星空の隙間

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天狼星 5  闇夜に舞う花

注)シリアスな上に甘くなく、且つ設定をねつ造しております。
暴力的なシーンがあります。(グロ注意です!)
苦手な方はスルーなさってください。
詳しい設定はこちら→ 天狼星について

門番の男は長い夜に暇を持て余していた。
兄貴分たちは倉庫の中で『お愉しみ』の最中だが、新入りの自分に甘い思いはできない。
中から時折聞こえる嬌声や悲鳴のような声が艶めかしく耳に届く。
羨ましいという気持ちが抑えられずやる気なく扉にもたれかかっていると、ふと甘い香りが夜風に乗って鼻先に届いた。
「……すみません。こちらに蒙商店のご主人がいらっしゃると聞いて参りました。」
「娼館の主から、必ずご満足頂くよう申しつかっています。お取次頂けますか。」
とんでもない上玉の娼婦が二人、目の前の暗闇を縫って現れた。
松明に照らされる白い首筋。潤んだ茶と紅の瞳。
なにより全身から色濃く漂う色香。
男はごくりと唾を飲み込んだ。

「もちろん取次はするが。その前に―――」
少しくらい、俺にもいい思いをさせてもらおう。
下卑た笑いを浮かべて二人の艶めかしい肢体に手を伸ばそうとした瞬間。
男の首筋に手刀が振り下ろされる。

「もー、スケベな男ってホントやーねっ。雰囲気も何もあったもんじゃないんだから。黎麗もそう思うでしょ?」
「……うっとおしい役作りはやめろ浩大。なんだそのレイレイというのは。呼ぶならもう少しマシな名前を考えろ。」
小声でささやき合う二人は倒れ伏した男の体からあっという間に鍵の束を探り出し、扉を開ける。
木陰に身を隠していた克右がすかさず走り寄り、三人は中へと身を滑らせた。
「手筈は?」
「万事予定通りです。……しかし、先ほどの男に私は少し、同情しますよ。さすがに―――」
小屋の中で、限りなく美しく恐ろしい悪夢を見させられた男の目は、最後には完全に別の世界へ飛んでいた。
先ほどの光景を思い出した克右は目の前の美女二人にちらりと視線を投げかけ、言いかけた言葉を途中で飲み込んだ。
(余計な事は言わないでおこう。俺まで悪夢でうなされそうだ。)

気配を殺して先へと進むと、次第に酒と体臭の入り混じった不快な臭いが鼻を突く。
「ほんじゃ、まずはオレがいきますか。」
浩大は嬌声の漏れる部屋へと足を踏み入れる。
「…娼館より遣わされて参りました。こちらの皆様をご満足させるようにと―――」
さりげなく辺りに目をやる。
屈強そうな男が16人。
一番奥に居る初老の男がおそらく蒙商店の店主。
薄い布の敷かれた床には、裸に剥かれた女が5人。男たちに散々いたぶられたらしく、痛々しい傷跡が見える。
しかしその顔は焦点の合わない瞳に、薄く開いたままの口元。そこから流れ出た唾液がだらしなく首筋まで濡らしている。
(やっぱ薬か。しかしこりゃまたひどい代物を使われたもんだ。)
不快な感情を顔に出さず、あくまで優雅に男たちを見渡した。
その様子に男たちは生唾を飲む。
「さて、そのような手配はしていないはずだが。」
訝しむ店主にもう一度微笑みを投げかけて浩大は続けた。
「店主様にはこちらの娘を特別に味わって頂くように、とのことです。」
その声に応じて現れたのは、漆黒の髪に白磁の肌。濡れ濡れと光る紅の瞳の娼婦。
そのあまりの妖艶さに、店主の顔に喜色が走る。
「そうか。こちらへ参れ。もっと近くへ―――」
にこりと微笑んで、店主の許へ真っ直ぐに歩み寄る。
男たちは信じられないものでも見るような目で通り過ぎる黎翔の姿を目で追った。
白魚のような指先が店主の顎をつ、と捉える。
「店主様。お会いしとうございました。今夜はゆっくり、語り合いましょう―――?」
鼻の下を伸ばし切った店主は一瞬の後、白目を剥いて膝から崩れた。

一体何が起きたのか。
あまりのことに男たちは呆気にとられた。
その瞬間、二人の娼婦は身に纏っていた外套を肩口から剥ぎ取り、自分から一番近くにいる男たちの顔へ向かってへ投げ突けた。
「なっっ」
慌てふためく男たちに外套の上から急所を目掛けて拳を叩きこむ。
「あーもう!アンタら、全く手筈通りじゃないじゃないですか!」
慌てて部屋へ踊りこんだ克右がそれぞれの得物を持ち主の手元に向かって放り投げる。
主の元に戻った飾りのない大刀と、強靭な鞭が唸りを上げて空を切る。
「お前ら何者だ!?」
誰何する束ね役の男を面白そうに見やると、黎翔は薔薇色の唇をほころばせて告げた。
「我らが誰か聞きたいのなら、直接体に聞いてみてはどうだ?」

それを合図に火蓋は切って落とされた。
三人の元へ詰めかけるようにそれぞれ武器を手にした男たちが走り寄る。
黎翔は一人目の男の上段からの剣を受け、腰を落として下へといなし、返す刀で下から脇腹を切りつけた。
鮮血と臓腑が飛び散る。
「浩大!克右!何人かは生かしておけ。後で聞かねばならないこともある。」
紅い血を浴びた美しい娼婦の姿は、この上なく獰猛で崇高な夜の獣のようで。
浩大は思わずにやりと笑みをこぼし、克右は無意識に見惚れた己の気を引き締めるように、刀を握りなおした。
黎翔は姿勢を低くしたまま次の男に走り寄り、刀の柄で伸び上りざまに相手の顎を砕いた。
ごきり、と嫌な音が響き渡る。
のたうち回る男をそのままに、次の男を振り返った黎翔は顔まで血に塗れたまま極上の微笑みを投げかける。
「さぁ。お前はもっと私を愉しませてくれ―――」

浩大は足にまとわりつく衣装をものともせず高々と跳躍し、男たちの頭上から短刀と鞭を浴びせかける。
次々に、男たちの首元に短剣が吸い込まれるように突き刺さる。
「おいおい、これじゃあっという間に終わっちゃうぜ、お兄さんたち。せっかくの機会なんだからもっとオレたちと遊んでくれなくちゃ。」
何とか短剣を叩き落とした相手を挑発しながら確実に首の急所に狙いを定める。
男が剣を振り被ろうとしたその時、浩大の鞭が太い首に巻き付き、顔色が赤黒くなるまで締め上げられる。
涎を流して苦しむ男を眺めた後、満足したように力を緩めた。
「残すのはアンタにしようかな。まぁまぁ手ごたえあったしね。短剣を払い落とせたご褒美だよ。」

荒れ狂う花のような二人を眺めつつ克右は着実に相手を峰打ちで叩き伏せていく。
あの二人に任せておいたら息のある者はそんなに残らないだろう。
「全く、若者は血の気が多くて困るよな。」
のんびりとした口調とは裏腹な克右の剛剣に男たちは手も足も出ない。
「死線を何度も越えた奴に喧嘩を売ってもいいことなんてないぞ。ま、高い授業料だったな。」
克右の剣に鳩尾深くをえぐられた男に、その言葉は無論届かなかった。



それから間もなく、州の警備兵を引き連れて到着した李順は辺りの惨状に思い切り眉を顰めた。
これはまさに、死屍累々。阿鼻叫喚の地獄絵図。
「貴方々は作戦という言葉の意味を理解してないんですか!!私が警備兵を連れて来るまで手出しをしない、暴れないという約束で今回の件、許可したことを覚えていないんですかっ!?しかもこれ、殆ど死んでますし!これでは今後の調査に差支えます!!」
「えー。せっかくの機会だったんだし仕方ないだろう。おかげで久しぶりに楽しかったし。下っ端以外は多分生かしてあると思うし。」
「そうそう、小屋に転がってた男だって生きてるっショ?」
「あれはとっくにイカレていて使い物になりませんっ。今日という今日は反省して頂きます!!」
到着するなり延々と小言を始めた李順を見やって、克右は溜息を吐く。
(返り血まみれの主をそのままに説教しだすお前さんもやっぱりちょっと普通じゃないと思うぞ……)


後記。
やってしまいました。痛いシーン。
読んでしまってご気分が悪くなられた清純可憐な方には、お詫び申し上げます…
でもこれが書きたくて天狼星全体を考えたと言っても過言ではないので自分としてはやっぱり楽しかったです。
甘くもなく、ねつ造な上にグロい。冷静に考えるとなんと迷惑な二次小説だ…
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コメント

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2015-04-20 Mon 14:38 | | [ 編集 ]
あい様。
どん引きされなくてほっとしてます!
もはやブラック同盟を組ませて頂きたい(笑)
というか、そんな一家めちゃめちゃステキですね
李順母さん克右父さん、腹黒い息子たち( ´艸`)考えると笑ってしまう~
2015-04-21 Tue 08:04 | URL | rejea [ 編集 ]
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2015-04-21 Tue 17:21 | | [ 編集 ]
あい様。
私も早く本誌で陛下と夕鈴の例のアレを見たいと心から願ってます(笑)
色気が全く出ないのでただ黒いだけの私で良ければ結成しましょう!ブラック同盟(^_^)b
2015-04-21 Tue 18:48 | URL | rejea [ 編集 ]
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2015-04-21 Tue 21:58 | | [ 編集 ]
あい様。
「初恋」からあい様の優しいコメントに勇気づけられてなんとかかんとか書いてきてます。
付いてきてるのは私です(笑)
こちらこそありがとうございます!!
2015-04-22 Wed 09:54 | URL | rejea [ 編集 ]

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