星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

桃花

3月3日は雛祭り。
女子不在の我が家は何事もなく1日が終わりました←ネタにもならん( ´_ゝ`)

白陽国は中華風の設定ということで、雛祭りの起源であるらしい、中国の「上巳」(川で禊を行う)を捻じ曲げた話を一つ。
相変わらずの捏造行事です。ご注意下さい。
持ち時間は1時間で!!

結婚後。
本誌ネタバレではないですが、お読み頂いてるほうがなんとなく内容が伝わるのではないかと。
それでは問題無さそうな方はどうぞ~。





出て来る用語のちょこっと説明。
※「遣り水」やりみず。庭園内を流れるよう作られた人工的な小川のようなもの。
北東(丑寅・鬼門なので穢れが発生、入ってくる方角)から南西に流すことで、宮中の穢れを祓う目的があったそうです。←日本の話ですが
※曲水宴(きょくすいのうたげ・ごくすいえん)遣り水を使った風流な飲み会。詩や和歌を詠じるミヤビな宴だそうです。


「いいですか、お妃さま。これだけ簡略化された儀式なんですから段取りよく、かつ優雅に終わらせて下さいよ」
鬼上司改め鬼姑の李順さんは、ぴかぴかに磨いた眼鏡を指先で持ち上げながら、私を威嚇するように見下ろした。
「今はただ単に宮中の遣り水で極簡単な禊を行うだけですがね。
以前は曲水宴と称して、上流から流した盃を手にするまでの短い時間に、妃が即興で詩を詠じなければならなかった時代もあったのです。
まぁ、貴女には逆立ちしても難しいでしょうから、簡略化されていて好都合でしたが」
ああ、今日もお義母様は絶好調。
私に小言を言うときの李順さんはどことなく生き生きしてるわ。
それにしても今日は暖かくて、洗濯物日和だ。
形だけの禊って言っても、暖かいのはやっぱりありがたい。
「お妃さま、聞いてますか!?」
「はっ、はいぃ!聞いてますっ」
思考が明後日の方向を向いていたのを瞬時に見破られて、慌てて背筋を伸ばす。
「ですから、陛下の後に続いて手を清め、こちらの懐紙で拭う。
はい、これだけです。さすがに貴女でも出来るでしょう。
とは言え、陛下の安らかなる御代を願う神聖な儀式です。立ち居振る舞いはお淑やかにお願いしますよ」

時間が押しているらしい李順さんは、あっさりと説明をしてばたばたと去って行った。
ふうっと一つ息を吐いて、気合を入れ直す。
禊だからか、白一色の絹の衣装。
これで庭園歩いたら禊どころか逆に汚れそうだわ、と考えていると、後ろから突然長い腕が巻きついてきた。
「これは、我が妃の純真さを引き立てる装いだな」
振り向かなくてもわかる。困った夫の登場だ。
「陛下!着崩れちゃうので止めて下さい」
無理やり腕の中から抜け出すと、目の前には同じく白一色の衣装に身を包んだ陛下がいた。
ふわぁ。
知ってたけど、陛下は何を着てもかっこいい。
普段は黒っぽい衣装を身につけていることが多いから、余計に目を引かれる。
白地に浮き上がるように紋を織り込んだ衣の上で、陛下のさらさらの黒い髪が揺れている。
「正面から見てもやっぱり似合うね、夕鈴」
にこにこと嬉しそうな陛下に、内心で零す。
どう見ても似合ってるのはそっちだと思うんだけど。
「これだけ真っ白だと汚しそうで怖いですね。さんざん李順さんからお淑やかにって言われちゃいましたし」
袖や裾を確認していると、陛下はくすりと笑った。
「庭園を歩かせられるんだから、多少の汚れは想定内だと思うよ。
簡単な儀式だし、気楽にやればいい。
それじゃぁ行こうか、夕鈴」
「はい、陛下」
私は差し出された手をとって、庭園へと向かった。



遣り水の周りには桃の花が植えられて、水面には枝から落ちた薄紅色の花弁がちらちらと踊っている。
陛下に続いて手を水に浸し、差し出された紙で手を拭くと、予想外にあっさりと儀式は終了した。
「なんだか呆気なく終わりましたね、官吏の方々もいないし」
「ごく内々の儀式だからね。
こういうのめんどくさいから僕は好きじゃないんだけど、やらなければそれはそれで色々煩い連中もいるからね」
陛下は本当に面倒くさそうにそう言った。
「でも、穢れを祓う大切な儀式なんでしょう?」
そう言って陛下を見上げると、陛下はふっと口許だけで笑った。
「……それくらいで祓える穢れならいいんだけど」


どうしてだろう。
真っ白な陛下の衣装が一瞬雪のように見えた。
桃の花が咲く木の下で、どうしてそんな風に見えたのか。
―――陛下が、遠い。
いつかの宴の時よりもはっきりと距離を感じたのは、私が陛下の「本物」になったからなんだろうか。


貴方が何を考えてるのか、今だって全然見えてこないし。
時々、私には見えないところを見つめてるのだって、知ってる。
妃になった私に、まだ色々なことを隠してることだって。
でも私は『狼陛下の花嫁』だから。
もうその距離を黙って見ているなんて、したくない。

私は「お淑やかに」と言われたことを忘れて、陛下の袖にしがみ付いた。
「陛下、ちゃんと側に居て下さいね?
こうやってしがみついてるから、振り落とそうとしても無駄ですから!」
陛下は目を丸くしてから、口許を押さえた。
「夕鈴―――」
くくくっと忍び笑いを漏らした陛下は、私をひょいっと抱え上げた。
「きゃぁ!ちょ、下ろして下さいっ」
「君って人は本当に最高だね。
うん、桃の花がよく似合う」
陛下はなんだか知らないけど、すごく嬉しそうに私を持ち上げた。
「手放さないよ。絶対」
「約束、ですからね?」
思わずそう呟くと、陛下は優しく私の頭を口許へと引き寄せた。



桃の花の下で交わした口付けは、とても甘くて。
だけど、その後一部始終を見ていた李順さんに夫婦揃ってこっぴどく叱られるハメになったのは、言うまでもない。




後記。
桃の花は邪気を払う神聖なものでもあるそうです。
夕鈴は陛下の祓いきれなさそうな邪気もなんだかんだで払ってくれそう(笑)
花言葉は
・あなたのとりこ
・天下無敵
↑本当、夕鈴にぴったり!!


桃の節句











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コメント

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2016-03-06 Sun 18:16 | | [ 編集 ]
あい様。
誤字を直しにやってきたら…早っっっ!!!
ありがとうございます\(^o^)/念が通じたのでしょうか(笑)
プラトニック説が囁かれてるお二人ですが、真相は神(先生)のみぞ知る、ですね(*_*;
個人的には最後まで行ってなくても、最低でも触ってはいると思ってまして。
それはそれでエロいんじゃないかと思ってしまうんですが、どうでしょう(笑)

にぎやかになりそうですね♪
歳の離れた女の子ってみんなをメロメロにしそうで、考えただけで微笑ましいです(*^_^*)

2016-03-06 Sun 21:55 | URL | rejea [ 編集 ]
この話好きです、好きです!
※重要なことなので、2回云いました。
二人の距離感の変化が本当に素敵です。

個人的見解としては、「春の宴」はこの上巳の流水の宴が元ではないか?と思っております。
夕鈴の持っていた枝も桃の花でしたし。
ですから、このお話のように段取として禊の儀式もあるんじゃないかなあ、と。
陛下、まさしく水も滴るいい漢(手水だけでも)ですよね♪
2016-03-07 Mon 08:44 | URL | novello [ 編集 ]
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2016-03-07 Mon 16:18 | | [ 編集 ]
novello様。
中国文学や文化に疎いので、novello様に「ありそう」と言って頂けるとめっちゃ嬉しいです!
実際お会いしたらスライムのようにまとわりついて質問攻めにしてしまいそう…

春の宴の衣装は赤でしたっけ??
世界観が中華風でなおかつ「夕鈴が赤い衣装で桃の花を持ってくる」って文系オタ的にはなんだか意味深な気がします(笑)

2016-03-07 Mon 19:41 | URL | rejea [ 編集 ]
くれは様。
病んでる陛下も大好きな私は
「それでも暗い欲求は晴らせてないのもアリかな?ウヒヒ……」
とか思ってました!( ;´・ω・`)

でも、夕鈴がいたら絶対大丈夫ですよね。
結論→夕鈴可愛い!
2016-03-07 Mon 20:41 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-03-08 Tue 08:10 | | [ 編集 ]
まるねこ様。
ありがとうございます~!嬉しい!泣ける( T∀T)
半分ほど塗ったやつが気に入らず、一から塗り直した絵なんです、これ。
しかし顔が気に入らない…誰だよこれ( ノД`)
毎回描いては消して、ため息ついてを繰り返しております。
2016-03-08 Tue 18:36 | URL | rejea [ 編集 ]
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2016-03-11 Fri 23:13 | | [ 編集 ]
あい様。
ありがとうございます!
確実にあい様の方が当ブログのカウンター数値を把握してらっしゃる(笑)
ゾロ目の時もリク受け付けてますのでよかったら♪
リクがなければ何かしら勝手に送りつけるやもしれません\(^o^)/
2016-03-12 Sat 17:45 | URL | rejea [ 編集 ]
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2016-03-12 Sat 19:35 | | [ 編集 ]
あい様。
やっぱりあい様に贈るならこっくーですかねぇ(*^^*)

ただいまビッグサイトに向けて移動中です←遅い
あい様の魂も連れて参りますね!
TDLスルーしてる女子は大体仲間と見たぞ( ゚□゚)
2016-03-13 Sun 10:53 | URL | rejea [ 編集 ]

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