鈴は優しい「月」。素敵です。またも妄想が炸裂しそうです!
2015-04-22 Wed 09:57 | URL | rejea [ 編集 ]
京様。
コメント頂きありがとうございます。
さらに優しいお誘いまで!!
嬉しいです!
京様のブログにて、またコメントさせて頂きます。
2015-04-22 Wed 10:00 | URL | rejea [ 編集 ]

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