星空の隙間

狼陛下の花嫁SS・イラストなど

あざとい子犬のバレンタイン

皆さまお優しいので調子に乗ってまた子犬書いちゃいました。

せっかくの現パロだし、李順さんに季節柄の苦労をしてもらうことにしました。
奮闘する李順少年のバレンタインです。

あざとい子犬のバレンタインカラー


可哀想な李順少年を応援して下さる方、ニラニラして下さる方、仕方ない、見てやるか!という心の広い方は続きへどうぞ。
注:現代パロ、年齢操作ありです。


「りーじゅーん」
「……」
「ねーってばぁ、りーじゅーんー」
ついに来た。
李順は、仕方なく小さな主に顔を向けた。
「……何でしょうか、黎翔さま」
「僕、ゆーりんからバレンタインのチョコレートもらいたい。出来れば手作りのやつ」
やっぱり、それか。
出来るだけその手の話題を遠ざけていたのに、結局は無駄だった。

可愛らしい姉弟と出会ってからほぼ1年が経過したが。
黎翔は相変わらず飽きることなく夕鈴にまとわりついている。
完全にあの小さな女の子を恋愛対象として見ているらしい主は、案の定バレンタインデーを満喫するつもりでいるらしい。
だがしかし。
「お言葉ですけど、黎翔さま。
あの子たちのお母さんは……」
出会う少し前に、体調を崩して亡くなったと聞いている。
「夕鈴さんはまだ1年生ですし、母親もいないとなるとチョコレートを用意するのは大変なんじゃないですか?」
黎翔は珍しく綺麗な眉間にシワを寄せてふうっとため息をついた。
「そうなんだよねぇ。僕、夕鈴を困らせたくないし」
自分の執事に対しても、その優しさの10分の1くらい発揮してもいいんじゃあないだろうか。
そう思った李順の胸の内を知ってか知らずか。黎翔はにこりと笑ってこちらを向いた。
「だから出番だよ、李順っ。お菓子、作れるでしょ?」
「はぁっ!?お菓子ですか!?」
そんなもの、作ったことがない。
「いやー、持つべきものは優秀な部下とはよく言ったものだよねっ」
李順はぐらぐらと眩む頭を押さえて呻いた。
一度言い出したら聞かないことは分かっている。抵抗しても結局は時間の無駄だ。
「……分かりましたよッ!やればいいんでしょう、やれば!」
「さすがオカアサマ、素敵~」
ぱちぱちと満面の笑顔で贈られる拍手に、李順はがっくりと肩を落とした。



「李順さん、今日はよろしくおねがいしまーす」
にこにこと玄関先で二人を迎えた夕鈴は、すでにエプロンを身に付けて準備万端だ。
横を見れば青慎もちゃんと小さなエプロンを身に付けている。
「(主が)無理を言ってすみませんね」
李順は少し申し訳なさそうに、持ってきた材料を掲げて見せた。
「みんなでお菓子作りって楽しそうでうれしい!
キッチンはこっちですよー」
「ありがとう、ゆーりんっ!おじゃましまーす」
上機嫌のお子さまたちに続いて、李順もキッチンへ進んだ。
「今日はお父さんはいないんですか?」
「うん、急にお仕事になっちゃったんだって」
あっけらかんと言う夕鈴に、李順はちょっと驚いた。
この様子だと、ちょくちょく二人で留守番しているらしい。
年齢の割りにしっかりした子達だと思っていたが、さすがに無用心ではないだろうか。
心配になって振り返ると、いつの間にやらドアロックがしっかりとかけられている。
「道具、出しておいたけど、これでだいじょうぶかなぁ」
玄関を眺めて感心する李順に、夕鈴がキッチンから顔を出して手招きした。
ダイニングテーブルの上には、事前に伝えておいた道具がきっちり揃えられていた。
よく見れば、子供用の包丁とまな板まで置いてある。
「普段から料理をしているんですか」
またしても感心する李順に、夕鈴はなぜかぷっと頬を膨らませた。
「だってお父さん、ヘタなんだもん。
へんな味つけにするし、モタモタしてるし」
本当にしっかりした子である。
出来ることなら、主のような訳あり物件ではなく、気心の知れた男性と、慎ましくとも暖かな家庭を築いてもらいたいものだ。
「それじゃあ、早速始めましょうか」
李順はすぐ横にいた青慎の袖を捲ってやりながら、夕鈴に微笑んだ。


初心者向けの料理本を購入して、あれこれ悩んだ末に李順が選んだのは、コーンフレークに溶かしたチョコを絡めてハートの形に整える、というシンプルなもの。
これなら高い材料もいらないし、小さい子でもどうにかなるだろう。
湯せんのために板チョコを刻む夕鈴の手つきは、その年の子どもにしては驚く程の手際の良さだった。
あっさりと刻み終え、ボールに移したチョコを青慎が真剣な顔でかき混ぜる。
夕鈴もお湯が溢れないよう大真面目な顔をしてボールを押さえている。
黎翔はというと、その横でただひたすら満足げに二人を見守っている。
(手伝う気がないなら、留守番してればいいのに……)
李順の醒めた視線には目もくれず、黎翔はにこにこと声援を送っている。
いいご身分である。

夕鈴は持ち前の飲みこみの速さで、手際良くハートを形作っていく。
自分の作業の合間にも、ちょこちょこ青慎の面倒まで見てやっている。
そんなきびきびした夕鈴の様子を、でれっでれに蕩けた顔で見つめる主に、もういっそのことあんたがチョコになってしまえと言いたくなるが、李順はなるべく視界に入れないようにして必死に耐えた。
「あー、たくさん手についちゃったねぇ」
無事に成形を終えたものの、二人は小さい手をチョコだらけにしてしまった。
「どれ?あっ本当だー」
夕鈴の手をひょいっと取った黎翔は、止める間もなく指ごとパクリと口に含んでしまった。
「うひゃあ!なに、お兄ちゃん!?」
「えー?味見だよっ。青慎くんも勿体ないから自分の指、舐めちゃいなよ~」
「……」
全くもって、いいご身分である。
李順はもはや呆れて何も言えなかった。
(この為についてきたんじゃないでしょうね……)
そうだとしたら、とんだませガキだし、あまりのハンターぶりに軽く恐怖さえ覚える。
あまり余計なことをして欲しくないと嘆息しつつ、チョコを乗せたバットを冷蔵庫へ仕舞う。
「さぁ、これで冷やせば完成ですよ」
くるりと振り向いた先には、困惑顔の夕鈴と、まだ指先に食い付いている子犬の姿。
「お兄ちゃん、もうチョコとれたんじゃないかなぁ」
「え~?そうかなぁ。まだほら、こことかこことかついてると思うんだけど」
「きゃぁ!くすぐったぁい」
「……」
大概にしろ。冷やしたいのはチョコであって、自分の肝じゃない。
李順は拳を握って叫んだ。
「黎翔さま!本当に、いい加減になさい!!」



なんだかんだと李順ばかりが疲弊したチョコ作りだったが、なんとか無事に仕上がった。
「さぁ、後はラッピングして終了ですが……夕鈴さん、どうかしましたか?」
夕鈴はもじもじと俯いた後でこっそり李順の耳元に口を寄せた。
「あのね、あのね、李順さん。
……このチョコって、ピンクのでもできる?」
「ああ、もちろん大丈夫ですよ」
「ホント!?きらきらとかもつけられる??」
「ええ、冷やす前に飾りを乗せれば出来ますよ」
「よかったぁ!んっとね、ピンクのハートにきらきらとかのせて、黎翔お兄ちゃんにあげたいなって……」
そう言えば、今日李順が準備したのは普通の茶色いチョコレートのみだった。
女の子なのだから、ピンクのチョコやきらきらした砂糖菓子などの飾りを使いたいのは当然だ。
そこまでは思い至らなかったな、と李順は頭を掻いた。
「すみません、用意してくれば良かったですね」
夕鈴はぶんぶんと頭を振った。
「んーん。バレンタインにはちゃんと、自分でつくってあげたいの……」
そう言ったつるつるの頬はうっすら桃色に染まっていた。

「夕鈴、李順ー。二人で何の話してるのー?」
リビングで青慎と遊んでいた黎翔がキッチンを覗きこんでくる。
弾かれたように飛び上って驚いた夕鈴は、真っ赤な顔で小さく言った。
「李順さん、今のないしょだからね!」
「ええ、わかりました。では今日の分は3人で召し上がってください」
「え?李順さんは?」
「私は甘いものは苦手なので。さぁ、チョコを持って行ってください」
下手に食べれば、子犬から何かしらの報復を受けかねないですからね、とは言わずに、李順はさっさとお茶の準備を始めた。
(―――こういうのを『フラグが立った』って言うんだろうなぁ……)
胃が痛いが、仕方ない。
引き続き子犬が暴走しないように見守るしかなさそうだ。
リビングからは3人の楽しそうな声が聞こえてくる。
(このまま大人にならないでくれたら、いっそ気楽なんだけどな)
苦笑しながら溜息をついたその姿は、本人は否定したいだろうがまるで母親そのものだった。



数日後のバレンタイン当日。
保育園へ向かう道すがらで、黎翔はかわいいピンクのハートチョコを手に入れた。
「すっごいかわいい!!夕鈴ありがとうっっ」
調子にのって夕鈴を路上で抱っこしたままくるくる回り出す黎翔をがしっと止めて、李順はいつもの苦情を申し立てる。
「だから危ないと何度も言っているでしょう。せっかくのチョコが割れてしまいますよ」
「あ、それはイヤだ」
珍しく言うことを聞いた黎翔は、すとんと夕鈴を下ろした。
真っ赤な顔で照れていた夕鈴は、そのまますすっと李順の方に寄って来た。
「はい、李順さんにはコレ」
差し出されたものを見ると、おせんべいがきれいにラッピングされていた。
「作れなかったから買ったやつだけど、もらってください」
そう言えば甘いものは苦手だと嘘を吐いた気がする。
ちらりと主の顔色を伺うと、よほど機嫌がいいらしく夕鈴の後ろで構わないぞと手を振っている。
「ありがとうございます」
ふっと微笑んで受け取った李順に、夕鈴もへへっと笑った。
「あのね、お父さんはお料理へただから、だれかとお菓子つくったのひさしぶりだったの。
お母さんといるときみたいで、すごくすごーく楽しかった。
ありがとう、李順さん!」
「夕鈴さん……」
しっかりしているとは言っても、この子もまだ小さいのだ。
母親が恋しくない訳はないだろう。
「……また、一緒に作りましょうか。今度は何がいいですか?」
「いいの!?じゃぁクッキーがいいなぁ」
本当に嬉しそうな笑顔が眩しい。
(クッキーの作り方、マスターしないとな)
自分は男子中学生だけど、たまには「お母さん」でも、いいのかもしれない。
李順はそう思う自分を持て余すように、苦笑した。

「さぁ、お迎えに行きましょう」
「うんっ」
夕鈴の小さな手が李順の手を引っ張った。
「あーずるい李順!!夕鈴、僕と繋ごうよぉ!!」
すかさず真ん中に押し入ってくる黎翔に李順はやれやれと肩を竦める。
「黎翔さま、そんなに心が狭いとモテないですよ」
「なんだよ、今日は強気だなぁ。そういう李順はモテるわけ?」
「あくまで一般論です。私個人のことは関係ありません」

わいわいと騒ぎながら向かう保育園。
李順のバレンタインは、こうしていつもと変わらず騒がしく、穏やかに過ぎて行く。





後記。
学ラン李順さんを描いて満足してしまったのでなかなか文章が進みませんでした。
小さい子だけで留守番は危ないですが、きっと几鍔のお母さんとかがちょくちょく顔出してくれてるんじゃないかと……

余談ですが。
このあと、学校の休み時間にお菓子作りの本を読みふけったり、試作品のクッキーを持って行って感想を求めたりした李順少年。
ますます「お母様」として扱われることになったそうな。
めでたしめでたし。
















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現代パロ | コメント:18 |
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コメント

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2016-02-13 Sat 22:54 | | [ 編集 ]
李順さーん!あなた凄いです!

その為についてきましたよー!指の股も貪り食べたかな‥ψ(`∇´)ψ ついでに頬ペロリするためどうやってチョコを飛ばそうかとも考えていたはずですよー(^з^)-☆


きゅるるんおめめの主は置いといて←
詰め襟はやっぱり素敵なこの絵のように中坊って良い!
高校までいったら、おっさん化かスーツ姿も似合う様になってきちゃいますからね〜!
2016-02-14 Sun 08:34 | URL | 仕事し過ぎ中 [ 編集 ]
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2016-02-14 Sun 12:25 | | [ 編集 ]
こんにちは|д゚)チラッ

子犬1年目でコレって…ヾ(≧∀≦*)ノ〃スゲー!!
お母様のスキルもこうやって蓄積されていくのですね。:+((*´艸`))+:。
あぁ夕鈴素直に洗脳されて可愛いわっ♪
2016-02-14 Sun 12:41 | URL | りこ [ 編集 ]
こちらに初めてコメントします。いつもコッソリ読んでました。
どの陛下も味があって楽しいです。元帥好きですが、この子犬のあざとさと李順さんの不憫さが面白いです。
またたまには書いて下さいね。
2016-02-14 Sun 20:39 | URL | まるねこ [ 編集 ]
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2016-02-15 Mon 16:56 | | [ 編集 ]
あい様。
私の中の李順さん好きが炸裂してるシリーズになってきました。
それにしても青慎くんの存在感の無さが半端無い( ;´・ω・`)
もう少し大きくなったら
「あれ?このお兄ちゃんオカシイんじゃ……」
って、真実に気付くかもしれません(笑)

因みにそちらの黎翔様は色んな意味でめちゃくちゃ強いので敵いません(///ω///)♪
2016-02-15 Mon 19:20 | URL | rejea [ 編集 ]
仕事し過ぎ中様。
ふふふ、こことかそことかって言ってますが、どこを舐めたんでしょうかね?
多分気付いた李順さんこんなでしたよ→(; Д)゚ ゚

うちの小僧は中学生になったら、なんだかうすぼんやりした紺学ランになる予定で(ToT)
母は強く黒学ランを希望します(汚れ目立たないし)‼
2016-02-15 Mon 19:27 | URL | rejea [ 編集 ]
高月慧ネン様。
ひぇぇっ‼コメントありがとうございます( ;∀;)
いちファンとしてものすごく嬉しいです‼
そして恐縮ですっ!
子犬、お届けできるように頑張ります♪
2016-02-15 Mon 20:41 | URL | rejea [ 編集 ]
りこ様。
こんにちは(*σ´ェ`)σミツケタ☆

疑うことを知らない幼い夕鈴に迫る子犬の牙をどう防ぐか、お母様は日々悩んでます(笑)
どんどん母親スキルが上がり、逆にモテなくなりそうな李順少年……可哀想( T∀T)
2016-02-15 Mon 20:47 | URL | rejea [ 編集 ]
まるねこ様。
こちらにもコメント頂きありがとうございます♪
子犬のあざとさOKと言ってくださる方が意外にいらっしゃってびっくりです(;゚д゚)なんて心の広い……
またお届けできるように頑張りますっ‼
2016-02-15 Mon 20:54 | URL | rejea [ 編集 ]
くれは様。
クッキーネタ、何も考えてなかったので浮かんだらまとめてみたいと…(;´゚д゚)ゞネタよ浮かべ‼

私も李順さんスキーだったり、浩大スキーだったり、克右スキーだったり、とんだ浮気者です(笑)
原作、どのキャラも魅力的ですよね!
2016-02-15 Mon 20:58 | URL | rejea [ 編集 ]
rejeaさん、おはようございます,
薄紺の学ラン!地元では賢い高校がそんな色でした!

うちの2人は黒学ラン!
入学前は購入すぐは可愛かったし、良かった!
でもね!テカる‥ほんでグラウンドでユニフォームに着替えるから毎日砂だらけで真っ白。
先日なんて丈を延ばした兄の学生ズボンを弟が先に履いて行って、家に残ってるズボンは白靴下見えまくりのツンツルテン!怒りモード爆発で1年教室乗り込んだはず!怖ろし!(◎_◎;)
2016-02-16 Tue 06:59 | URL | 今日は楽チン [ 編集 ]
今日は楽チン様。
黒学ランも大変なのですね~っ!Σ( ̄□ ̄;)
うーん……砂汚れ、男子は凄そう‼
というか部活大変でそんなの気にしてられない??

お兄ちゃん、びっくりしたでしょうね(笑) 
中学生は背も急に伸びるから裾直しも大変そうです(;゚д゚)
2016-02-17 Wed 08:07 | URL | rejea [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-02-20 Sat 20:29 | | [ 編集 ]
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2016-02-20 Sat 20:48 | | [ 編集 ]
24000ゲッター様。←とりあえず伏せてみました
わお!!なんとまさかの二連続(笑)
ありがとうございます~!!
そして遅れててごめんなさい。
さらには長くて前後篇になっちゃいました(ToT)
とりあえず本日前篇上げますので、もしよろしければ!
2016-02-20 Sat 23:33 | URL | rejea [ 編集 ]
あい様。
お祝いコメありがとうございます~♪
え!?私シリアスに飢えてるって某所で呟いてたところです!!
わおおおお!ブラック同盟万歳☆
原作シリアス、いいですよねぇ(*^_^*)
お待ちしてます!!

最新作のヤバイ香りも好きですよ♪
なんかこう、背徳感が素晴らしいです\(^o^)/
2016-02-20 Sat 23:38 | URL | rejea [ 編集 ]

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